2013 Fiscal Year Annual Research Report
シアノバクテリアの時計タンパク質による概日時間の生成機構
Project/Area Number |
24000016
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
近藤 孝男 名古屋大学, 理学(系)研究科(研究院), 特任教授 (10124223)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
秋山 修志 分子科学研究所, 協奏分子システム研究センター, 教授 (50391842)
|
Project Period (FY) |
2012-05-29 – 2017-03-31
|
Keywords | シアノバクテリア / 生物時計 / 概日リズム / 時間生物学 / 生物物理学 / Kai / 構造生物学 / 周期の温度補償性 |
Research Abstract |
本研究課題の目的は, シアノバクテリアのKaiタンパク質時計を題材に, 親日時計の最も基本的な発振原理を解明し, さらには情報処理能力を備えたタンパク質ファミリーの存在や生物学的意義について検討することである。昨年度に引き続き, 本年度も次の4点について研究を展開した。 1) KaiCのATPase活性とリン酸化サイクルのメカニズム KaiCのATPase活性は, 概日リズムの振動数と比例しかつ温度補償されているという事実からも極めて重要である。周期を決定するATPaseがkinase活性およびphosphatase活性とどのようにカップリングしているかを解明するため, 各種変異体を用いた詳細な生化学的活性測定を行った。特に2つのATPaseの活性の分別について様々な検討を行った。 2) KaiCの構造生物学的解析/生物物理的機能解析 高精度蛍光計測システムを用いてKaiCのATPaseドメインの概日揺らぎを計測し, その動的な構造変化をアミノ酸レベルで計測した。さらに, ATPase活性の制御工学的解析等を推進し, その緩和過程に概日スケールの時定数が織り込まれていることを証明した。その時定数の分子科学的起源を突き止めるため, 2オングストロームを切る高精度の構造解析を行い, 制御メカニズムの同定に取り組んだ。 3) 細胞内でのKaiCリン酸化サイクルの動態 KaiCのC端のリン酸化機構を解明した。また変異KaiCのハイブリッドを解析し六量体構成の機能を解析した。 4) KaiCホモログの探索 KaiC様のタンパク質群を広範囲に1次スクリーニングした。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本計画は24時間の時定数発生機構と安定した振動発生機構を1つのKaiCタンパク質内に見出すという, 単純であるが困難な解析を中心にしている。2013年度は様々な困難に直面したが, KaiCの生化学的機能解明とKaiCの構造・機能解析(研究分担者秋山グループ, 生物物理学的なデータとともに論文準備中)に相応の進捗が見られた。また, KaiCのリン酸化機構の解明(PNAS)およびKaiC六量体内の相互作用(Nature Comm)を見出した。今後, これらの成果をもとに, 本課題の研究がより進展すると見込まれる。また中核となるKaiC ATPaseの解析についても, 2つのATPaseユニットの活性の分別について新たな方法を検討することができたことも今後の展開に大きな意味を持つ。
|
Strategy for Future Research Activity |
基本的には当初の計画に従い, 「KaiCのATPase活性とリン酸化サイクルのメカニズムの解明」および「KaiCの構造生物学的解析/生物物理的機能解析」を強力に推進することが出来ると思われる。KaiCのATPase活性とリン酸化サイクルのメカニズムの解明については, ATPase活性およびkinase活性の高分解能な生化学的解析を様々な条件下で進めることで, 2つの異なった成分の分別を実現する。KaiCはこの2つの密接にリンクした異なる活性により計時機構を実現していると思われるので, この方法の確定は今後の解析に不可欠である。既に予備調査で得られた阻害剤およびKaiC変異体の解析を進め, 解析法を確立したい。測定法としては, 2013年度に検討したUPLCによる再現性のある解析と同位元素を用いた高時間分解能な解析法を進展させる。一方, KaiCの機能解析に変異体の利用は大きな可能性を持っている。既に得られている変異体に加え, 計時機構モデルから考えられる新たな変異体を分離し機能解明を試みる。このために必要な高分解能な生物発光スクリーンニングを開発, 整備した。 生物物理的機能解析については, 周期の決定を主に担うCIの構造解析に基づく解析をさらに進めるとともに, 温度補償性も含めた概日時計の特徴を担う全構造の解析を軌道に乗せることを試みる。また, KaiCの計時機構の本質である分子内歪みを解析する物理化学的方法を探索する。 さらに, これまで解析が進んでこなかった複数のKaiC 6 量体間の相互作用を解析し, KaiC分子間同調機構の解析も本格化したい。この機能は安定な概日時計を担保しうる重要な機能であり, その解明は計時機能の解明のため本質的に重要である。また真核生物の計時機構の解明については視点を拡大しスクリーニングを再開する。着眼点としては時計タンパク質の要件を良く検討し, タンパク質の安定性や重複をもたないATPaseの計時機構としての可能性を持つものを探索する。
|