2021 Fiscal Year Annual Research Report
Empirical Analysis of Social Costs Caused By Product Defects Using Big Consumption Data
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21H00710
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
太田 塁 横浜市立大学, 国際商学部, 教授 (00338229)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 正弘 東北大学, 国際文化研究科, 准教授 (60622214)
伊藤 新 独立行政法人経済産業研究所, 研究グループ, 研究員 (90793050)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 製造物瑕疵 / 行動変容 / 消費ビッグデータ / COVID-19 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、製造物瑕疵が消費者や企業の行動に与える影響を実証的に明らかにすることである。品質の欠陥が明らかになると、消費者は製造会社や関連製品に対する不安から、購入する財の種類や頻度を変更するであろう。このような消費者の行動変容を分析すること、さらにこの行動変容が、当該企業のみならず競合他社の行動をどのように変化させるかを分析することにより、製造物瑕疵がもたらす社会的なコストを明らかにすることが目標である。 この目的のため、本研究は被害が全国規模で拡大したアクリフーズ社の冷凍食品農薬混入事件(2013年)に着目し、消費者の製品購買に関する高頻度で大規模なパネルデータを利用して実証分析を行う。すでに、私たちは事件後、当該社製品が再普及する過程において、消費者の社会的学習が重要な役割を果たしたことを示したが(Sato, et. al. 2020)、今年度はその推定を精緻化し、これまでの結果の頑健性を示すことができた。 また今年度はPOSデータを購入し、約5250万件のJANコード別販売データを整理した。POSデータは、店舗に来店する様々な消費者の購入を反映するため、購入者層に依存しない販売トレンドを知ることができる。購入者の属性も追跡できる消費者購買パネルデータと組み合わせ、農薬混入事件による消費者の行動変容が、各企業の製品価格や新製品導入に与えた影響を分析する準備を整えた。 新型コロナウィルス感染症の流行に伴う人々の行動変容は、製造物瑕疵と同様に、危機や不確実性下での不安な状況で生まれるという点で共通点がある。そこで、当初の計画にはなかったが、流行初期のマスクの購入行動に着目し、人々の感染予防行動に対する行動変容を分析した。最も重要な結果は、新型コロナに関連する新聞記事の累積数がマスク購入に有意に関係している点である。これは危機における初期の情報の重要性を示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
今年度は研究の準備期間と位置づけ、①消費者の社会的学習に関する既存の分析の精緻化、②POSデータの整理、③不確実性指数のデザインを計画し、どれもおおむね計画通り進んだ。 当初の計画にはなかったが、新型コロナウィルス流行初期の日々のマスク購入行動に着目し、人々の感染予防行動に向けた行動変容を解析した。当研究は経済産業研究所のディスカッションペーパーとして掲載される予定になっている。 当初の計画に加え、新規の研究を遂行できたことを鑑み、当初の計画以上に進展したと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、アクリフーズ社の冷凍食品農薬混入事件を中心に、製造物瑕疵が消費者やその製造企業、また競合他社の行動に与える影響を実証分析する。具体的には、下記の3点が2022年度の計画である。 課題1.製造物瑕疵に直面した消費者の行動とその後の製品普及過程:推定の精緻化を行った、消費者の社会的学習に関する研究(Sato, et. al. 2020)を査読付き学術誌へ投稿、改訂要求への対応を行い、結果の公表を目指す。 課題2.製造物瑕疵に直面した企業の価格設定及び新製品導入に関する意思決定:21年度はPOSデータを整理することができた。22年度は、実証可能なモデルの構築に注力し、推定結果を得ることを目指す。 課題3.製造物瑕疵に起因する、消費財市場で高まる製品の質を巡る不確実性の定量化:テキストデータを活用したRIETI「日本の政策不確実指数」の手法を手掛かりに、事件発生により消費市場で高まる製品の質を巡る不確実性を数値化する指標を作成する。22年度も引き続き、指標のデザインとテキストデータの収集を行う。
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Remarks |
世界の政策不確実性指数(GEPU)が、2021年6月に開催された第28回産業構造審議会総会での資料2 経済産業政策の新機軸の中で、世界で不確実性が高まっている状況を示す指標として取り上げられた。伊藤らによる指数は、GFPUを算出において日本の指数として採用されている。
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Research Products
(5 results)