2020 Fiscal Year Annual Research Report
ダイヤモンドパワーデバイス実現に向けたイオン注入プロセスに関する研究
Project/Area Number |
20H02139
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
小倉 政彦 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エネルギー・環境領域, 主任研究員 (80356716)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西村 智朗 法政大学, イオンビーム工学研究所, 教授 (80388149)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | ダイヤモンド / パワーデバイス / イオン注入 / デバイスプロセス / pn接合 / MOSFET / ホッピング伝導 / 半導体 |
Outline of Annual Research Achievements |
ダイヤモンドは低損失で耐環境な次々世代パワーデバイスの材料として嘱望されているが、デバイスプロセスに不可欠なイオン注入技術の適用が、照射欠陥やグラファイト化に起因する問題が解決できていないために難しいとされてきた。イオン注入プロセスは添加する元素の濃度分布を容易に制御することができ、デザインフレキシビリティの点で非常に有利であるため、ダイヤモンドのデバイスプロセスに適用できれば大きなブレークスルーとなる。 本研究ではダイヤモンドのデバイスプロセスにイオン注入プロセスを適用させるために必要な技術を構築する。そのためには、Siなどで行われているように、キャリア活性層たる母体層のリンドープn型層にホウ素をイオン注入することで局所的にp型に変化させ、更にそのp型領域とn型領域による接合がpn接合として機能する必要がある。 本年度の最も大きな成果は、母体のn型層(産総研)とこのイオン注入によるp型層(産総研・法政大学)を用いて、整流性をもつpn接合ダイオードの作製に成功したことである。具体的には、17乗程度(cm-3)のリンがドープされたn型層にホウ素を400 keVの単一エネルギーで19乗台(cm-3)の濃度になるようにイオン注入し、焼鈍、エッチング加工、電極付けをすることによりpn接合素子を作製した。電気特性の測定により2桁の整流性をもつダイオードになっていることがわかった。p型層,n型層のいずれもHall効果測定でキャリアの型が同定されたものである。今後、デバイスプロセス応用や物性解明に向けたプロセス改善を行っていく。なおこれは世界初の結果であり、国際学会(31st International Conference on Diamond and Carbon Materials, 2021年9月)での発表を予定している他、知財化を予定している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当該年度には、母体のn型層とそこにイオン注入して生成したp型層を用いて、最も単純なバイポーラデバイスであるpn接合ダイオードを試作し、電気測定による動作テストを行うことのできる素子構造の作製までを目標とし、整流性を得るところまでは問わない目標を立てていた。実際には、次の段階である整流性の確認までが得られたため、目標を超えたと判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
当該年度には、母体のn型層とそこにイオン注入して生成したp型層を用いて作製したpn接合ダイオードにて整流性が得られたが、まだまだその特性は電子デバイスにすぐに応用できるレベルではなく、特性の解明とプロセス改善をしなければならない.今後、照射欠陥の影響を小さくして、より安定したp型層,n型層を生成することが必須であるほか、例えば以下の点を行う予定である。 ・光学特性測定によりpn接合ダイオードに於けるキャリアの再結合のスペクトルを観測する。そのためにはより大電流な素子の作製が必要であり、設計を開始する。また、EBIC測定による空乏層でのキャリア観察によりpn接合や欠陥の評価を行う。そのためには逆方向リークの少ない素子が必要であり、設計を開始する。 ・数年後のMOSFET試作には微細な領域へのイオン注入技術が必要であり、フォトリソグラフィ等を利用したマスクのための材料の検討が必須である。ダイヤモンド表面への吸着性、耐高温など、シリコンプロセスがそのまま適用できないことが予想されるため、次年度の2年目には検討を開始する。
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