2022 Fiscal Year Annual Research Report
Voluntary Jurisdiction in European History
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20H01414
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
佐々木 健 京都大学, 法学研究科, 教授 (70437185)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川島 翔 九州大学, 法学研究院, 准教授 (30822796)
山中 聡 東京理科大学, 教養教育研究院神楽坂キャンパス教養部, 准教授 (80711762)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 非訟 / 西洋史 / ローマ法 / 教会法 / 学識法・法曹 / フランス革命 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、雑誌掲載の原著論文1件、書評1件、研究動向論文1件、学会発表5件、関連業績2点を成果として発表した。 研究代表者による雑誌論文は、ローマでの洪水に際し、流下物が残留する土地の保有者が、流下物回収を企図する者に対して、担保提供を求め得るとする史料に注目する。同史料によれば、担保を供された以上は、土地保有者には回収妨害が禁止される。こうして、通常訴訟(本案)において語られる妨害排除や物権的請求権が、実は背景として非訟的手続、すなわち担保請求と現実の担保提供により先行する規律に服し、その成否や非協力を前提にしていたことを解明した。換言すれば、占有保護が必ずしも本権保護と一致せず、危急の仮処分的保護を、所有(権)概念と関連付ける必然性もない法制の実例を挙げ、訴訟法の観点から本案と本権との関係を検討する端緒を得たことになる。 中世教会法との関係では、債務不履行時に破門されるとの条項付契約の公証や、法廷で自白(認諾)した者として扱う債務証書としての認諾書(Konfessatbriefe)の作成といった教会裁判所の活動や、その背景にある破門や法廷認諾(confessio in iure)の理論について検討した。その成果が、下記学会発表であり、活字化が待たれる。 近代フランス史に関しては、研究動向を整理した論考を得た。非訟が当時のフランス社会で果たした役割、意義を解明する基礎的作業である。 なお、関連業績として、民事刑事の両訴訟が、二段階制を共に採用する点で相似形をなすことを指摘した寄稿では、そうした「訴訟」に対置されるべき「非訟」との異同を整理することとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前述の通り、原著論文、書評、学界動向論文、学会発表など、本研究の5カ年計画に沿い、前年度までの到達点から発展させ、分析を深化させた。この成果を踏まえ、最終年度に向け、各分野で得た知見を統合する俯瞰的研究に進むべく、各時代・地域の比較に着手している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、各分野での個別研究(論文・学会発表)を出力した上で、比較・統合の視座を代表者・分担者全員で検討する。 古代については、ローマにおける非訟的手続として、相続紛争の処理方法に注目して研究を進める。中世欧州については、教会法の訴訟手続が世俗法に与えた影響を解明する。また、フランス近代に関しては、革命期フランスにおける離婚訴訟を非訟と対比する俯瞰的視点から再考する。 また、最終年度までに、全体像を語る論点整理と論考執筆・学会発表の用意を進める。
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Research Products
(11 results)