2023 Fiscal Year Research-status Report
新規癌骨病変形成因子NEO1の分子機序の解明とバイオマーカーとしての診断法の開発
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23K19694
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
中上 絵美子 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(歯学域), 助教 (10980170)
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Project Period (FY) |
2023-08-31 – 2025-03-31
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Keywords | myeloma / neogenin1 / osteoblast / cancer |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、新規骨形成抑制因子Neogenin1(NEO1)の骨芽細胞分化抑制機序および腫瘍細胞からの産生機序を解明し、腫瘍による骨病変形成の病態解明および新規治療法への開発へとつなげる。さらに、患者血清中のNEO1濃度を計測し、骨病変との関連を臨床病理学的に解析し、バイオマーカーとしての可能性を検討する。今年度の研究実績は以下のとおりである。
MC3T3-E1を用いた骨芽細胞培養系にリコンビナントNEO1(rNEO1)を添加し、骨芽細胞分化をAlizarin Red染色・von Kossa染色や各種骨芽細胞分化マーカーの発現を検討し評価をしたところ、rNEO1は骨芽細胞分化を顕著に抑制した。②BMPとNEO1をpreincubationさせ、血清スタベーションしたMC3T3-E1に添加し、骨芽細胞分化促進シグナルであるBMPシグナルの解析を行ったところ、rNEO1はBMP2に誘導されるSmad1/5/8のリン酸化抑制した。このことから、rNEO1はBMP2と結合し、BMP2の囮受容体として作用することが示唆された。③患者検体から組織アレイを作製し、骨髄腫細胞でのNEO1の発現を検討したところ、すべての患者で高発現していることが明らかとなった。④NEO1は神経突起伸長のガイダンス因子であるが、神経細胞株F11およびPC12に骨髄腫細胞の培養上清ならびにリコンビナントNEO1を添加したところ、神経突起の伸長が顕著に誘導された。このことは、骨髄腫の主たる臨床症状の一つである骨痛の増悪に関与していることが示唆される。⑤NEO1は接着分子のリガンドとして機能するが、その受容体としてNetrin1(NTN1)の発現を各種細胞で確認したところ、骨髄間質細胞に高発現することが明らかとなり、NTN1-NEO1を介した細胞間相互作用により、骨髄腫の増殖・薬剤耐性が誘導されることが示唆された。⑥NEO1ノックダウン骨髄腫細胞株を作成するために、骨髄腫細胞に導入するNEO1 shRNAコンストラクトを作成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本実験には破骨細胞や骨芽細胞、神経細胞や骨髄腫細胞を使用するが、これまでは主に細胞株を使用した実験を行ってきた。これまでの実験の中で、骨芽細胞に対してneogenin1は分化を抑制していることが明らかとなっている。今後さらに、骨髄腫環境におけるneogenin1の作用を評価する必要がある。また、学会発表や論文化を進める上で実際にマウスから採取した細胞を用いて実験を行う必要があるものと考える。以上の理由から概ね順調に進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は以下の検討を行う。 ・骨髄腫細胞におけるneogenin1の作用と細胞外neogenin1の産生機序について野生型とneogenin1ノックアウトマウスを作成し検討する。 ・neogenin1ノックアウト細胞を作成し、動物モデルにおいて骨髄腫の進展や細胞増殖に影響があるか検討を行う。
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Causes of Carryover |
当該年度の実験では実験室が所有する細胞株を使用し、研究を行ってきたが、今後はマウスより採取した細胞もしくはin vivoでの実験を予定している。細胞種も骨芽細胞に限局していたが、骨髄腫の治療法の開発を行うため、使用する細胞種も増やす必要があるため、使用する試薬や動物数が当該年度よりも次年度のほうが格段に増える見込みである。このため、次年度使用額が生じた。
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