2023 Fiscal Year Research-status Report
行動薬理学的手法によるアパシー病態の新規評価系構築と分子基盤の解明
Project/Area Number |
23K14353
|
Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
澤幡 雅仁 富山大学, 学術研究部薬学・和漢系, 助教 (80908848)
|
Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
|
Keywords | アパシー / アルツハイマー病 / 行動薬理学 / 神経変性疾患 |
Outline of Annual Research Achievements |
アパシーはアルツハイマー病(AD) など多くの神経疾患で観察される疾患横断的症状であり、病状の増悪、介護者のQOLの低下が問題となっている。しかし、確立された治療法はなく、基礎研究もほとんど進んでいないため、その病態については不明である。本研究ではまず、アパシー様行動を評価するため、回転かごを用いた行動評価系の確立を目指した。当初想定していた半強制的な回転かご試験では、輪回し行動量のみを解析するため、自発的な一般行動と輪回し行動(意欲関連行動)を完全に区別する事は困難であった。そこで、自発的な一般行動量も同時に評価可能な行動評価系を作製し、検討を行った。その結果、自発的な一般行動量は行動解析の経過日数に従って減少し、行動解析装置への馴化が見られたが、反対に輪回し行動量は増加した。これらの結果は、独立した試験系により評価した本実験計画開始前の予備検討の結果と一致したため、自発的な一般行動量と輪回し行動量を明確に区別する事が可能となり、行動評価系の改良に成功したと考えている。 この改良型行動評価系を用いて、神経変性疾患の1つであるパーキンソン病(PD)モデルマウスを作製し、評価を行った。PDは振戦などの運動機能障害(運動症状)が主症状であるが、アパシーなどの精神機能の障害(非運動症状)も高い頻度で出現する。過去の報告においてPDの非運動症状を調べる目的で開発された、運動症状がほとんどなく、非運動症状が出現するPDモデルマウスを今回の実験に用いた。その結果、パーキンソン病モデルマウスでは輪回し行動量の有意な減少が見られたが、同時に測定した自発的な一般行動量では変化がなかった。さらにrotarod試験においても協調運動に異常は見られなかった。これらの結果から、回転かご試験はアパシーを評価する新たな行動評価系となる事が示唆される。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
従来の半強制的にマウスが回転かごを回す実験系から発展させ、より能動的な行動に依存した自発的な輪回し行動を測定し、同時に一般的な運動量が測定可能な評価系を確立した。本評価系を用いて、計画調書に記載の神経変性疾患モデルマウスの解析を行い、想定した結果が得られたため。
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度に観察されたPDモデルマウスの輪回し行動の障害に対して、薬物を投与し、行動薬理学的評価を行う。当初はPDモデルマウスに対してはレボドパやロチゴチンの投与を計画していたが、いずれも改善効果が期待される薬物であるため、プラミペキソールなど他のドパミンアゴニストについても検討を行う。
|
Causes of Carryover |
当初はアルツハイマー病(AD)モデルマウスを用いた実験を行う予定であったが、自然交配で増やすため、予定した数のマウスが得られなかった。そのため、ADモデルマウスの飼育・維持に必要な経費が一部浮き、次年度使用額が生じた。次年度使用額は、パーキンソン病モデルマウスを用いた実験の推進やADモデルマウスの実験に必要な消耗品及び試薬等の購入費に充てる予定である。
|