2023 Fiscal Year Research-status Report
乾湿繰り返し条件における合成C-S-Hの炭酸化挙動の評価に関する研究
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23K19155
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
呉 多英 北海道大学, 工学研究院, 助教 (60976166)
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Project Period (FY) |
2023-08-31 – 2025-03-31
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Keywords | 炭酸化 / CO2吸収 / 合成C-S-H / 乾湿繰り返し |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、水酸化カルシウムと二酸化ケイ素を用いて、Ca/Si比(0.7,1.2,1.5)の異なるC-S-Hを合成し、異なる相対湿度(40% RH、70% RH、100% RH、60-80% RH、50-90% RH)環境下に一定期間存置して炭酸化させ、その炭酸化度を測定した。 各相対湿度環境下で炭酸化した合成C-S-HのCaCO3生成量を評価するため、熱重量分析を行った。その結果、C/Sが1.5の場合、70、60-80、50-90% RH の環境下で炭酸化したC-S-Hでは、700℃付近にピークが見れたが、C/Sが1.2の場合、同条件でのピークが見られなかった。C/Sが1.5の場合、合成直後にCa(OH)2が8.7%程度残っていたため、 Ca(OH)2の炭酸化によりCalciteの生成量が増えたと考えられる。本実験では、70、50-90% RHの環境下でのCaCO3生成量がほぼ同じであった。通常、乾燥によるC-S-Hシートの再配列から粗大な空隙が生じ、その連続性が高まる。その後、その後湿度が高くなるとより多くのイオンがC-S-Hシートから溶脱されてより炭酸化が進む。しかしながら、本実験で用いた合成C-S-Hは、その粒径が小さかったため、すでに比表面積が大きく、乾湿繰り返しによるCO2促進固定効果が見られなかった。 試料の各鉱物の同定は、粉末X線回折により行った。C/Sが1.5の場合、40% RHを除いてCalciteの生成量が多く、C/Sが1.2のC-S-Hにおいては、vateriteの生成量が多かった。また、C/Sにかかわらず、50-90、70、60-80、40、100% RH順にCaCO3生成量が多い結果が得られた。以上の結果は、熱重量分析結果とおおむね一致する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、当初の計画通りにCa/Si比が1.5、1.2、0.7の合成C-S-Hを研究対象とし、乾湿繰り返し環境下における合成C-S-Hの炭酸化程度を熱重量分析、X線回折測定によるCO2固定量、フーリエ変換赤外分光分析による化学結合状態変化結果から評価を行った。温度とCO2濃度は、それぞれ20℃と0.04-0.05%で、炭酸化期間は1、3、7、14日とした。 さらに、実験結果から合成C-S-Hの粒径が小さい場合、すでに比表面積が大きく、乾湿繰り返しによるCO2促進固定効果が見られないことが分かったため、C3Sの水和から直径が数ミリのC-S-Hの製作を試みている。
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Strategy for Future Research Activity |
粉末状態のC-S-Hを対象として乾湿繰り返し環境下における炭酸化程度の評価を行った結果、粉末状態のC-S-Hは、比表面積が大きいため、乾湿繰り返しによるC-S-H内部の炭酸化効果より表面から溶出されるCaイオンによる炭酸化の方が大きい影響を与えていたことが明らかになった。したがって、今後、C3SおよびSiO2ゲルを用いてペースト状のC-S-Hを作成し、より大きいサイズ(約1mm)のC-S-Hを対象とし、乾湿繰り返しにおける内部構造変化が炭酸化に与える影響を明らかにする予定である。
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Causes of Carryover |
試薬を購入する予定だったが、残高より少し高かったため、購入をできず、次年度使用額として残ったが、その金額は、2023年度の所要額の1%以下であり、2024年度に元々購入予定だった試薬を買うつもりである。
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