2022 Fiscal Year Annual Research Report
キリシタンを通じて考える近世日本・東アジアの文化・思想・諸宗教
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22H00698
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
大橋 幸泰 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 教授 (30386544)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
清水 有子 明治大学, 文学部, 専任准教授 (00727927)
平岡 隆二 京都大学, 人文科学研究所, 准教授 (10637622)
岸本 恵実 大阪大学, 大学院人文学研究科(人文学専攻、芸術学専攻、日本学専攻), 教授 (50324877)
折井 善果 慶應義塾大学, 法学部(日吉), 教授 (80453869)
牧野 元紀 昭和女子大学, 生活機構研究科, 准教授 (80569187)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | キリシタン |
Outline of Annual Research Achievements |
本科研の初年度は、前科研の総括研究会を2022年4月17日に開催するところから始まった。科研メンバーの報告を「キリシタンの文化と思想」・「日本を取り巻くキリシタン世界」・「キリシタン禁制の行方」の3つのセクションに分けて、これまでのキリシタン研究の到達点と今後の課題について議論し、本科研につなげることを企図した。この成果集として、『近世日本のキリシタンと異文化交流』と題する書籍の刊行を準備中である。 パンデミックもようやく収束に向かいつつあるなかで、国内外の史料調査を行うことができた。国内では、高知城歴史博物館、オーテピア高知県立図書館、長崎歴史文化博物館、シーボルト記念館、大村市歴史資料館、島原市松平文庫、横浜開港資料館、東洋文庫、国学院大学図書館、岩瀬文庫、広島県立文書館、福井県文書館などを訪問し、調査を行った。国外では、ドイツのヘルツォーク・アウグスト図書館(ヴォルフェンビュッテル)、イタリアのイエズス会文書館(ローマ)、布教聖省文書館(ローマ)、ポルトガルのアジュダ図書館(リスボン)、スペインの国立図書館(マドリード)などを訪問し、調査を行った。これらを通じて、近世日本の西洋宇宙論書、大村藩・島原藩の反キリシタン政策関係史料、17世紀日本・東南アジア布教史関係の出版物、1630年代の大坂キリシタン史関連文書、17世紀後期ベトナム布教をめぐるイエズス会とパリ外国宣教会との摩擦に関わる史料群、浦上四番崩れ関係史料、大浜騒動・武一騒動・越前護法一揆関係史料などを見いだした。 以上の文書調査に加えて、いくつかの地域で現地視察を実施した。海運や商工業などに従事する外来者に対する改宗が想定される鶴岡・弘前・新潟・佐渡のカトリック教会を訪問した他、明治新政府の政策を「切支丹」によるものとした新政反対一揆である大浜騒動・武一騒動・越前護法一揆関係地などで巡見を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
パンデミックの収束状況のなかで、国内外の調査も可能となり、研究はおおむね順調に進展しているといえる。科研メンバーに加えて、この分野に関心を持つ方々にも広く呼びかけ、キリシタン学研究会を再開させたことも特筆するべきことである。2022年11月に多数の参加者を得て第2回例会を実施し、キリシタン研究の広がりを感じることができた。 2022年度の大きな成果の一つは、近代へどのように接続するか、一定の見通しを得ることができたことである。近世では潜伏キリシタンは神仏信仰と共存していたが、幕末維新期における宣教師の再登場を経て、近代ではその共存が崩れていく。もちろん、早期に諸属性混淆状態の回復が一定程度見られるものの、村民の改心・非改心をめぐる確執は、その後、長い間にわたって深刻なしこりを残すことになったものと思われる。本科研のメインの時代は近世であるが、近代への展望を意識しながら研究を進めていきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度も昨年度に引き続き、国内外の史料保存機関を訪問し、世界各地に残るキリシタン関係史料の収集に努める。また、前科研の成果集である『近世日本のキリシタンと異文化交流』を刊行し、本科研への橋渡しをしたい。 なお、2023年8月に予定されているEAJS(ヨーロッパ日本研究協会)に本科研メンバーによるパネルを立てることを計画し、応募したが、残念ながら採用されなかった。メンバー個々人による研究成果の発信は順調だが、本科研のグループとしての研究成果を広く発信するために、別の方策を考える必要がある。他の国際学会にパネルを提案するか、前科研で実施したような国際シンポジウムを本科研独自に企画するか、いろいろ模索しながら検討したい。
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Research Products
(41 results)