2023 Fiscal Year Research-status Report
社会的不利益層の子どものウェルビーイング促進に向けた包括的な教育・生活保障の検討
Project/Area Number |
23KJ1513
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
桑山 碧実 大阪大学, 人間科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2023-04-25 – 2026-03-31
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Keywords | 社会的排除 / 子育て / 教育と福祉 / コミュニティ / フィールドワーク |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、社会経済的に不利な状況におかれやすい子どもを取り巻くつながりを、生態学的視点から理解することを通じて、教育・生活の包括的な保障を促進しうる地域の協働を検討することを目的とする。 当該年度は、先行研究のレビューを行いながら、年度を通じて対象地域(関西・関東の2地域)でフィールドワークとインタビューを行った。 まず、本研究課題を遂行するための準備として、育児支援やネットワークに関する文献を中心に先行研究を整理した。また、2つの調査対象地の子どもや家族に関する論文・書籍等の文献や団体の発行する報告資料等を収集し、整理した。そのうち関東の調査地の資料の整理に基づいて、論稿を執筆した(現在印刷中)。また、国際学会では、日本における当該分野の研究動向と関連して、自身の研究について話題を提供した。 関東の調査地では、子どもの居場所等で参与観察を行うとともに、母親を対象としたインタビュー調査を行い、母親らが自身のネットワークからどのようにして子育て資源を得ているのかを描き出す作業を行った。夫や自身の親に頼りづらく、地区外の「ママ友」との関係が構築しづらい状況の中で、母親らは親族と友人が渾然一体となった共同体を通じて、情緒的・手段的な資源を共有し、多様な支援を調達・提供している様子が明らかになった。さらに、支援の「受け手」としての側面だけでなく自らも支援を提供する母親らの姿が明らかになり、育児ネットワークの支援機能を関係性の中から捉えることの重要性が示唆された。これに関して、国内の学会誌に投稿を行っている。また、2024年度の国際学会でのポスター発表が決定した。 一方、自身にとって新しいフィールドである関西の対象地域では、子どもや子育てに関する支援施設や支援団体・者との関係構築に取り組み、予備的なインタビューを行った。次年度の本格的なインタビュー調査等を円滑に進めるための足場固めを行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
関東の調査地では、母親らへのインタビューを実施し、学会発表や投稿論文に取り組むことができている。加えて、支援者らへのインタビューを実施し、大方データの収集を終えて、現在は分析段階に入っている。これについては、次年度に公表を目指していきたい。関東での研究については比較的順調に進展していると考えている。 一方、関西の調査地は、自身にとって新たに参与するフィールドであることに加え、関係するアクターが圧倒的に多いことから、関係者の把握や関係性の構築、取組への詳細な理解に想定以上に時間がかかっており、予備的なインタビューまでは実施できたが本格的なインタビューはこれから実施する予定である。こうしたことから当該年度の調査がやや遅れたと判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策としては以下の3点が挙げられる。 1点目に、研究成果の公表を行う。当該年度で取り組んだ研究内容のうち、まだ形になっていないものについて、次年度に学会発表や投稿論文という形で発表していく。先に分析に取り組んだ研究では親を取り巻く関係に着目してきたが、同時に行ってきた支援者らのインタビューから、今後は支援者を取り巻く関係に注目して分析を進めていく。 2点目に、先行研究のさらなる収集と整理を行う。当該年度は、子育てや育児ネットワークという親や家庭を中心とした文献に着目してきたが、支援団体や学校等のアクターとの関係にも注目してレビューを行う予定である。 3点目に、引き続きフィールドでの参与観察とインタビュー調査を実施する。特に、当該年度での関係作りを踏まえ、関西のフィールドにおいてもキーインフォーマントとなる方との丁寧な調整を心がけ、地域の子育てを支える人々へのインタビューを着実に行っていく予定である。 以上に留意して今後の研究を推進する。
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Causes of Carryover |
学会参加旅費が予定よりも低く抑えられたこと及び、インタビュー調査の文字起こしを自身で行ったことで、生じる人件費や謝金を使用しなかったためである。次年度におけるインタビューの文字起こしや国際学会の発表における英文校正の際に支出予定である。
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