2023 Fiscal Year Research-status Report
Investigation of adsorption of exosomes on porous materials and regulating the behavior to create separation, purification and preservation techniques
Project/Area Number |
23KJ0192
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
岡田 正大 東北大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2023-04-25 – 2026-03-31
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Keywords | Liposomes / Exosomes / Porous anodized alumina / Controllable release / Adsorption |
Outline of Annual Research Achievements |
エクソソームはあらゆる細胞から分泌される直径30 - 150nm程度の脂質小胞であり、分泌細胞由来の様々なmiRNAやタンパク質を内包している。近年、疾病診断のバイオマーカーや新規ドラッグデリバリーシステムとしての利用が期待されている。本研究では、細孔材料である陽極酸化アルミナに着目し、細孔内へのエクソソームの担持と放出をコントロールすることで、分離・精製・保存法を創出することを目的としてきた。 当該年度はエクソソームを模した人工脂質小胞(リポソーム)を用いたモデル系において、陽極酸化アルミナ細孔とリポソームとの相互作用について解析を進めた。その結果、リポソーム表面のリン脂質中のリン酸基と陽極酸化アルミナ表面の水酸基とのイオン交換反応を介してリポソームが陽極酸化アルミナ細孔内に吸着していることが示唆された。吸着したリポソームは自発的には細孔外にほとんど漏れ出さない一方で、超音波照射によって容易に放出され、on-demandでの担持と放出の制御の可能性が見いだされた。本成果は学術誌のプレプリントサーバーに公開しており(Okada M et al., ChemRxiv. 2024; doi:10.26434/chemrxiv-2024-ljrdf)、現在査読付き雑誌に投稿し返答待ちの状態である。 特別研究員申請時点では、採用期間終了後の将来構想として、細孔材料に基づいた「エクソソームの検出法」を「分離・精製・保存法」に次いで開発することで、エクソソーム分析を一挙に担える包括的な分析プラットフォームの構築を掲げていた。しかし、既に萌芽的な成果を見出すことができた。成果の一部を学会発表しており良い反響を得ている(2023 Joint Meeting of the Tohoku Area Chemistry Societies, 2023年9月8日, 仙台, ベストポスター賞受賞)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
特別研究員申請時点においては以下のように3つの段階に分けて研究計画を立てていた。 (1) 申請時点 - 一年目: 「エクソソームと陽極酸化アルミナの相互作用の解析と吸着挙動の解明」 (2) 一年目後半 - 二年目: 「エクソソームのon-demandでの吸脱着の制御」 (3) 二年目 - 三年目: 「分離・精製・保存法としての展開」 当初の計画において、特別研究員申請時点から採用一年目に設定していた「エクソソームと陽極酸化アルミナの相互作用の解析と吸着挙動の解明」に関して、本年度は実際にこの課題を進めることができ、リポソームを用いたモデル系において一定の成果を得られ、学術論文としてまとめることができた(Okada M et al., ChemRxiv. 2024; doi:10.26434/chemrxiv-2024-ljrdf)。また、採用一年目後半から二年目にかけての計画としていた「エクソソームのon-demandでの吸脱着の制御」もリポソームを用いたモデル系において超音波照射が有効に働くことを見出しており、一定の成果を得られている。しかし、現時点では吸着・放出の効率が低いことから、分離・精製・保存法への展開には課題が残っており、二年目に取り組む予定である。これらの状況から、当該年度の研究進捗状況は概ね計画通りで順調であると考えている。一方で、陽極酸化アルミナ細孔を使用したエクソソームの新規検出法の開発へ萌芽的な成果を得ており、これは本研究課題での直接の研究目的ではなかったが、今後の進展が期待できる発見である。
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Strategy for Future Research Activity |
概ね当初の計画に沿って研究を進める予定である。採用二年目では陽極酸化アルミナ細孔への担持と放出の効率を上げるため、様々な方法を試行する。具体的には陽極酸化アルミナの材料特性の最適化や表面修飾、また、電気化学的手法やバッファー条件の検討によるエクソソームと陽極酸化アルミナとの相互作用のコントロールを図るつもりである。次に、確立した「エクソソームの担持と放出をon-demandに制御する技術」を利用して、エクソソームの分離・精製・保存法として展開できるか検証する。これは主に採用三年目に実施する計画であるが、二年目の課題と並行して進められる部分もあるため、研究の進捗によって柔軟に対応する。また、付随的に見出したエクソソームの新規検出法開発も並行して進め、早期の論文投稿を目指す。本研究課題の終了時点には分離・精製・保存法に加え検出法までをカバーする包括的な分析プラットフォームを構築できるのではないかと見込んでいる。
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Causes of Carryover |
当初参加予定であった学術集会への参加をとりやめたために次年度使用額(B-A)が生じることとなった。次年度使用額(B-A)は翌年度の国際学会参加に係る費用に充てる予定である。
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