2023 Fiscal Year Research-status Report
歯周病細菌由来外膜小胞の歯周病における役割および病態解明
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23K19719
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
植村 勇太 徳島大学, 病院, 助教 (10980162)
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Project Period (FY) |
2023-08-31 – 2025-03-31
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Keywords | 歯周病原細菌 / 外膜小胞 / 歯肉上皮 |
Outline of Annual Research Achievements |
主要な歯周病原細菌であるPorphyromonas gingivalis(Pg)は、脂質二重膜から構成されるメンブレンベシクル(Outer Membrane Vesicles;OMVs)を産生し、歯周組織を構成する様々な細胞に影響を与えることが知られている。歯肉上皮細胞は細胞間で結合し細菌侵入などから生体を守るバリア機能の役割を担う。Pg-OMVs刺激による細胞間結合バリア機能破綻への影響についてはいまだ不明な点が多い。当該年度は不死化ヒト歯肉上皮細胞 を用いてPg-OMVsの細胞間結合の主要な接着因子E-cadherineの発現への影響を検討したPg ATCC33277株およびジンジパイン欠失株であるPgKDP136(RGP, KGP両欠損株)、線毛欠失株Pg MPG1を用いて培養し、Pg-OMVsおよびPgKDP-OMVs、PgMPG1‐OMVsを精製した。まず、OMVのジンジパイン活性を調べるとジンジパイン欠失株、線毛欠失株よりそれぞれ精製したPg KDP-OMVs、Pg MPG1-OMVsはPg-OMVsに比べてジンジパインRgp活性が低かった。これを用いてWestern blot法、免疫染色にて検討を行った。いずれもPg-OMVs添加によりE-cadherineの顕著な蛋白減少を認めた。そのほかのOMVsでは蛋白減少は認めなかった。続いてデキストランを用いた細胞透過性実験を行った。こちらもPg-OMVs添加群がデキストランの透過性が上がった。以上のことからPg-OMVs内に含まれているジンジパインが細胞間の接着因子に影響を与えていると思われる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
Pg-OMVs刺激による細胞間結合バリア機能破綻への影響について検討を行う前に、使用するOMVsの安定的な精製を行い、内容物として含まれているジンジパインの活性に関してそれぞれの菌体と傾向が一致していることを確認する必要がありそこに時間を要した。しかしその後傾向が一致していることが確認できたため細胞に使用し、主要な接着因子であるE-cadherineに着目してWestern blot法、免疫染色を行った。OMVs添加によるE-cadherine蛋白の減少及びジンジパイン欠失株OMVsでの減少量の低下を認めた。デキストランを用いた細胞間結合の透過性実験においても同様の傾向を認めた。以上よりPg-OMVs内に含まれているジンジパインが細胞間の接着因子に影響を与えていると思われることを特定することができた。当初の実験計画よりやや遅れているが確実に進捗している。
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Strategy for Future Research Activity |
1)歯周病原細菌由来OMVsによる歯肉上皮細胞バリア機能破綻への影響に関して、他の主要な接着因子であるClaudin-1や細胞質膜表面にあるシグナル伝達に関与しているZO-1等を標的としてWestern blot法、免疫染色、realtimeRTPCRで検討を行う。 2)歯肉上皮細胞以外の歯周組織構成細胞に対するOMVsの影響を検討する。破骨前駆細胞へのOMVs刺激による破骨細胞誘導に関して分化マーカーであるNFATc1やDC-STAMP、CathepsinKの発現やWestern blotやreal-time PCRで解析する。また、歯肉上皮細胞と同様にPgの病原因子である線毛やジンジパイン欠損株由来のOMVや他のRed-complex菌種由来OMVを用いて検討も行う。
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Causes of Carryover |
今年度は,必要な培地や試薬が予定より少額で賄えたため、次年度使用額が生じた。 (使用計画)次年度はOMVによる標的とする接着因子を複数調査するため試薬や抗体が多く必要となると予想されるため次年度研究費と合わせて使用する計画である。
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