2021 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21H01909
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
増尾 貞弘 関西学院大学, 生命環境学部, 教授 (80379073)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山内 光陽 関西学院大学, 生命環境学部, 助教 (20802226)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 量子ドット / エネルギー移動 / マルチエキシトン / 発光 / 単一分子検出 |
Outline of Annual Research Achievements |
発光材料や光電子デバイスの高効率化には、効率的な励起子の生成、および有効活用が必要不可欠である。しかしながら、複数の励起子(多励起子)が生成すると「励起子消滅」が起こり、励起子は失活してしまう。本研究の目的は、「励起子消滅が起こる前に、多励起子を取り出す」 ことである。量子ドット表面に複数の発光性有機分子を吸着させ、量子ドットに生成した多励起子を、エネルギー移動により複数の有機分子に取り出す。有機分子からの発光光子数を測定することで、取り出した「励起子の数」を評価し、複数の励起子が取り出し可能な条件を系統的に解明することを狙いにしている。 この多励起子取り出しを可能にするには、量子ドット内で起こる励起子消滅速度より、有機分子へのエネルギー移動速度を速くする必要がある。励起子消滅速度は、量子ドットのサイズ、構造により制御することができる。一方、エネルギー移動については不明な点が多いため、蛍光共鳴エネルギー移動において重要なパラメーター、「スペクトルの重なり」「量子ドット-有機分子間距離」「有機分子のモル吸光係数」の依存性を精査し、得られた結果を基にメカニズムを検討していく。 本年度は、「スペクトルの重なり」について検討した。有機分子として、吸収、発光波長が異なる4種類の色素を用いた。量子ドットとしてはペロブスカイトナノ結晶(PNC)を用い、PNC表面にそれぞれの色素を吸着させ、溶液中、および単一PNCレベルでエネルギー移動を詳細に検討した。その結果、スペクトルの重なりに依存して、PNCから色素へのエネルギー移動が起こることを解明した。さらに、「量子ドット-有機分子間距離」を評価するための新規ペリレンビスイミド分子の合成にも成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画通り、量子ドットと色素分子の「スペクトルの重なり」について、詳細な知見を得ることに成功した。カルボキシ基を有する市販の色素を用いることにより、量子ドット表面に色素を吸着させることが可能であり、量子ドットから色素へのエネルギー移動が起こることを、溶液中、および顕微分光法を用いた単一量子ドットレベルでの測定から明らかにした。 また、今後「量子ドット-有機分子間距離」を評価するために必要な新規ペリレンビスイミド分子の合成にも成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
量子ドットとしてペロブスカイトナノ結晶(PNC)、4種類の色素を用いた研究から、多励起子取り出しについて新規知見を得ることに成功した。今後はPNCのサイズを変化させ、励起子消滅速度を変化させることにより、多励起子取り出しが可能となる条件を検討していく予定である。 また、新規に合成したペリレンビスイミド分子は、上記の4種類の色素より、「量子ドット-有機分子間距離」が短くなり、エネルギー移動速度を速くすることが可能であるため、この分子を用いた評価も行なっていく予定である。 さらに、ペリレンビスイミド系分子については、吸収、発光波長が異なる新規ペリレンビスイミド分子も合成することにより、多励起子取り出しが可能になる条件を系統的に検討していく予定である。
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Research Products
(31 results)