2023 Fiscal Year Research-status Report
高精度感圧塗料とデータ駆動科学の融合による時空間超解像計測法の開発と実証
Project/Area Number |
23KJ0106
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
内田 和樹 東北大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2023-04-25 – 2025-03-31
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Keywords | 熱流体可視化計測 / 感圧・感温複合塗料 / 光劣化補正 / 蛍光寿命イメージング / データ駆動科学 / 時空間超解像計測 / 低次元化モデリング / 空力騒音 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和5年度前半は,前年度までに構築した簡易的な衝突噴流装置を利用して光劣化補正手法の実証試験を行った.試験の過程で,当初想定しなかった大気中の湿度が複合塗料に影響を与えることが判明した.そのため同試験では装置をアクリル容器内に設置して乾燥空気に置換し,可能な限り影響を排除した.試験の結果,計測した圧力・温度値は衝突平板に設置した電子式センサと良く一致し,同手法で高精度計測ができることを確認した.上記の結果を2件の国内学会で発表した他,学術誌に投稿中である. 湿度影響の調査のため東京農工大学 亀田正治教授に協力を仰ぎ,同研究室が所有する恒温恒湿槽を利用して試験を実施した.試験の結果,感圧色素と感温色素で湿度感度が異なることや粒子混合型塗料はポリマ型より高い湿度感度を持つことを確認した. 令和5年度後半にはより実用的な試験として,宇宙航空研究開発機構(JAXA)と共同で旅客機垂直尾翼形状模型の風洞試験に同手法を適用した.同試験ではポリマ型と粒子混合型の2種類の複合塗料で計測を行った.それらの結果を解析・比較した上,学術誌に投稿予定である. 時空間超解像計測手法について令和5年度はまず,前年度3月にJAXAと共同実施した翼型模型の風洞試験で取得した感圧塗料と圧力センサの同時計測データに対し,固有直交分解とLASSO回帰に基づく手法を適用した.現象周波数以下にダウンサンプリングしたデータから超解像手法により空力騒音に伴う翼面上の圧力変動を推定した.推定結果は元データと比較して現象周波数を良く捉え,圧力分布も定性的に一致した.この成果を1件の国内学会にて発表した. 令和6年3月には手法の改良に向け,風洞試験をJAXAと共同実施した.同試験では前年度実施した模型内蔵の圧力センサに加え,マイクロフォンでの近傍音響場計測や低ノイズsCMOSカメラでの計測を実施した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
指導教員の名古屋大学への異動に伴い,所属研究室の移転作業のため実験ができない期間があった. 衝突噴流装置を用いた実証試験の過程で当初想定しなかった湿度の影響が顕在化したため,追加でその対処と影響の調査を行う必要が生じた.
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Strategy for Future Research Activity |
新たに顕在化した湿度の影響に関して,その評価は同手法を実用的な風洞試験に適用する上で重要な知見だと考えている.これまで同手法はサンプル試験での再現性は高い一方で,風洞試験での再現性に課題があった.サンプル試験では圧力・温度を制御可能なチャンバ内にサンプル片を設置し,乾燥空気に置換して試験を実施する一方,一般に風洞試験では湿度が制御されないため複合塗料計測の再現性に湿度が影響する可能性が示唆される. 東京農工大学で実施した湿度影響評価試験について次年度はさらに解析と評価を進める.湿度が複合塗料の圧力・温度感度に与える影響を評価し,必要に応じて湿度補正を行う等,計測手法を改良する. 光劣化補正手法の煩雑さの改善に関しては,寿命法を応用して1台のカメラのみで圧力・温度・光劣化状態を計測する手法を考案し,サンプル試験で従来手法と同様に光劣化補正可能なことを確認しているが,当初計画した風洞試験での実証はできていない.風洞試験よりも簡便な衝突噴流試験への適用を先行して進めたい. 超解像計測手法に関して,次年度はまず令和6年3月にJAXAと共同実施した翼型模型の低速風洞試験データについて超解像手法を適用し,内蔵圧力センサに替えてマイクロフォンを利用した手法の成立性やカメラ計測のサンプリングレートが推定精度に与える影響を定量的に評価する. 名古屋大学に移設した実験機材のうち,感圧塗料関連の機材に関しては令和6年3月までに復旧作業がおおむね完了している一方で,当初,超解像計測手法の実証試験への利用を想定していた超音速噴流発生装置に関しては,装置の規模が大きいため復旧までに相当の時間を要することが見込まれる.JAXA共同実施の風洞試験データを用いることで手法の概念実証は十分可能と考えられるため,今後はそちらのデータを中心に手法の改良や評価を進める.
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Causes of Carryover |
令和5年度は所属研究室の東北大学から名古屋大学への移転に伴い,当初,超解像計測手法の実証試験への利用を計画していた超音速噴流発生装置が長期間使用できなくなったため,Kulite社製の非定常圧力センサXCQ-062-25Aの購入を見送った.また,国際学術誌への論文投稿に際して共著者から英文原稿添削の協力を大いに得られため,当初計上していた英文校正費用を節約することができた. 次年度は非定常圧力センサに替えて,衝突噴流試験や風洞試験で感圧塗料計測の検証用に使用する多点圧力スキャナの購入を計画している.多点圧力スキャナに関して,東北大学においては学内共用備品を使用の都度借用していたが,名古屋大学では新たに購入する必要が生じた.
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