2023 Fiscal Year Annual Research Report
Optical Imaging and Control of Tumor Microenvironment
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21H02715
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
寺井 健太 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(医学域), 教授 (20616073)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | FRET / プロスタグランジンE2 / 蛍光生体イメージング |
Outline of Annual Research Achievements |
プロスタグランジンE2(PGE2)は腫瘍微小環境において、がん免疫を抑制することが知られており、研究代表者はその分泌機序の一端を明らかにしている。本年は生体マウス皮膚基底層と培養細胞におけるPGE2分泌機序について、光遺伝学によりカルシウムシグナルの再構築を行い、生体内の皮膚上皮におけるカルシウムシグナルの表現型の一端と、そのメカニズムを明らかにした。 プロテインキナーゼA(PKA)はcAMPの細胞内濃度上昇により活性化することが知られている。研究代表者はこのPKA活性を可視化するツールを用いて犬腎上皮細胞(MDCK)とマウス皮膚基底層を観察したところ、同心円状に広がるPKA活性化を世界で初めて見出すことに成功した。この事象にradial spread of PKA activation (RSPA) と名付け、詳細な分子機構を解析した。その結果、RSPAはPGE2の分泌を介することが明らかとなった。 更に、このPGE2分泌はカルシウムシグナル阻害によって抑制されたので、光遺伝学ツールを用いてカルシウムシグナルとPGE2分泌の関連性を解析した。その結 果、PGE2分泌は、カルシウムシグナルの閾値によって制御されていることが明らかとなった。 本年は上記のPGE2分泌機序の論文発表と共に、この系を用いて分泌量の測定を行った。PKA活性化を検知するFRETプローブを用い、イメージング結果からPGE2のEC50を算出した。更に、実際のイメージング結果とシミュレーションを用いた。その結果、HeLa細胞は一回のカルシウム上昇により、0.25 fmol のPGE2を分泌しており、周囲に存在する約1000細胞のPKA活性を促すことが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
生体内におけるPGE2分泌の制御機構の一端が明らかとなり、更にその分泌量も概算できた。今後は、この事象ががん細胞と癌免疫機構にも当てはまるか否か検討していく。また、関連する論文を2報発表することが出来た。
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Strategy for Future Research Activity |
二光子顕微鏡によるマウスの生体内イメージングは、神経学、免疫学、発生学で多用されている。しかしながら、現在広く用いられている可視光を放つ蛍光分子の場合、光の散乱や吸収により観察可能な深さに限界がある。実際、マウスの脳観察では、1 mm程度に限られる。研究代表者は、近赤外蛍光タンパク質 (NIR-FP) とプローブを開発し、励起光の散乱を抑えることで、深部の生体イメージングを目指している。既にマウス脳観察で2 mmを超える技術を開発している。NIR-FP は、二光子励起で 1200 nm に吸収波長ピークを持ち、700 nm前後の蛍光を発し、その波長特性は『生体の窓』に最適である。一方でNIR-FPは他のGFPなどと異なり、発色団としてテトラピロールを要求する。 近年、NIR-FPの発色団としてphycocyanobilin (PCB) を用いることで、EGFPを上回る輝度になる事が報告された。しかしながら、哺乳細胞はPCB合成酵素を持たない。そこで研究代表者は、マウスにPCB合成酵素群を発現させることで、NIR-FPが高輝度化を達成した。本研究下記の三つを目指す。 A)NIR-FPカルシウムセンサーの改良、B)NIR-FPキナーゼバイオセンサー開発、C)NIR-FPを用いた血管造影法の開発。
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