2022 Fiscal Year Annual Research Report
沿岸浅海域における地下水湧出と低次生産過程の統合的研究
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21H02271
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Fukui Prefectural University |
Principal Investigator |
杉本 亮 福井県立大学, 海洋生物資源学部, 教授 (00533316)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小森田 智大 熊本県立大学, 環境共生学部, 准教授 (10554470)
山田 誠 龍谷大学, 経済学部, 准教授 (50434981)
鈴木 啓太 京都大学, フィールド科学教育研究センター, 助教 (80722024)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 地下水 / 河川水 / 一次生産 / 二次生産 / 干潟 / 河口 / 内湾 |
Outline of Annual Research Achievements |
有明海:緑川河口干潟において、曳航型比抵抗測定装置を用いた海底下の比抵抗分布調査を行った。その結果、不連続ではあるが、比抵抗が相対的に高い場所がいくつか観測され、干潟の下に海水よりも塩濃度の低い水塊が存在する可能性が示された。干潟周辺に存在する湧水の水素・酸素安定同位体比の測定結果から、これらの水が天水起源であり、干潟周辺の地下水の水安定同位体比は概ねどれも類似していることも明らかとなった。また、係留系観測を緑川河口付近で1点、砂質干潟上で2点実施したところ、基礎生産の支配要因である海底到達光量には大きな季節性があり、冬季の夜に干潮が訪れることが干潟の生産を大きく制限している可能性が示された。砂質干潟の底生生物に対する主要な捕食者(エイ類)による二次生産者(アサリ)への捕食量を推定したところ、アサリの死亡量に対して10%程度しか寄与しないことも明らかになった。 若狭湾:宮津湾内の二枚貝養殖筏において、植物プランクトンの一次次生産を、パルス変調型クロロフィル計を用いて毎月計測した。その結果、一次生産量は一年を通して表層付近で最も高くなる傾向にあったが、底層まで光が十分に届いている時は、海底湧水の影響が顕著に求められる底層付近でも高かった。また、植物プランクトンをサイズ別で見ると、ほとんどの月で20um以下の小型種が優占していた。一方、舞鶴湾奥部において海底湧水と栄養塩・植物プランクトン・動物プランクトン動態の関係を調べるため、クロロフィル計を係留するとともに、週1回の採水観測を開始した。現時点では、地下水トレーサーであるラドン濃度は海面より海底で高いものの、海面と海底で同調して増減する傾向が認められた。さらに、R4年度に由良川河口域で採取していたアミ試料の胃内容物分析を行ったところ、海底湧水の影響も受けて生産していると考えられる底生藻類の割合が高いことも明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
アミ類の胃内容物調査の分析に時間を要したが、概ね順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
有明海:今年度の調査で、干潟域の海底下にも海底湧水を湧出させる水塊が存在する可能性が確認できたので、汀線部から沖合に向けての比抵抗分布調査を引き続き行い、海底下の比抵抗構造を明らかにする。合わせて、比抵抗分布調査の結果から推定される海底湧水が湧出している可能性のある場所において水試料の採取を行い、その水の安定同位体的特性について明らかにし、陸域の水との関連性について考察する。次年度も引き続き物理的・化学的調査を実施し、干潟域における海底湧水湧出環境場についての評価を目指す。 有明海において通年に渡るラドン濃度、ラジウム濃度の季節変動を測定し、224Raの沖方向への濃度勾配から再循環性地下水の湧出量を推定するとともに、ラジウム濃度から淡水性地下水の湧出量を算出する。さらに基礎生産量(植物プランクトン、底生微細藻類)、二次生産量(アサリ)の総量を算出するとともに、エイ類やカモ類の捕食による系外流出量を求める。このことより、緑川河口域の物質循環において海底湧水が与える影響を定量的に評価する予定である。 若狭湾:宮津湾および舞鶴湾奥部での定点調査は年による違いを明らかにするため次年度も同様の内容で継続予定である。
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Research Products
(11 results)