2014 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
24226017
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
菅沼 克昭 大阪大学, 産業科学研究所, 教授 (10154444)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
長尾 至成 大阪大学, 産業科学研究所, 准教授 (10315054)
菅原 徹 大阪大学, 産業科学研究所, 助教 (20622038)
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Project Period (FY) |
2012-05-31 – 2017-03-31
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Keywords | 超高耐熱実装技術 / 銀スパッタ膜接合 / メタル・ペースト焼結接合 / 光接合 / 次世代半導体 / ウィスカー / ナノ構造制御 / エレクトロマイグレーション |
Outline of Annual Research Achievements |
SiC や GaN 等の次世代ワイドバンドギャップ半導体を用いて、従来のSi技術では到達できない極限環境で動作するパワーデバイスに実装するためには、異相界面における熱的、機械的、電気的に最適化された材料選択と界面設計指針が必要不可欠である。しかしながら本研究の開始当初には、その指針は全く示されていなかった。本研究では、研究代表者である菅沼克昭が開発して、世界初のハイブリッド自動車に採用されたDBA接合技術と、世界に先駆けた鉛フリー接合技術を元に、極めて厳しい環境で駆動できるパワーデバイスを実現する異相界面設計技術として、下記の新技術を開発している。 ① サブミクロン銀粒子を用いたポーラス焼結構造による応力緩和・高放熱接合構造の開発。形状制御した銀粒子及び、銅粒子の新規合成方法とそれを用いた耐熱接合技術。 ② 純Znを用いた高耐熱接合方法の耐酸化性改善策の提案。 ③ 大電流負荷エレクトロマイグレーション(EM)の評価装置を完成し、Ag焼結接合部材の評価を行なった。 ④ 極限温度サイクルにおけるウィスカ発生メカニズムを解明し、Ag蒸着薄膜では熱膨張による応力がマイグレーションを生ずることを発見した。この現象を利用して、大気中で低温・無加圧で完全な接合ができるストレス・マイグレーション(SM)接合方法を提案し、世界の注目を集めている。この現象のナノレベルでの解明を進めると共に、デバイス実装技術への展開を進めている。 これらの研究結果を元に、Ag表面の酸化還元反応に注目した、学術的に新しい金属焼結現象メカニズムを提案すると共に、次世代パワーデバイスの実装に向けた接合界面設計の最適化を着実に進めている。これらの研究実績は多数の学術論文や学会発表、新聞発表などで情報発信されている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の目標は、計画内容を時期を前倒しで遂行しており、その上の成果として、以下の大きな成果を挙げている。 1) 新規焼結メカニズムの発見:Ag粒子や薄膜の接合で、低温、無加圧、大気中の焼結を引き起こす基本的メカニズムが、Agと大気中の酸素の表面反応がAgのナノ粒子を表面に形成させ、これがAg粒子間のネッキング形成に大きく寄与する。この焼結メカニズムに関する論文は準備中で、メカニズムを利用した接合手法の提案は産業財産権申請を済ませている。 2) 二段階ポリオール法開発:二粒子サイズ分布を持ち塗布した粒子のパッキングが理想状態になるAg粒子ハイブリッド粉末を合成し、論文投稿、産業財産権申請を果たした。2種類の粒度を有する粒子を別々に合成する方法では、混合する際の粒子分散不均一さを除去することは不可能である。これに対し、本技術では2種類の粒子が同時に合成されるので理想的に均一分散し、優れた特性のハイブリッドペーストを製造することが出来る。 3) Ag薄膜SM接合技術の考案と開発:従来、防止すべきストレス・マイグレーション現象を逆手にとり、接合界面を低温、無加圧、大気中でほぼ完璧な無欠陥状態で形成できることを明らかにした。これまでの産学で課題となっていた全てを解決する技術として注目されており、論文投稿による新現象と技術の周知はもちろんのこと、産業財産権も申請している。 これらの当初予定以上の成果は、特にSiCやGaNのように大パワー、高周波スイッチングと同時に機器小型化が望まれる機器応用において電流密度は極限まで増加するので、Ag薄膜接合がもたらす無欠陥接合層は、電流を最大に抵抗なく流し、熱を最大限に逃がす理想の接合技術となり得る。この優位点から、これまでのダイアタッチ技術では実現不可能な「ゼロストレス・ダイアタッチ」を唯一言い切れる技術として日本の各企業へ提案をしている。
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Strategy for Future Research Activity |
学術的には、新たな金属粒子の低温焼結メカニズム解明に向けシミュレーションと高分解能観察を主体に進める。新開発の2粒度分布Agハイブリッド粒子焼結接合では、焼結温度低温化、各種特性に対し限界探索を実施し明らかにする。SM接合に於いては、低温におけるナノレベル界面形成メカニズムを継続し、さらに、本メカニズムのAgの他の材料への適用の可能性を探索する。これらの新技術は積極的に外部機関との共同作業により現実的な実用の可能性を探索する。当初計画の4項目に関しては、以下の様に進める。 1)応力緩和放熱接続材料・構造:純Znはんだ、Ag焼結接合における界面反応は既に解明済みで、むしろ新たな知見を得ている。その安定性の検証が残された課題であり、これは順調に進めており計画前倒しで終了できる見込みである。他は変更は無い。DBC/DBA構造開発については、既に提案を済ませており、その応力シミュレーション、温度サイクル試験は予定通りに実施する。 2)極限条件腐食・酸化電極界面構造設計:電極界面構造安定性は、これも前倒しで計画は進行しており、平成27年度中にはほぼ終了できる見込みである。 3)大電流負荷エレクトロマイグレーション(EM):機器の開発は完了しているが、Znはんだ、Ag焼結接合のEM評価はこれから開始することになる。温度計測に関する課題は、液浸による温度均一化技術を導入し、可能な限りの温度均一化を図ることとする。多少の遅れはあるが、平成27年度中に終了する予定で進める。 4)極限温度サイクルウィスカ発生メカニズム:懸念されるZn系はんだのウィスカは発生せず、Ag焼結接合においても影響はほとんど無いことが判明した。むしろ、Ag薄膜からストレスで成長するヒロックが接合に大きく寄与することが判明したので、この面を更に推し進めた他の金属、特に、有用なCu薄膜のヒロック形成、接合への適用可能性を検証する。
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Research Products
(34 results)