2023 Fiscal Year Research-status Report
泥水浸潤時の土中間隙ミクロ構造変化に着目した泥膜形成メカニズムの解明
Project/Area Number |
23K13404
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
木戸 隆之祐 京都大学, 工学研究科, 助教 (40847365)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | ベントナイト / 安定液 / 泥膜 / クラスター / X線マイクロCT / 間隙 |
Outline of Annual Research Achievements |
ベントナイトを主成分とした安定液を砂質土供試体に浸潤し,その前後の砂内部の状態をX線マイクロCTで観察するための実験システムを構築し実験を行った.安定液濃度が泥膜形成に与える影響を調べるため,3%, 4%, 5%, 6%の4種類の濃度に調整した安定液を珪砂3号に浸潤させた.その結果,濃度が低い条件よりも高い条件において砂表面にベントナイトが堆積し明瞭な泥膜が形成される傾向を観察した.この時,明瞭な泥膜が形成されたケースでは基本的に安定液の蓄積浸潤量が時間経過に伴い収束する傾向が見られた.一方,一部のケースでは泥膜が形成されているにも関わらず累積浸潤量が収束しない結果や,逆に泥膜が形成されていない場合も累積浸潤量が低下・収束する結果も見られた.X線マイクロCT撮影と画像解析を行った結果,砂試料内部に多数のベントナイトクラスターが大きな体積で詰まっていると浸潤が低下し,詰まっていなければ浸潤量が低下しないという傾向を確認した.したがって,浸潤量が低下するか否かは砂表面に形成される泥膜のみならず,砂内部の間隙を閉塞するベントナイトの量や空間的な分布が影響するということが本研究によってはじめて明らかとなった.また,画像解析により間隙スケールの流速・圧力場を定量化する浸透流画像解析を実施した結果,ベントナイトが閉塞する箇所は相対的に流速が速い部分であることが明らかになった.さらに,ベントナイトではなくカルボキシメチルセルロース(CMC)を主成分とするポリマー系安定液を取扱った実験も行い,ベントナイト系安定液の浸潤特性と比較した結果,ベントナイト系は間隙を閉塞するベントナイトにより透水性が低下するのに対し,ポリマー系はベントナイトの閉塞よりもCMCに起因する粘性によって透水性が低下することを確認した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では,ベントナイト安定液の浸潤試験とX線CT撮影を行った後,ベントナイトの体積や存在箇所を特定する画像解析を実施し,それらの特徴が安定液濃度や供給圧力に応じてどのように変化するかに着目する予定であった.一方,CT画像をベースとした浸透流解析が可能な環境構築を実現することができたほか,ベントナイト系安定液の浸潤特性の検討を想定よりも早く進めることができたためポリマー系の安定液の浸潤特性の検討も追加した.その結果,間隙内の流速場と浸潤試験結果を比較して泥膜形成メカニズムについてより詳細に議論できたほか,ポリマー系安定液が砂に浸潤した場合の間隙構造を示す等,これまで検討事例がなかった点を多数明らかにすることができた.また,研究着手当初では想定できていなかった,泥膜形成予測のモデル化に関する重要な知見やビジョンを得ることができたため,当初の計画以上に研究が進展したと考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
世界的に見ても新しい結果が得られている一方,試験の再現性確認は十分にできていない状況である.また,泥膜形成メカニズムの検討についても,例えば間隙内で時々刻々と流れるベントナイト粒子の堆積過程や閉塞に至るまでの物理的な現象等,明確な根拠が十分に得られていないまま得られている知見から仮説を立てて解釈しているのが現状である.そのため,再現性を確認するために試験ケースを蓄積すること,また間隙スケールの現象を上手く説明できるような実験あるいは解析的検討を進めていく.
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Causes of Carryover |
当初,本科研費で検討していた国際会議旅費を別経費で捻出したため,旅費項目で余りが生じた.また,当該科研費のための実験に必要なX線CT装置を用いた実験回数が想定より多く,また利用価格が高騰したため人件費・謝金に費やす計画だった分を装置利用代に回した.これらを総合した結果,全体収支は黒字となり,今年度分で計画していた研究は既に終了していたため次年度使用額に計上することとした.2024年度はフランスでの国際会議があるため,2024年度配分予算と合算して旅費に充てるほか,実験消耗品などを購入する.
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