2023 Fiscal Year Research-status Report
電気化学プロセスを用いた表面ナノ構造制御に基づく超高効率冷却基板の創製
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23K19172
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
岩井 愛 北海道大学, 工学研究院, 助教 (50978541)
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Project Period (FY) |
2023-08-31 – 2025-03-31
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Keywords | ライデンフロスト効果 / アノード酸化 / アルミニウム / ポーラスアルミナ |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の研究においては、アルミニウムを様々な条件下で陽極酸化(アノード酸化)することにより、ライデンフロスト効果を抑制できる表面構造の構築を目的とした。高純度アルミニウムを塩基性四ホウ酸ナトリウム水溶液に浸漬して種々の電圧の定電圧アノード酸化を行うと、アルミニウム表面にポーラス型酸化皮膜(ポーラスアルミナ)が生成した。印加電圧が大きくなるほど、ポーラスアルミナの細孔間距離および細孔径は増大した。これらの試料表面の純水に対する静的接触角を測定すると、高電圧アノード酸化試料ほど小さな接触角をもつ傾向にあった。 ポーラスアルミナ形成試料を200℃に熱し、その試料表面に微小な水滴を滴下すると、水滴は試料表面に濡れ広がるとともに、一部は砕けながら速やかに蒸発した。この際、ポーラスアルミナの細孔間距離が大きく、細孔径が大きい表面ほど、水滴の蒸発に要する時間は短縮された。一方、試料温度を250℃以上に増大して水滴を滴下すると、ライデンフロスト効果が発現するため、水滴の蒸発には長時間を要した。試料を加熱し続けながら連続的に水滴を滴下したところ、液滴滴下数の増加とともに試料表面温度が大きく低下することを確認した。 種々のアルミニウム合金を用いてアノード酸化を行うことによって試料表面にポーラスアルミナを形成したのち、同様の液滴滴下実験を行ったところ、一部の合金においてはライデンフロスト効果を大きく抑制できた。 これらの研究成果により、アルミニウムおよびアルミニウム合金表面にナノ構造を適切に制御したポーラスアルミナを形成することにより、ライデンフロスト効果を簡単に抑制できる知見を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ライデンフロスト効果を抑制できるポーラスアルミナの形成条件が明らかになりつつあるため。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究により、どのような条件においてアルミニウムのアノード酸化行い、どのような構造をもつポーラスアルミナを形成すればライデンフロスト効果を抑制できるのかを見出しつつある。今後は、本年度の研究成果を基にして、液滴の蒸発挙動に及ぼすポーラスアルミナの構造の影響を、ハイスピードカメラやサーモグラフィーカメラを用いてより定量的に評価したい。
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Causes of Carryover |
研究に使用する物品の変更や、調達の方法の工夫により、当初計画より経費の使用が節約できたため、当該年度の実支出額が抑えられた。 翌年度分と合算し、高精度熱電対をはじめとする物品費や、論文を発表するための投稿費用に充てる計画である。
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