2022 Fiscal Year Annual Research Report
不確実性の高い社会における地方政治への信頼の変動要因とその帰結の実証的解明
Project/Area Number |
21H00684
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
善教 将大 関西学院大学, 法学部, 教授 (50625085)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
曽我 謙悟 京都大学, 法学研究科, 教授 (60261947)
小林 哲郎 神戸大学, 法学研究科, 研究員 (60455194)
中谷 美穂 明治学院大学, 法学部, 教授 (60465367)
SONG JAEHYUN 関西大学, 総合情報学部, 准教授 (70822617)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | コロナ禍 / 地方政府 / 信頼 / サーベイ実験 / オンライン調査 / ビッグデータ / 知事 |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度は、7月に投開票が行われた2022参院選後に、30000人以上の規模のオンライン意識調査を実施した。この調査には、一般的な政治意識や参院選における投票選択だけではなく、本研究プロジェクトの柱の一つである、地方政治への信頼や知事の支持率に関する質問なども含まれている。くわえて、ヒューリスティクスとしての知事の重要性を検証するためのサーベイ実験なども含めていた。また、知事の党派性認識という、既存の意識調査ではほとんど明らかにされてこなかった認識を調査するための独自性の高い質問なども、盛り込んだ。
以上の調査の実施とは別に、2021年度に行った調査結果に関する分析も、2022年度では進めた。特に中心的に分析したのは、コロナ禍における医療崩壊の責任が、どの主体に帰属されているのか、またそれは、党派性とどのように関連しているのかである。この点について、大阪府、兵庫県、愛知県、東京都を対象とする意識調査を用いて分析したところ、政権与党に責任を帰属するだけではなく、野党に対して責任を帰属する傾向も見られた。言い換えると、知事や市長といった「最前線」にたっていた政治的主体に対して、医療崩壊の責任を帰属する傾向はほとんど見られなかった。国政与党・野党に対する責任帰属は、政党に対する拒否意識と強く相関し、その結果、自民拒否層は自民に責任を、逆に野党拒否層は野党に医療崩壊の責任を帰属する傾向が強くなっていた。認知度が高くなく拒否度が小さい日本維新の会は「漁夫の利」を得る形で、コロナ禍が支持率にそれほど影響を与えなかった可能性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画どおり、2022年度参院選後に、多くの有権者を対象とする意識調査を実施することができた。くわえて、この調査を用いた分析結果については、一部だが、すでに日本選挙学会において報告することが確定している。さらに、昨年度に実施した意識調査を用いた分析結果について、すべてではないが、論文としてまとめ投稿することができた。以上から、本研究は順調に進展しているものと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度においては、2021年度および2022年度に実施した意識調査を用いた、本格的な分析を行なっていく。特に、2022年度に実施した意識調査については、都道府県別の分析を可能とする規模の調査結果であり、この特徴をいかした分析を行っていく予定である。
ただ、当初計画していた「ヒューリスティクス」としての知事の研究については、全面あるいは部分的に修正する必要があると考えている。その理由は、大きく2点ある。第1はヒューリスティクスとしての知事の重要性の低下である。2022年度に実施したサーベイ実験の結果を試論的に分析したところ、多くの都道府県において、手がかりとしての知事には、それほど有用性がないとの結果が得られた。2020年や2021年とは異なり、2022年度またそれ以降は、意思決定主体としての知事の役割が低下している可能性があり、ゆえにこの点を踏まえた調査・研究へと、本研究の方向性を切り替える必要があると考えている。第2はコロナ禍からポストコロナ禍への移行が、かなりのスピードで進行しているためである。コロナ禍において重要となる問いではなく、これからは、ポストコロナ禍において重要となる問いをたて、その原因や結果を分析していく必要があるだろう。この観点からも、本研究の方向性については改めて検討し直す必要があると考える。同様に、TwitterなどSNSのデータを用いた研究についても、APIの利用の観点から大幅に見直す必要が生じている。
以上の通り、本研究は2023年度に、研究プロジェクトの方向性について、一定の修正・見直しを行い、その上で、2024年度以降に、その目的に適した調査・分析について実施する予定である。
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Research Products
(11 results)