2024 Fiscal Year Annual Research Report
越境する文学の基本構造:日本各時期の唐詩受容の俯瞰的研究
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23K20083
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| Allocation Type | Multi-year Fund |
| Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
静永 健 九州大学, 人文科学研究院, 教授 (90274406)
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| Project Period (FY) |
2024-04-01 – 2025-03-31
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| Keywords | 唐詩 / 和漢朗詠集 / 題画詩 / 唐汝詢 / 唐詩選国字解 / 長恨歌 / 平仄 / 目加田誠 |
| Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、中国古典文学の数多くの代表的な作品群の一つである唐詩が、日本にどのようにもたらされ、各時期(平安・鎌倉室町・江戸・明治以後)において、どのようにその鑑賞のあり方が変化していったのか、またその変化の根源的理由の分析をおこなうことを目的として行われたものである。最終年度となった令和6年度は、特に平安時代の最も顕著な資料である藤原公任撰『和漢朗詠集』を対象に、その採録された詩句の音律的特徴、つまり平仄式がいかに現地中国の公式に合致しているか、を実際に平仄式を求めて明らかにした。この公開データは、日本・中国を通じて始めて提出される画期的な資料となっている。中世(鎌倉室町期)については、「音読」の方式が徐々に日本化(同時期の中国本土の発音と異なってゆく)するに従って、書道(墨蹟)や絵画などのビジュアルを重視した唐詩受容に移ってゆく傾向が見られた。とくに後者の「題画詩」(水墨画の余白に添え書きする漢詩句)については、瀟湘八景など中国の名所旧跡が、次第に日本の「天の橋立」など日本の風景に移行してゆく状況がほぼ把握できた。近世の江戸期については、中国明代末期の文人唐汝詢による唐詩解説書『唐詩解』が、さまざまな出版物に再編集されて、日本の『唐詩選』(元来は李攀龍の撰とされるもの)流行のきっかけを作っていたことを、新たにつきとめた。ここにいう唐汝詢という人物は、五歳で全盲となった上海の一民間人であるが、その民間人である「身分」や全盲という「障害」が、逆に文学鑑賞のヒエラルヒーを破壊し、やがて海外の日本人(これも武士だけでなく町人や農民にも)にも唐詩を読む門戸を広げたのである。そして、近代における考察では、20世紀初頭つまり中華民国建国から日中戦争までの間の、日本と中国の大学教員の交流にスポットをあてて新発見資料の発掘につとめた。これらの活動を通じて大いに所期の成果を挙げた。
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