2022 Fiscal Year Annual Research Report
Genetic analysis of species-specific haplotype diversification causing rice reproductive isolation.
Project/Area Number |
21H02168
|
Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
山形 悦透 九州大学, 農学研究院, 准教授 (00600446)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | 雑種不稔 / ハプロタイプ / 分化進化 / イネ / Oryza属AAゲノム種 |
Outline of Annual Research Achievements |
(研究3) O. meridionalis/ O. nivara交雑後代において、S21ヘテロ接合体でも遺伝性の稔性復帰個体が観察されるため、相互作用遺伝子座S21-interacting gene (SIG)を想定し、後代検定等を進めたが同定には至らなかった。遺伝様式を検討した結果、キメリックにエピジェネティックな表現型復帰(エピ表現型復帰)が起き、その変化は後代に継承される、と推察した。このエピジェネティック制御の仮説を新たに提案し、以後の研究を展開した。 (研究1-2) RNA-seq:S21-mer, S21-nivに注力して実験を行った。計画通り遺伝子型に基づき、RNA-seq用の試料は採取した。しかしながら前述のとおりエピジェネティックな表現型復帰がキメリックに起こるため、分げつ/穎花ごとの表現型の運命は花粉発育期では観察者に対して未確定であるため、RNA-seq用に採取した葯の表現型が必ずしも想定したものではない可能性が考えられた。そのため、解読は一時的に見合わせている。分げつごとに花粉稔性と原因遺伝子座周辺のDNAメチル化領域を同定したのち、DNAメチル化程度に基づいてRNA-seqを行う計画とした。そのため、分げつごとにバイサルファイトシーケンスのライブラリー作成を行い、解読に着手した。 (2-2)ORF2のRIP活性の変異: キラー型のO. sativaアレルと、非キラー型のO. merdionalis、O. nivaraアレル由来コンストラクトに関して、大腸菌発現コンストラクトを作成した。リボソーム不活性化活性を有するOsRIP1のHisタグ精製タンパク質を得た。麦芽由来の無細胞翻訳系を用いてOsRIP1を用いたリボソーム不活性化の検出系の実験条件の検討を行っている。遺伝子発現については研究1,タンパク質の活性については研究2にて検討を引き続き行う。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は(目的1)野生種に由来するS21-glum, S21-mer, S21-nivハプロタイプを構成する遺伝子を同定し、種間の変異を解明する。(目的2)S21と相互作用し、S21の効果を解消する新奇遺伝子を同定する。 の二点を目標に進めてきた。(目的2)については詳細な遺伝解析の結果、S21の効果を解消するのはS21座自体における後代に伝達能を有するエピジェネティック制御の可能性(エピ表現型復帰)が考えられた。生殖的隔離機構の遺伝的基盤に関して、世代間で継承されるエピジェネティック制御が関与する例は、動植物通してほとんど報告されていないため、(目的2)については新たな切り口にてアプローチし、現象の解明を引き続き行いたいと考えている。 (研究1-1) 野生種に由来するS21領域のゲノム配列の解明: 計画通り進行している。(1-2)転写マップの作成: S21-merとS21-nivNILに注力して、計画通りRNA解析用のサンプリングを行ったが、概要に記載した通り、中断している。エピジェネティック制御については想定外ではあるが本研究を遂行する上では解明が必須と考えている。DNAメチル化領域を特定したうえで、エピ表現型復帰と関連するDNAメチル化程度の推定、およびRNAseqに進む必要性があると考えられた。現在すでにDNAメチローム用のNGSライブラリー解読を開始し、問題解決に取り組んでいる。 (研究2) RIPの機能解析: in vitroのタンパク質活性試験を行うため、ポジティブコントロールの検出系の作出に取り組んでいる。 タンパク質活性試験については経験が少ないので、より注力して取り組む予定にしている。(研究3) 相互作用因子の同定と高精度連鎖解析: S21の相互作用遺伝子座SIGを想定して進めてきたが、その他の仮説が想定されたので、今後も取り組み実証していきたい。
|
Strategy for Future Research Activity |
(研究1) S21-niv由来のORF2とS21-mer由来のORF2について、ゲノムコンストラクトの作成が難航しているので、すでに得られているcDNAに由来する相補性検定用コンストラクトを作成する。ORF1についてはS21-niv由来、S21-mer由来のコンストラクトをすでにヘテロ接合体に形質転換しているので、T0およびT1世代における評価を進める。転写マップの作製については、研究3などの進展により、花粉発育前においても、分げつ/穎花ごとの表現型の運命が確定できる方法が明らかになれば、早速RNA-seqに着手する。 (研究2) RIPの機能解析: S21-mer由来およびS21-niv由来のORF2プロモーター::ORF2 CDS+GFP融合遺伝子の発現局在コンストラクトを作成し、形質転換体の作出を進める。ORF2のRIP活性の変異の解析については、コムギ無細胞翻訳系におけるリボソーム不活性化活性の評価系を確立後、ORF2-merタンパク質とORF2-nivタンパク質のin vitroにおける活性を計測する。 (研究3) S21-mer/ S21-nivヘテロ接合体の花粉稔性を変化させる遺伝的要因の解明: 従来、S21とは独立の相互作用遺伝子座を想定してきたが、S21座自体における後代に伝達能を有するエピジェネティック制御が、ヘテロ接合体における花粉稔性の違いであると考えた。分げつごとに表現型調査とDNA抽出を行った資料を用いてバイサルファイトシーケンスによるDNAメチル化領域をORF2とORF1周辺のゲノム領域について着目して行い、関連ゲノム領域を推定する。これまで個体ごとにエピジェネティック変化の遺伝性について検討をしてきたが、さらに分げつごとに収穫した種子について遺伝解析を行い、関連ゲノム領域におけるDNAメチル化領域パターンが後代に伝達するか、詳細に検討する。
|
Research Products
(2 results)