2023 Fiscal Year Research-status Report
胎盤幹細胞由来syncytiotrophoblastを用いた薬物の胎盤通過性評価とメカニズムの解明
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23K19417
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
古堅 彩子 北海道大学, 薬学研究院, 助教 (90767261)
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Project Period (FY) |
2023-08-31 – 2025-03-31
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Keywords | 妊娠 / 薬物治療 / 胎盤 / トロホブラスト / トランスポーター / P-gp / BCRP / MRP |
Outline of Annual Research Achievements |
妊娠時の薬物治療において、薬物の胎盤通過に関する情報は、胎児への影響を考慮する上で重要である。近年、ヒト胎盤幹細胞 (trophoblast stem: TS) の樹立が報告され、胎盤の発生・機能を解析する上で有用なツールとなることが期待されている。しかし、本モデルが、実際の胎盤における薬物輸送機能を反映しているか否か十分な検討は行われていない。本研究は、TSより分化したsyncytiotrophoblast (ST) を使用し、薬物移行性や輸送メカニズムを予測するin vitroモデルとして応用することを目的とした。本年度は、TS由来ST (ST-TS) におけるトランスポーター発現解析ならびに排出トランスポーターの機能解析を行った。 各種マーカー (syncytin-1, syncytin-2, syndecan-1, β-hCG, E-cadherin) の発現変動により、STへの分化を確認した。PCR arrayを用いて、84種類の薬物トランスポーターの発現レベルを解析した。胎盤のモデルとして従来から汎用されるBeWo細胞と比較したところ、多くのトランスポーターについてST-TSにおいて高い発現が確認された。主要な排出トランスポーター (BCRP, P-gp, MRP2) に着目し、更なる検討を行った。その結果、mRNA、タンパク質レベルでST-TSにおいてヒト胎盤組織に近い発現が確認された。また、蛍光基質 (BCRP: Hoechst 33342, P-gp: Rhodamine 123, MRP2: CDFDA) の蓄積評価により、トランスポーターの機能を評価した。基質蓄積量は各阻害剤 (BCRP: Ko143, P-gp: Elacridar, MRP2: MK571) により増加したことから、ST-TSにおける薬物排出トランスポーターの機能的発現が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、「I. TS由来 STにおける薬物トランスポーター発現プロファイルの解析」について検討を進めた。また、蛍光基質を用いた輸送評価により、ST-TSにおいて薬物排出トランスポーターが機能していることを示すことができた。また、実際の薬物を用いた解析にも着手し、次年度の計画に繋げる結果を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度は、通常の二次元培養における検討を進めたため、「I. TS由来 STにおける薬物トランスポーター発現プロファイルの解析」の計画について、3次元培養条件におけるデータも取得していく予定である。さらに、研究計画「II. 経細胞輸送評価系の構築と予測性の検証」についても着手する。Transwellを用いた経細胞輸送評価系の妥当性を検証する予定である。予備検討において、上皮電気抵抗 (TEER) 値の上昇が現在の培養条件では、十分ではないことが示唆されたため、insertの素材、細胞接着面のコーティング、培地等の条件を試行する。さらに、実際に臨床において使用される薬に着目し、構築したモデルの予測性を検証する予定である。
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Causes of Carryover |
技術補助のための人件費 (3月分) の決定が年度末の間際であったため、わずかに端数が生じてしまった。次年度の消耗品の購入に充てる予定である。
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