2023 Fiscal Year Research-status Report
注意欠如多動症の多動を標的とした機械学習による動画解析
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23K14817
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
上月 遥 京都大学, 医学研究科, 助教 (10883655)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2028-03-31
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Keywords | 注意欠如多動症 / 多動 / 動画解析 / 機械学習 / 定量評価 / 無拘束測定 / 神経発達症 / 児童期 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は注意欠如多動症の主症状である多動に関して、現在臨床的に定量的な指標がないという問題点の解決を目的としている。臨床場面で度々話題となり、実際に目にする児童期の多動は、周囲の養育者の困り感だけでなく、患児本人にとっても怪我の多さや叱責される直接的な原因となり、周囲との軋轢を生んだり、自己肯定感の低下に繋がる症状である。しかし、幼児期や児童期の患児が体動を測定できるウェアブルな端末等を装着することは困難で、体動の観測には大きな課題を抱えてきた。本研究では無拘束下の動画撮影を実施し、その動画情報から機械学習を用いた体動の分析を行う試みを実施する。 まず本研究の実施に先立ち、所属機関の医の倫理委員会に倫理申請を行い、無事に倫理審査を通過した。 また、並行して施設内に動画撮影のためのビデオカメラの設置、撮影場所をマーキングし確定させ、室内の環境を調整し、撮影の初期設定とした。その後、パイロット的に5名の動画データを取得し、機械学習解析を行ったところ、被験者の服装(色、模様、被服部分の個人差)と背景色の兼ね合いで検知精度が動くことが判明したため、改めて単色で無地、四肢の関節が露出した服装、といった統一条件を設定した。神経発達症圏の児童を被験者とする前に、非患者群である5歳から12歳までの6名の児童(男児4名、女児2名)で最終チェックの実験データを作成し、改めて機械学習の解析を行った結果、問題がないことが確認された。 これらの経験から本条件を実験の環境設定として確定させ、2024年3月より実験の運用を開始した。実際に当院児童思春期こころの相談センターを受療している患者で条件を満たす患者に対して、研究内容の説明を行いながら本人・保護者の同意を得た上で、合計8名の実験データの取得が本年度内に達成できている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
倫理委員会の申請には児童期の同意取得や侵襲性の問題等いくつかのハードルを認めるが、本研究は安全な実験内容の設定と、丁寧な説明と本人だけでなく保護者も含めた理解を前提としたデザインであるため、スムーズに申請が受理され、審査を通過することができた。 環境の設定には器具の準備や運用の手順の確認等いくつか時間を要したが、パイロットスタディや試験運用も含め、ほぼ予定通りに環境整備を完了し、すでに本格的なリクルートとデータ蓄積が開始されている。
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Strategy for Future Research Activity |
現在も引き続き受診患者群を中心としたリクルートが継続されている。現時点では実験参加のタイミングが合わず、夏休み等を利用した参加に意欲を示している被検者候補についても、リクルートを前提とした予定調整を開始している。 またホームページ上で非疾患群の被検者募集の告知を行い実験参加者を獲得する準備を行っている。
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Causes of Carryover |
本年度、初期環境設定を行う過程で丁寧に動作確認を実施し、また、患者群を実際に研究に導入する前に非患者群の児童で予備調査を行ったため、リクルートが当初より少し遅れての開始となった。最初に全ての環境設定を確定させず、実験的試行を繰り返しながら適切な機械学習のための条件を模索する必要があり、この調整は本研究の適切な遂行にとって必要な修正であった。3月にはリクルートは開始され、既に実験データも取得されているが、年度末の時期であったため、3月末に参加した被験者に対しての振り込みが年度を跨ぐため本年度の予算に計上できていない。 今後、更にデータ取得をスムーズに行うために、複数人を同時にリクルートできる環境を整える必要性もあり、同じ環境の複製も必要となるため、そのための予算確保を見越している。また、COVIDの5類移行以降活発となっている学術集会での情報収集も次年度以降積極的に活用していく方針である。
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