2023 Fiscal Year Annual Research Report
窒素沈着量の減少によって森林の生態系機能は回復するか
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22H02386
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
智和 正明 九州大学, 農学研究院, 准教授 (30380554)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
福澤 加里部 北海道大学, 北方生物圏フィールド科学センター, 准教授 (10456824)
笠原 玉青 九州大学, 農学研究院, 准教授 (10622037)
菱 拓雄 九州大学, 農学研究院, 准教授 (50423009)
舘野 隆之輔 京都大学, フィールド科学教育研究センター, 教授 (60390712)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 窒素循環 / 森林生態系 / 土壌生態系 / 河川生態系 / 回復 |
Outline of Annual Research Achievements |
産業革命以降,増加し続けてきた大気由来の窒素沈着は,近年,世界的に減少に転じていることが指摘され始めており,森林の生態系機能が回復する可能性がある.しかし,過去の窒素沈着による負のレガシーエフェクト(土壌内の窒素蓄積,リンやカルシウムなどの窒素以外の栄養資源の減少)が大きいと,仮に窒素沈着量が減少しても生態系機能の回復が進まない可能性がある.本研究は,申請者らによる過去の観測データや既設試験地を活用することで,A)国内でも窒素沈着量が減少しているのかを検証し,B)窒素負荷による負のレガシーエフェクトを解析し,C)森林流域からの窒素流出を地域,全国スケールで解析する.2023度は,実験A), B), C)について実施した. A)国内でも窒素沈着量が減少しているのか: バルク沈着を長期で計測している地点において,大気中ガス,粒子状物質濃度のデータセットを入手し,経年変化を解析した.その結果,NO3-の乾性沈着に由来するHNO3やp-NO3-濃度は1998-2014年にかけて減少していなかった.一方で,NH4+の乾性沈着に由来するNH3は減少傾向にあり,p-NH4+は上昇傾向にあった. B)窒素負荷による負のレガシーエフェクト解析: 中川,標茶,足寄,椎葉,篠栗の5地域に設置されている長期施肥試験地において6年目の施肥を行った. C)森林流域からの窒素流出解析: 高密度採水を行なった流域(博多湾流域)で,同じプロトコル(地点,頻度,分析項目)で観測を行った.その結果,窒素沈着量の減少にともない,森林上流域におけるNO3-濃度が減少していることを確認した.さらに,森林上流域で1986年に採水した地点で採水・観測を行ったところ,1986年と比べてSO42-は減少しているが,NO3-は上昇していた.その原因として,スギ林からの窒素流出が,大気窒素沈着量の減少分ほど減少していない可能性が示唆された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
施肥の実施やサンプリング,化学分析を当初の計画通り実施している.
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Strategy for Future Research Activity |
今後,本科研期間中に施肥を8年目まで行い,レガシーエフェクト効果を検証する予定である.具体的には,各サイトにおいて,樹木や土壌を中の窒素,リン,カルシウム含有量を測定する.また,施肥試験区設置直後からの樹木葉,土壌試料(2018年,2020年)を保管しているため,施肥直後からの経年変化(1年から8年)を解析する.また,窒素沈着量の減少によって森林からの窒素流出が減少しているのかを検証するために,乾性沈着量を計算する.さらに,窒素飽和した森林は重要な窒素汚染源に現在もなり得るのかを検証するために,窒素流出と森林の構成樹種との関係について検証する.
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Research Products
(8 results)