2023 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23H00610
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
永田 知之 京都大学, 人文科学研究所, 准教授 (80402808)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
玄 幸子 関西大学, 外国語学部, 教授 (00282963)
道坂 昭廣 京都大学, 人間・環境学研究科, 教授 (20209795)
安岡 孝一 京都大学, 人文科学研究所, 教授 (20230211)
高田 時雄 公益財団法人東洋文庫, 研究部, 研究員 (60150249)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2028-03-31
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Keywords | 古写本 / 中国典籍 / 敦煌文献 / 書誌学 / データベース |
Outline of Annual Research Achievements |
研究代表者や複数の分担者が参加する中国典籍日本古写本の調査は、諸事情によって2023年度は実施できなかったが、各人が所蔵機関に赴いて写本の実見・分析を試みた。それと並行して次年度に予定している写本の閲覧について、各機関から許可を得ることに努めてきた。この点は、前身となる科学研究費補助金による事業と異ならない。 本研究課題と関わる成果として、研究代表者・分担者の全員で論文を11篇(うち外国語の論文が6篇、査読を経た論文も同数)、書籍を2点(共編、複数のメンバーが関わる共著が各1点)公刊した。別にメンバーが積極的に国内外の学会に参加し、それに関して招待講演が3件、国際学会での発表が3件(上海・北京での対面式開催とZoomによる参加が各1件)あった。他にも研究分担者の中の1名が中国写本に関わるワークショップで報告者やコメンテーターを務めた。また前身となる研究課題から『敦煌写本研究年報』の編集を引き継ぎ、本課題と関わる文章を含む論文を掲載する第18号を刊行した(前号までと同じくインターネット上でも公開する準備を進めている)。 年間を通じて、10回ほど研究代表者・分担者の最低でも半数程度が参加する読書会・研究会などの会合を持ち、本研究課題に関する情報の共有を図った。上記の成果にも、それらと関わって形作られた論著が含まれる。読書会には関連する領域を扱う外国人で中国語圏から来日した研究者もしばしば参加しており、そこでは海外の研究動向を初めとする知見をも得たところである。 この他、中国典籍日本古写本データベースの整備を進め、その規格を再考するため、研究代表者・分担者による会合を持った。2024年度には、そこで決められた案をデータベースに反映する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題は2023年度より始まったが、研究期間の当初としては、公刊された論文・書籍の数は少なくないと考える。国際的な学術誌への研究論文がそこに含まれることも、評価の対象となりえよう。今後も恒常的に論著の公表を続け、成果をさらに増やしていきたい。研究発表の件数にも不足はなかろうが、国際学会におけるそれは国内の集会での研究報告より数が劣る。ただ、これは海外に赴いた上での学会への参加になお困難が伴うことを原因としており、2024年度以降に状況が変化すれば、改善されるものと予想している。 また2023年度は研究期間の当初ということもあって、前身となる科学研究費補助金による事業から継続する予定の『中国典籍日本古写本の研究Newsletter』は刊行しなかった。その一方で、やはり前身となる事業から引き継いだ『敦煌写本研究年報』は公刊するに至った。年刊で18号を数える同誌は、日本で唯一の敦煌学・吐魯番学や漢籍の日本古写本に特化した学術誌で、その出版も本研究課題の重要な成果と見なせる。 研究代表者・分担者の複数による中国典籍日本古写本の調査を実施できなかったことは、2023年度の事業における不足であろう。これも対面式の国際学会で報告することと同じく、移動に慎重を要するためだが、加えて部外者の閲覧を制限する所蔵機関がまだあることをも理由とする。ただ実見の許可をすでに得ている機関も存在するため、2024年度には調査を本格化させることが可能である。データベースの拡充・刷新と並行しながら、日本古写本の調査・分析を推し進めていくが、総じて現時点で本研究課題はおおむね順調に進展していると結論づけらよう。
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Strategy for Future Research Activity |
従来と方策は大きく異ならないが、中国典籍日本古写本の調査に関しては、再開を本格化させる。すでに写本を閲覧する許可を得ている機関には、研究代表者・分担者が個別または複数で実見に赴く。これまでも重点を置いてきた大学や図書館はもとより、今後は神社・寺院やそれらに由来する蔵書を持つ機関をも対象としていく。 学会などへの積極的な参加も2023年度までと変わらず続けるが、特に国際学会等での活動を増やしていくことを考えている。研究代表者が2024年度の7月に台湾大学(台北)の文学院、代表者と研究分担者の中の1名が8月に南京大学(南京)の域外漢籍研究所における学術会議・ワークショップで発表者を務める予定となっていることは、その一環である。 写本の調査・分析に基づく知見や学会などでの報告を文章化して公刊することも、従前と変わるところはない。『敦煌写本研究年報』は第18号をもって終刊したが、論著を発表する媒体については、研究代表者・分担者のいずれも目算を有している。さらに、前身となる科学研究費補助金による事業から『中国典籍日本古写本の研究Newsletter』の編集・刊行を継続する予定となっている。研究論文などとは別に、概ねそれらより短い文章をNewsletterに掲載し、新たに得られた情報を素早く公にしたいと考えている。 中国典籍日本古写本データベースについても、新しく獲得した情報を加えつつ、内容を刷新し、より精確な方向へと充実させていく。その一方で2023年度にメンバーで合議し、同意を得た方針に従って、煩瑣に過ぎる事項をデータベースから削除し、文献などに見える知見は典拠のみを示すように改変する。これは利用者による閲覧や情報の取得に便宜を供し、さらなる利用の拡大を意図してのことである。
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Research Products
(20 results)