2021 Fiscal Year Annual Research Report
Comprehensively identification of molecules at synapses and non-synaptic cell-adhesion structure
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21H02582
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
高野 哲也 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 研究員 (00725541)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石田 綾 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 講師 (40424171)
掛川 渉 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 准教授 (70383718)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | BioID / シナプス / ドーパミン / 小脳 / TurboID / プロテオーム / 近位依存性ビオチン標識 |
Outline of Annual Research Achievements |
神経細胞はシナプスと呼ばれる細胞接着構造を形成することで、脳高次機能を担う様々な神経回路網を構築する。さらに、近年では神経細胞間や非神経細胞間にシナプスではない接着構造が存在し、複雑な脳内情報伝達を生み出していることもわかってきた。しかしながら、従来までの方法では特定のシナプス及び非シナプス性接着部位の構成分子を同定することが困難であった為、分子機序やその生理的意義については依然として不明のままであった。本研究では、近依存性ビオチン標識法を用いて、特定のシナプス及び非シナプス性接着構造を制御する構成分子群の網羅的探索を行い、個々の神経回路網や非シナプス性部位特異的な形成機構と生理的意義を解明することによって、全く新しい観点からの脳の動作原理及び精神・神経疾患の病態の解明を進める。これまでに小脳皮質回路の興奮性シナプス(平行線維―プルキンエ細胞間)と抑制性シナプス(分子層抑制性介在神経細胞―プルキンエ細胞間)の構成分子を網羅的に探索するために、近位依存性ビオチン標識(Split-TurboID)法を用いた解析を行なった。まず、Split-TurboID法を用いて小脳の興奮性シナプスと抑制性シナプスの構成分子がビオチン標識されるのか検討したところ、生体組織中の特定のシナプス分子がSplit-TurboID法によって標識されていることを観察した。そこで、実際にこれらの特定のシナプス構成分子を同定するために質量分析解析を行なったところ、興奮性シナプス特異的分子成分として70以上ものタンパク質を同定した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
小脳皮質回路において興奮性シナプス(平行線維―プルキンエ細胞間)と抑制性シナプス(分子層抑制性介在神経細胞―プルキンエ細胞間)の構成分子を網羅的に同定するために、近位依存性ビオチン標識(Split-TurboID)法を用いた解析を行なった。具体的には、細胞種特異的なCreマウスにアデノ随伴ウィルス (AAV)を用いてSplit-TurboIDのN断片とC断片をそれぞれプルキンエ細胞と小脳顆粒細胞又は分子層抑制性介在神経細胞に遺伝子導入した。遺伝子導入の3週間後にビオチン皮下投与をお行ったところ、小脳皮質回路の興奮性シナプスと抑制性シナプス感激においてびビオチン標識タンパク質が観察された。そこで、これらのビオチン標識タンパク質を精製し、質量分析を行った。その結果、70以上もの特定のシナプス間隙分子が同定された。さらに、GO Term解析を行なったところ、同定された分子成分の中ではシナプス関連分子と膜タンパク質が非常に多く含まれていることがわかった。また、既知の分子であるデルタ型グルタミ酸受容体GluD2も含まれていた。これらの結果から、Split-TurboID法を用いて生体組織の特定のシナプス間隙構成分子を網羅的に解析することが可能であることが示された。
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Strategy for Future Research Activity |
現在までの進捗状況から、Split-TurboID法を用いて生体組織の特定のシナプス間隙構成分子をビオチン標識し、質量分析によってタンパク質成分が解析できることが示唆された。そこで、次年度はこれらの結果を確認するために、定量質量分析を行う。そして、得られたタンパク質成分については、既知のタンパク質との共免疫組織染色法を行い、超解像度顕微鏡(STED)を用いて観察するとともに、データベース(Strings, SynGO, HitPredict等)を用いて分子間ネットワークを構築する。また、Split-TurboID法を腹側被蓋野から側坐核へのドーパミン作動性神経細胞に適用し、生体内での非シナプス性接着部位における構成分子群の網羅的探索を行う。具体的には、Split-TurboIDのそれぞれの断片を生体内におけるドーパミン作動性神経細胞に遺伝子導入する。遺伝子導入の3週間後にビオチン皮下投与を行い、非シナプス細胞接着部位においてビオチン標識が観察されるのか検討する。
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Research Products
(6 results)