2023 Fiscal Year Research-status Report
EV用電動機における漏れ磁束を援用した永久磁石磁化推定システムの開発
Project/Area Number |
23KJ1991
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
中村 勢到 法政大学, 理工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2023-04-25 – 2025-03-31
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Keywords | 永久磁石磁化推定 / 漏れ磁束 / 随伴変数法 / 永久磁石同期電動機 |
Outline of Annual Research Achievements |
新規に提案した磁気回路の漏れ磁束を用いた永久磁石内部の磁化推定手法(MELF)の開発を行った.PMSMのロータやステータ鉄芯は磁気非線形性を考慮する必要があるため,一次六面体辺要素による離散化,及び,静磁界下における鉄芯の磁気非線形特性を容易に考慮することができる三次元非線形有限要素法(FEM)の開発を行った.次に,MELFは目的関数の磁化Mに対する勾配を計算する必要があるため,鉄芯の磁気非線形性を考慮した随伴変数法の開発を行った.その後,MELFの推定性能検証を行うために,埋込磁石同期電動機(電気学会ベンチマークモデルDモデル)と表面磁石型同期電動機(電気学会ベンチマークモデルNモデル)のロータ内部における完全着磁した永久磁石内部の磁化分布の推定を行った.試験的に,シミュレーションで求めた値に乱数を加えた漏れ磁束を入力値とし,計測器による漏れ磁束を模擬した推定を行うことで,使用する勾配法の種類・直線探索アルゴリズムの方針・漏れ磁束の計測点の大よその位置がわかった. 次のステージとして,実測値を用いたMELFの磁化推定性能の検証を行うために,検証に使用した寸法と同じ埋込磁石同期電動機のロータを準備した.検証方法として,ロータに装荷状態における永久磁石の推定手法(MELF)と,永久磁石を引き抜き,自由空間中に置かれた状態における永久磁石の磁化推定手法(本研究室で開発した手法であるSiGrad)により得られた結果の比較を行った.MELFとSiGradで,推定された磁化の方向は確認できたが,磁化強度に差が生じ,今後,手法に関する見直しが必要であることが明らかとなった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度の研究計画では,MELFのアルゴリズム構築を予定しており,計画通り,一次六面体辺要素による離散化及び,鉄芯の磁気非線形性を考慮した随伴変数法の開発を行った.その後,試験的なIPMロータのモデルを活用し,勾配法・初期値・直線探索の選出ができている.これらの理由から,本研究はおおむね順調に進展していると考える.
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Strategy for Future Research Activity |
有限要素法における漏れ磁束の計算精度向上を図るため,現在実装している一次六面体辺要素から二次六面体辺要素へと拡張を行う予定である.その後,開発中の磁化推定手法MELFに二次六面体辺要素ベースの有限要素法を実装し,実測値を使用した磁化推定を行い,精度向上を目指す.さらに,永久磁石端部などに不完全着磁領域が生じた状態を想定した永久磁石磁化推定についても,実施する予定である.
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Causes of Carryover |
有限要素セミナーの開催費用として,謝金を計上していたが,今年度は一次四面体要素については独学で習得し,高次要素は実装の目途が立っているため,セミナーを開催しなかった.また,学術論文の投稿費については今年度末までに投稿準備が完了しなかったため,計上しなかった. 次年度では,実際の漏れ磁束を用いた磁化推定を行うことを目指す.まず,有限要素法による漏れ磁束の計算精度を実測値と比較することで,検証する予定である.漏れ磁束は,鉄芯中の磁束密度に比べて,微小な値であり,計算精度の劣化が懸念される.従って,高次要素の実装を行うことで磁化推定精度の向上を予定している.また,実測される漏れ磁束の値も小さく,計測精度の劣化が懸念される.従って,磁気計測のプロフェッショナルの方に磁気計測セミナーを開催して頂く.測定のノウハウを習得し,微小な漏れ磁束を測定するための磁気計測用品を購入することで,測定精度を高めることを目指す.昨年度に購入した小型同期電動機内部の永久磁石磁化推定の向上が実現次第, EV用モータに対しても推定を行い,モータに対して,MELFは汎用性のある手法であることを確認する. また,現在投稿中の論文における投稿費と国内外の学会参加費に支出予定がある.さらに,計算用PC・高性能PC(高次要素拡張後に使用するPC)を計上予定である.
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