2023 Fiscal Year Research-status Report
ボルナ病ウイルスの感染受容体の同定および細胞間伝播機構の解明
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23K14082
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
松郷 宙倫 京都大学, 医生物学研究所, 助教 (40907408)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | ボルナ病ウイルス / 細胞侵入 / VSVシュードウイルス / レセプター |
Outline of Annual Research Achievements |
ボルナ病ウイルス(BoDV-1)の感染は、エンベロープ表面にある糖タンパク質(Gタンパク質)と細胞膜上の感染受容体(レセプター)との結合から始まるが、未だそのレセプターは見つかっていない。また、細胞侵入に関わる宿主因子もほとんどわかっていない。そこで、本研究ではレセプターを含む細胞侵入に関わる宿主因子を明らかにし、BoDV-1の病態発現機構の解明に貢献することを目的とした。 本研究では、CRISPRスクリーニングによってBoDV-1のレセプター同定を試みる。BoDV-1は細胞傷害を起こさず、また大量の細胞に効率的に感染させることも難しく、BoDV-1を用いてCRISPRスクリーニングを実施することは難しい。そこで細胞傷害を起こせるVSVシュードウイルスに注目した。BoDV-1のGタンパク質を被ったVSVシュードウイルス(VSV-ΔG-BoDV-1)は過去に報告があるもののその結果は再現できず、力価は非常に低かった。そこで、まず高力価のVSV-ΔG-BoDV-1の作出方法の開発を試みた。Gタンパク質の発現量を調整することで、力価を5-10倍上げることに成功した。さらに、株間で力価に大きな差があることがわかり、BoDV-1 huP2br株を用いることでその力価は200倍程度あがった。また、Gタンパク質の膜融合活性が力価に関係していることも明らかにした。 高力価のVSV-ΔG-BoDV-1を作出できるようになったため、このウイルスを用いてCRISPRスクリーニングを実施した。その結果、ヘパラン硫酸の合成に関わる宿主因子が多くヒットした。そこでヘパラン硫酸を欠損させた細胞を作出し、BoDV-1の感染効率を評価したところ、野生型細胞に比べ大きく感染効率が低下した。このことからヘパラン硫酸がBoDV-1の感染に重要であることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
過去の報告とは異なり、VSV-ΔG-BoDV-1の感染力価が低かったものの、条件検討することで問題を解決し、新たな知見を得るとともにCRISPRスクリーニングを実施することができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
BoDV-1は細胞侵入にヘパラン硫酸を用いることがわかったが、ヘパラン硫酸欠損細胞にも感染できることから他の分子がレセプターとして機能していることが示唆される。そこで、来年度はヘパラン硫酸欠損細胞にてCRISPRスクリーニングを実施する。しかし、非増殖型のVSV-ΔG-BoDV-1ではヘパラン硫酸欠損細胞での感染効率が低く、スクリーニングできない。そこで、来年度はBoDV-1-Gを発現する増殖型の組換えVSVを作出し、そのウイルスを用いてスクリーニングし、レセプターの同定を試みる。
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Causes of Carryover |
今年度はCRISPRスクリーニングを実施することができたが、レセプターの同定には至っておらず、予定していたレセプター関連の試薬の購入や実験がなくなったため次年度使用額が生じた。来年度は、条件を変えてCRISPRスクリーニングを実施し、レセプターの同定を試みる予定であり、レセプターの候補を見つけることができた場合には、予定していた試薬の購入や実験を行うため、その際に今年度の未使用額が必要となる。
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Research Products
(6 results)