2022 Fiscal Year Annual Research Report
大規模撹乱と野生植物集団の遺伝的多様性:巨大津波を想定した前向き・後ろ向き研究
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22H02366
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
牧 雅之 東北大学, 学術資源研究公開センター, 教授 (60263985)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊東 拓朗 東北大学, 学術資源研究公開センター, 助教 (10827132)
藤井 伸二 人間環境大学, 人間環境学部, 准教授 (40228945)
山城 考 徳島大学, 大学院社会産業理工学研究部(生物資源産業学域), 准教授 (50380126)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 在来種保全 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では大きく分けて3つのテーマを設定している.一つ目のテーマは,東日本大震災に伴う大津波の前後で植物集団の遺伝的組成がどのように変化したかを明らかにするものであり,津波以前に収集した集団サンプルと,大津波後に収集した集団サンプルの遺伝的特性を比較することを予定している.このテーマについては,海岸に特異的に見られるハマヒナノウスツボを対象に解析を行う予定であり,本年度は大津波以前に採取した集団とほぼ同じ地点で新たに集団サンプリングを行って,ゲノム縮約的手法を用いた解析を進めている.SNPsデータはすでに得られており,現在,各種の集団遺伝学的解析を行っている. 二つ目のテーマは,大津波の影響を受けた地域と受けていない地域で,同じ種の集団をサンプリングし,集団遺伝学的特性を比較することである.本年は,本州北部から九州までの範囲で,海岸に特異的な数種について集団サンプリングを行った.そのうち,オカヒジキについてゲノム縮約的手法による解析を行った結果,大津波の影響を強く受けている東北地方の集団と日本海側の集団の間に遺伝子流動が確認され,大津波後の撹乱によってできた空白地域に新たに集団が成立した可能性が示唆された.ハマニガナ,テンキグサなどの砂浜生の種とホソバハマアカザ,シオクグなどの塩性湿地の植物を順次解析していくことで,大津波が沿岸域の植物集団の遺伝的組成に与えた影響を明らかにする予定である. 3つめのテーマは,実際の遺伝学的解析をもとに,今後予想される南海トラフに伴う大津波の影響を受ける集団について予想を行う課題であり,これについては今後研究を進める予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度に予定していたサンプリングは概ね実施することができた.またゲノム縮約的手法を用いた解析についても,おおよそ予定通りに実施することができている.
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Strategy for Future Research Activity |
大津波の撹乱前後の集団遺伝学的特性の変化については,すでに得られているSNPsデータの解析を進める予定で,状況によってはあらたなサンプルの追加などがにつようになる可能性がある. 大津波攪乱の影響を受けた地域と受けていない地域の比較については,東北地方に近接する北海道の集団が,東北地方の集団の再生に関与している可能性があるので,北海道にも分布する種については,今年新たに集団サンプリングを行って,解析を行う.また,前年度収集したサンプルを順次解析し,種間の比較をもとに,大津波の撹乱が植物集団の遺伝的特性にどのような影響を及ぼしたかを明らかにすることを目指す.
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