2022 Fiscal Year Annual Research Report
Maximization of blue carbon sequestration in estuaries and freshwater lakes
Project/Area Number |
22H01601
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
中山 恵介 神戸大学, 工学研究科, 教授 (60271649)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
矢野 真一郎 九州大学, 工学研究院, 教授 (80274489)
駒井 克昭 北見工業大学, 工学部, 教授 (90314731)
新谷 哲也 東京都立大学, 都市環境科学研究科, 准教授 (80281244)
宇野 宏司 神戸市立工業高等専門学校, その他部局等, 教授 (00435439)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 淡水カーボン / 成層 / 淡水湖沼 / 水草 / 炭素フラックス / 植物プランクトン |
Outline of Annual Research Achievements |
SDGs目標13「Climate action:気候変動に具体的な対策を」では,カーボンニュートラルの推進を目指し,沿岸域の海洋生態系の光合成等を利用する「ブルーカーボン研究」が世界的に成されている.湖沼でも炭素吸収が期待できるが,炭素吸収ポテンシャルを正確に見積もるためには,小面積湖沼も含めた,水生生物・植物による正味の炭素貯留速度を明らかにしなくてはならない.本研究では,亜寒帯,温帯,亜熱帯の沿岸域から小面積湖沼までの9箇所の現場を対象とし,流れの影響を考慮した植物プランクトンや水草による呼吸・光合成,および溶存有機炭素の無機化による炭素の吸収・放出機構を解明する.具体的には,水草による炭素の放出・吸収を詳細に再現できる水草モデルの構築と実験的検証,閉鎖性水域特有の密度成層までを考慮できる数値計算モデルを展開・拡充することによって,炭素の複雑な生物化学的変化・輸送機構を解明する. 炭素フラックスに与える水質や流入出の影響を明らかにするため,国内外の9箇所を対象として研究を進め,基礎的なデータを得ることができた.特に,烏原貯水池では過去のデータも踏まえて2010年から現在までのデータをまとめ,長期に渡る二酸化炭素の吸収量に成層場が与える影響を評価することが出来た.新年度の成果も踏まえて,STOTENに論文を投稿する予定である.また,水草の呼吸と光合成による炭素吸収・放出推定式を作成するため,ササバモを利用した屋外実験を実施し,溶存無機炭素(DIC)方程式のパラメーターを決定することができた.これまでの成果も含めて,JGRに論文が掲載された.さらに,室内実験を行い,流れと水草の形状変化の相互干渉を評価し,大気から水中への二酸化炭素の吸収量に与える影響を定量的に評価し,その成果がFMSに掲載された.Cigu Lagoonについても,STOTENに論文が掲載された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
9つの閉鎖性水域を対象とし,これまでの観測結果も踏まえて解析を行った.成層場が二酸化炭素の吸収量に与える影響については,コムケ湖およびLake Mongerを対象とした現地観測に基づく解析を実施し,1 m以下となるような浅い水深でも水草(エビモ:Potamogeton crispus)が存在することにより数 m/s以下の風速であれば成層が維持されることを示し,成層形成による大気との二酸化炭素の交換に重要な役割を果たしていることがわかった.また,Cigu Lagoonにおける現地観測結果を利用した解析では,牡蠣が成長することによる二酸化炭素の大気からの吸収について,定量的に評価できるモデルを構築し,河口域に存在するマングローブによる全アルカリ度の上昇への寄与が重要な要因であることがわかった.牡蠣を養殖することで,石灰化により水中二酸化炭素分圧が上昇して地球温暖化に悪影響を与えている可能性があったが,マングローブの存在と植物プランクトンの溶存無機炭素の吸収により,結果として大気から二酸化炭素を吸収していることがわかった. 水草の呼吸と光合成による炭素吸収・放出推定式を作成するため,申請者らが開発した手法を利用して,ササバモを利用した屋外実験を実施しDIC方程式を提案することができた.過去に得られたアマモのパラメーターと比較を行うことにより,植生密度が同じ程度であれば,アマモの方が二酸化炭素の吸収量は大きいことがわかった.乾燥密度に大きく関係していることも示唆された.一方で,水草と流れとの相互作用による二酸化炭素の吸収量に与える影響を検討するために,長さ15 mの開水路に現場の繁茂状態を参考にして,発泡ポリプロピレンを水草に見立てた室内実験を行い,水草のたわみが大気からの二酸化炭素の吸収量を大きく減少させている可能性を示すことができた.次年度,その定量的な評価を行う予定である.
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Strategy for Future Research Activity |
2年目である令和5年度は,これまでにあまり観測結果が存在していない,ため池を中心とした現地観測による大気からの二酸化炭素の吸収量の定量的な評価を試みる.具体的には,神戸市に存在する奥池である.また,淡水湖沼では,酸性化もしくは植物プランクトンの異常繁殖により,溶存無機炭素,全アルカリ度,そしてpHなどを利用した水中二酸化炭素分圧の推定精度が悪いことが知られている.烏原貯水池では,過去から現在までの長期の全アルカリ度とpHのデータのみが存在していることから,何らかの補正を行うことにより,全アルカリ度とpHから水中二酸化炭素分圧を精度良く再現するための手法を開発する.その結果,水源として利用されてきており,全アルカリ度とpHが長期に存在している貯水池での大気からの二酸化炭素の吸収量の解析が可能となり,地球温暖化による現在から過去,そして将来における予測が可能となる. 淡水湖沼では,エビモやササバモといった分岐を有する水草が多く繁茂している.分岐を有することで,アマモのように単一の葉のみ持つ水草とは,浮力と抗力や揚力のバランスが異なり,その結果,流れとの相互作用がより複雑となる.そこで,分岐を考慮した水草群落が流れを受けてどのように物質輸送に影響を与えるかを評価するために,室内実験を利用した解析を実施する.水草は,過去に実績のある発泡ポリプロピレンを用いて再現する.また,数値計算において,数百本を1本に集約できる水草モデルの開発を行い,実現性における成層の発達や表層混合層の形成に関する解析を行う.その際,これまでにほとんど成果が存在しない,成層場において水草が存在することによる表層混合層の形成に関する理論解を提案する予定である.理論解の検証は,コムケ湖やLake Mongerにおいて得られた現地観測結果との比較により実施する計画である.
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Research Products
(21 results)