2023 Fiscal Year Research-status Report
インプラント周囲炎の病態形成におけるS100蛋白とCandidalysinの影響に関する研究
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23K16041
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
西川 泰史 徳島大学, 病院, 助教 (10823833)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | インプラント周囲炎 / Candidalysin / S100蛋白 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒト歯肉上皮細胞はOBA-9を用い,LDH assay kitを用いてClysの細胞毒性の評価後,刺激濃度は1μM, 刺激時間は20時間に設定した。この培養条件でClysを刺激し,ELISA kitでS100A8/A9の産生量を測定したところ,産生は認められなかった.次にヒト歯肉線維芽細胞CRL-2014におけるClys誘導性ROSの発現性を市販のkitで測定したところ,時間依存的にROSの発現性を認めた.さらに,ROS阻害剤である。N-Acetyl-L-cysteineを添加した場合の細胞内シグナル経路(MAPK、NF-kB)の活性化やMMP-1, IL-6の産生性を確認した.その結果,ERK, p-38経路の活性化に抑制を認め,MMP-1, IL-6の産生は有意に抑制された.さらに,ClysがS100A8/A9の標的受容体であるRAGEの発現性に与える影響をwestern blotting法にて確認した結果,発現が増加する傾向を認めた.糖尿病患者を模擬した高グルコース培養条件がヒト歯肉線維芽細胞におけるClys誘導性炎症関連因子の発現に与える影響を明らかにした.高グルコース培養条件によりClys誘導性RAGE発現とIL-6産生は増強した.可溶性RAGEはノーマルグルコースと高グルコースともに産生を認めなかった.高グルコース培養条件は,Clys誘導性MAPK経路の活性化に影響を与えた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は,ヒト歯肉線維芽細胞(CRL2014)におけるCandidalysin誘導性ROS(reactive oxygenspecies)が細胞内リン酸化経路やMMP-1, IL-6などの炎症関連因子の発現に与える影響を解明した.インプラント周囲炎における病態形成機序にCandidalysin誘導性ROSが関与することが示唆された.さらに糖尿病に罹患したインプラント周囲炎患者を模倣し,高グルコース条件で培養を行った場合,炎症関連因子の発現を増強することを明らかにした. 歯肉上皮細胞(OBA-9)におけるCalprotectin(S100A8/A9)の産生性にClysが与える影響を確認した.細胞毒性がない条件(刺激濃度 1μM, 20時間)で培養した場合,予想と反してCalprotectinの産生は認められなかった.そのために当初予定していた細胞間のクロストークの解明ができなかった。今後,他のCalprotectin産生細胞である免疫担当細胞(マクロファージや単球)を標的とし,clyが誘導するヒト歯肉線維芽細胞との細胞間クロストークを解明する予定である.
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Strategy for Future Research Activity |
まずは,Candidalysin誘導性S100蛋白(S100A8, S100A9, S100A8/A9)を産生する歯肉上皮細胞や免疫担当細胞(マクロファージや単球)を明らかにする. 次にCandidalysinを刺激した際の培養上清を採取し、歯肉線維芽細胞の培養上清へ添加を行い,Candidalysin 誘導性 S100 蛋白や炎症関連因子が歯肉線維芽細胞に与える影響を明らかにするために細胞内シグナル経路や炎症関連因子の産生性を網羅的に検討する。さらにS100蛋白の標的受容体であるRAGE や TLR4 の各種阻害剤を用いることで,Candidalysin 誘導性 S100 蛋白が及ぼす影響をさらに明らかにしていく。 Candidalysinが関与する炎症反応を抑制制御する因子の探索を行う。phytochemical( Sudachitin,lycopene,β -caroteneなど)がCandidalysin 誘導性の細胞内シグナル経路,ROS(reactive oxygenspecies)や炎症関連因子の産生性に与える影響を解明していく予定である.
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Causes of Carryover |
(理由)ヒト歯肉上皮細胞(OBA-9)とヒト歯肉線維芽細胞(CRL-2014)の細胞間のクロストークを解明するために基礎研究を行った。ヒト歯肉上皮細胞はOBA-9を用い,LDH assay kitを用いてClysの細胞毒性の評価後,刺激濃度は1μM, 刺激時間は20時間に設定した。この培養条件でClysを刺激し,市販のELISA kitでcalprotectin(S100A8/A9)の産生量を測定した。結果は,calprotectin(s100A8/A9)の産生は認められなかった.そのために研究計画を再考することとなった。当初使用予定であった研究試薬(calprotectinのELISA kitなど)を購入する必要性がなくなったために次年度使用額が生じた。 (使用計画)次年度は,他のcalprotectin(S100A8/A9)産生細胞を標的に研究をすすめる予定である。OBA-9以外の歯肉上皮細胞や免疫担当細胞(マクロファージなど)とヒト歯肉線維芽細胞のクロストークを解明する予定である。また,clysがインプラント周囲炎の病原細菌に与える影響を確認し,真菌-細菌間の相互作用の明らかにしていく予定である。この実験に必要な研究物品の購入に次年度研究費と合わせて使用する予定である。
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Research Products
(7 results)