2023 Fiscal Year Research-status Report
Examining the Resource Curse Thesis Through Natural Experiments
Project/Area Number |
23K17543
|
Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
尾野 嘉邦 早稲田大学, 政治経済学術院, 教授 (70598664)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
菊田 恭輔 独立行政法人日本貿易振興機構アジア経済研究所, 地域研究センターアフリカ研究グループ, 研究員 (70865196)
|
Project Period (FY) |
2023-06-30 – 2026-03-31
|
Keywords | 自然実験 / 世論 / 天然資源 / 紛争 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、自然実験というアプローチを用いて因果推論を行い、「資源の呪縛」論をめぐるミクロレベルでのメカニズムを明らかにしようとするものである。具体的には、天然資源である油田の発見が世論及び紛争に与える影響をミクロレベルで検証する。大きな仮説として、①油田が国境線近くで見つかった場合、人々のナショナリズムを高揚させ、その結果、国家間での紛争を発生させることが考えられる。また、②油田が国内(特に民族集団の地理的な境界)で見つかった場合には、民族間での利害対立を深め、民族的なアイデンティティを高め、結果として国内での民族紛争を引き起こすことが考えられる。これらの仮説について検証するために、地理データを始め、世論調査の個票レベルのデータなど、複数の種類からなる巨大なデータを、実証的に分析する計画である。本年度は、そのためのデータセット(Gallup World Poll)を入手し、その中から研究に必要な変数などを整理した。また、地球上の油田開発に関する詳細な地理データについても、研究に必要な変数を特定する作業を行った。政治学において自然実験のアプローチを用いて行われた研究として、自然災害やスポーツイベントなどの偶発的な結果が政治や世論にどのような影響を及ぼしているかについて検証する既存研究が存在しているが、今回入手したデータをそれらの研究にも応用することができるかどうかについて、併せて検討した。このほか、当該年度においては、政治学分野だけではなく、社会科学の他の分野の研究者らを集めた研究会を開催し、自然実験アプローチの有用性や応用可能性について幅広く議論した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究に必要なデータセットについて、ほぼ当初の予定通りに入手することができた。データセットが巨大であるため、その整理に時間がかかっているが、順調に作業が進行している。
|
Strategy for Future Research Activity |
地球上の油田開発に関する地理データと世界各国で行われた世論調査の個票レベルのデータを整理した後、それらを併用して分析する作業を行う予定である。また、入手した世論調査のデータが自然災害やスポーツイベントといった偶発的な出来事が政治や世論にどう影響するかというテーマにも応用できるかどうかを模索し、自然実験アプローチの政治学的有用性について探る。そしてそれらをもとにした結果を論文化し、学会や研究会などで研究発表を行う。
|
Causes of Carryover |
データセットとデータ分析に必要な機材の購入について、作業の都合で一部、先送りすることとした。その分の物品費を次年度に使用する予定である。また、海外での研究発表を次年度に行うこととし、旅費分の予算を繰り越した。外国為替相場動向の関係で、海外渡航に必要となった増額分を次年度の予算と合わせて使用する予定である。
|