2014 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
24000001
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
松沢 哲郎 京都大学, 霊長類研究所, 教授 (60111986)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
平田 聡 京都大学, 野生動物研究センター, 教授 (80396225)
林 美里 京都大学, 霊長類研究所, 助教 (50444493)
足立 幾磨 京都大学, 霊長類研究所, 助教 (80543214)
山本 真也 神戸大学, 大学院国際文化学研究科, 准教授 (40585767)
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Project Period (FY) |
2012-05-29 – 2017-03-31
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Keywords | 実験系心理学 / 霊長類学 / 比較認知科学 / チンパンジー / ボノボ |
Outline of Annual Research Achievements |
人間を特徴づける認知機能とその発達的な変化の特性を知るうえで、それらが「どのように進化してきたか」という理解が必要不可欠である。本研究は、①人間にとって最も近縁なチンパンジー属2種(チンパンジーとボノボ)を研究対象に、②野外研究と実験研究を組み合わせ、③認知機能の生涯発達と世代を超えた知識や技術の伝播に焦点をあてることで、人間の認知機能の特徴を明らかにすることを目的としている。最先端研究基盤支援事業等によって京大の霊長類研究所と熊本サンクチュアリに整備された、比較認知科学実験施設の稼動を進めた。。日本には皆無だったボノボ(チンパンジーの同属別種)4個体を平成25年に北米から導入し平成26年度にさらに2個体を導入した。つまり、チンパンジーの野外研究はギニアのボッソウの9個体、実験研究は霊長類研究所の13個体と熊本サンクチュアリの59個体、ボノボの野外研究はコンゴの27個体、実験研究は熊本サンクチュアリの6個体が主な研究対象になる。チンパンジー属2種に人間を加えた「ヒト科3種」の比較認知科学研究を推進している。アフリカの長期継続野外研究は、ケンブリッジ大学等との国際連携でおこない、平成26年度の成果としてチンパンジーによるチンパンジー殺しの実態を解明して152例を報告し、食物資源と繁殖をめぐる彼らの本性に起因していると結論付けてNATURE誌で公表した。また実験研究ではチンパンジーの描画を素材にした発達研究の成果をChild Development誌で公表した。平成25年度の文化功労者顕彰に続いて本年度は日本心理学会国際賞特別賞と同奨励賞の栄誉があった。なお飼育下のチンパンジーでは、アイたち第1世代から見ると孫にあたる第3世代を作って、知性の生涯発達と世代を超えた知識や技術の伝播を研究するために必要な交配の準備を継続しておこなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
野外調査の主対象であるギニアでエボラ出血熱が平成26年3月に発生し収束していない。したがって平成26年度4月末でいったん総員を退去させて安全を確保した。そのうえで、国際連携の体制を新たに構築して、自動追跡カメラを20台設置し、現地の助手とインターネットで緊密に連絡をとりつつ監視体制を整えた。幸い、対象のボッソウ群の全個体が健康である。また代替となる野外群としてウガンダのカリンズ森林での野生チンパンジーの調査をおこなった。霊長類研究所のチンパンジーにおいて第3世代の繁殖準備のため、複数の繁殖予定個体への避妊薬投与を打ち切り群れの再構成等の努力をおこなったが、当該年度中には実際の繁殖には至らなかった。これについては、隣接の公益財団法人日本モンキーセンターで14年ぶりにチンパンジーが誕生したので、その行動発達を継続観測している。 以上、西アフリカ初のエボラ出血熱のように想定できない事態が勃発したが、研究それ自体はおおむね順調に進展している。またチンパンジーやその他の種で、野外研究および実験研究の成果を学術論文等の様々な形で公表している。
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Strategy for Future Research Activity |
野外研究では、ギニアのエボラ出血熱の収束を見守りつつ、隣国の安全なコートジボワール側からのニンバ山ならびにボッソウへのアプローチをとる。またウガンダでの野外調査を継続する。ボノボについても危機管理の一環として新たな調査地確立に着手する。日本では、チンパンジーの第3世代の繁殖のための努力を引き続き継続しつつ、平成26年度に誕生した男児の生後1歳半までの成長を観察記録する。熊本サンクチュアリに導入されたボノボ6個体については比較認知科学実験を継続実施する。ヒト科3種を主な対象とした比較研究を、野外研究と実験研究を大きな柱として進めつつ、そのアウトグループとして重要性を増しているオランウータンとテナガザル類というアジアの類人猿研究についても、日本が国際的に占める優位性に鑑みて積極的に推進する。
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Research Products
(46 results)
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[Journal Article] Lethal aggression in Pan is better explained by adaptive strategies than human impacts2014
Author(s)
Wilson ML, Boesch C, Fruth B, Furuichi T, Gilby IC, Hashimoto C, Hobaiter CL, Hohmann G, Itoh N, Koops K, Lloyd JN, Matsuzawa T, Mitani JC, Mjungu DC, Morgan D, Muller MN, Mundry R, Nakamura M, Pruetz J, Pusey AE, Riedel J, Sanz C, Schel AM, Simmons N, Waller M, Watts DP, White F, Wittig RM, Zuberbühler K, Wrangham RW
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Journal Title
Nature
Volume: 513
Pages: 414-417
DOI
Peer Reviewed
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