2023 Fiscal Year Research-status Report
敗血症発症早期の骨格筋電気刺激療法がICU-AWに及ぼす影響の検討
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23K15596
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
松川 志乃 京都大学, 医学研究科, 助教 (10742702)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | ICU-acquired weakness / 骨格筋電気刺激療法 / 敗血症 |
Outline of Annual Research Achievements |
敗血症患者では、四肢筋力低下を特徴とするICU-acquired weakness(ICU-AW)の発症率が高い。ICU-AW発症はICU退室後のADLを低下させ長期予後に影響するため、その予防および治療方法の確立が課題である。近年ICU-AWの治療として骨格筋電気刺激療法(Electrical Muscle Stimulation: EMS)が試みられているが、治療方法として確立していない。 敗血症発症早期には、炎症性サイトカインによって様々な細胞内シグナルが活性化され、蛋白異化の亢進により筋肉量は著しく減少する。一方で、EMSはIL-6などを介して骨格筋の蛋白合成経路(p70S6Kなど)を活性化させ、骨格筋量を増加させることが示されている。これまで申請者らの研究より、LPS投与下においてβ刺激により骨格筋由来の炎症性サイトカインであるIL-6は筋萎縮を増悪させることを示した。したがって、炎症状態の有無や程度が筋萎縮へ影響する可能性があり、EMSについても炎症の影響を考慮する必要があると考えた。 そこで本研究では、EMSによるICU-AWの抑制効果について、炎症反応の影響を時間経過とともに検討する。マウスを用いた敗血症モデルにおいて、EMSが筋萎縮に及ぼす影響を炎症の早期と後期に分けて比較し、EMSの効果とメカニズムをin vivo実験を通して解明する。 本研究により、敗血症におけるEMSの効果的な開始時期および使用方法を明らかにし、ICU-AWの予防・治療方法の一つとして確立できる可能性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
マウス(C57BL/6J、10週齢)に対してLPSの腹腔内投与を行い、敗血症モデルを作成した。骨格筋萎縮を示すユビキチンプロテアソーム系遺伝子であるAtrogin-1とMURF1の上昇をきたすLPSの投与量(2μg/mg)および投与時間(8時間後から24時間後)を確立した。 骨格筋電気刺激療法(EMS)について、既報ではマウスの坐骨神経を露出させて直接刺激を行う方法や大腿部に針を刺す方法など様々な方法が試みられていたが、本研究ではマウス大腿部と足部に刺激用シールを貼付したクリップで挟む方法を確立した。これにより、EMSによりタンパク合成系経路のp70S6Kのリン酸化が30分から4時間で増加することを確認した。 さらに、LPS投与による敗血症モデルマウスにおいて急性期にはEMSによる刺激はタンパク合成を促進しないこと、筋萎縮を増強させることなどの実験結果を得た。 以上から、概ね研究の仮設に合う結果を得ており、現在までの進歩状況は概ね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
敗血症早期においてEMSが蛋白異化を促進する他の経路(オートファジー経路など)の検討と、骨格筋量に与える影響(Myosin Heavy Chainの発現量、組織染色による筋断面積の変化)を評価する。また、炎症性サイトカイン(IL-6、TNF-α)の血中濃度の測定や筋肉内での発現量変化を調べ、EMSによる骨格筋への影響との関連を検討する。 さらに、EMS施行側の下肢と非施行側の下肢での、それぞれの経路や骨格筋量変化の比較を行い、機序についての考察を深める。 炎症反応の後期についても、次年度以降の実験を計画している。
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Causes of Carryover |
薬品の購入やマウスの購入などに使用する。
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