2023 Fiscal Year Research-status Report
Construction of the Image "Newton as Philosopher": Formation and Influence of "Rule of Reasoning"
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23K12010
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Research Institution | Nagano National College of Technology |
Principal Investigator |
嶋崎 太一 長野工業高等専門学校, リベラルアーツ教育院, 准教授 (20909311)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | ニュートン / 実験哲学 / 『プリンキピア』 / 『光学』 |
Outline of Annual Research Achievements |
ニュートンの『プリンキピア』は初版(1787)、第二版(1713)、第三版(1726)、『光学』は英語初版(1704)、ラテン語版(1706)、英語第二版(1717/18)と版を重ねたが、改訂において重大な加筆、修正が加えられている。今年度は、『プリンキピア』における「哲学することの諸規則」の成立過程を究明するため、この改訂過程を整理し、ニュートンの哲学方法論の確立を跡付ける作業を行った。とりわけ「実験哲学」の立場が強調される1713年前後のニュートンの哲学方法論を検討した。また、『光学』ラテン語版および英語第二版における「分析」と「総合」の方法論をめぐる記述を精査した。 以上による研究成果は、(a)「哲学することの諸規則」成立過程、(b)ニュートンの哲学方法論の射程、という二つの観点からまとめられる。 (a)においては、ニュートン『プリンキピア』草稿にみられる「哲学することの規則V」の検討を行い、「規則V」はは膨大な草稿中に一か所だけ見出されるものであるが、これが「規則IV」と密接な関連の下で、実験哲学の立場の成立を背景としたものであることを突きとめた。また、第三版に加筆された「規則IV」が、一時期ニュートンが構想していた『プリンキピア』第三編における新たな「定義」の試みから派生したものであること、数学に対する哲学固有の方法論を明確化するための加筆であったことを明らかにした。 (b)においては、ニュートンの哲学方法論の射程として1710年代の神学関連の草稿に着目し、当時ニュートンが書きためていた「融和神学」に関する問題意識が、『プリンキピア』などの哲学方法論と重ね合わされることを確認することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では『プリンキピア』「哲学することの諸規則」の成立過程を明らかにすることが2023年度の目標であった。23年度の実績においては、特に「規則IV」及び草稿「規則V」の成立過程を明らかにすることができた。また『光学』における「分析」と「総合」の方法論と『プリンキピア』における哲学方法論との関連を明らかにすることができた。また、今後の研究に必要な資料を収集することができた。また、今後の研究において注目すべき論点などを見出すことができた。以上から、おおむね順調であると判断することができる。
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Strategy for Future Research Activity |
23年度には必ずしも明らかにすることができなかった、「規則I」、「規則II」、「規則III」に関する研究を進め、1713年以前の哲学方法論の実態を究明する。また、「実験哲学」と「仮説」の関係を明らかにして、有名な「私は仮説を立てない」という言葉がなぜ『プリンキピア』第二版に置かれたのかを突きとめる。さらに「ライプニッツ・クラーク往復書簡」においてニュートンの哲学方法論がいかなる形で示されているのかを検討する。 以上を通して、「哲学することの諸規則」の成立過程をより包括的に解明する。
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Causes of Carryover |
所属機関の研究費を優先的に使用したこと、オンラインで実施する学会もあり旅費の計上が少なくなったことが理由である。2024年度以降は、研究の本格化に向けた資料収集や学会参加に使用する予定である。
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Research Products
(5 results)