2012 Fiscal Year Annual Research Report
視覚障害当事者の共同自炊型オンライン電子図書館を実現するための条件に関する研究
Project/Area Number |
24240039
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (A)
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Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
石川 准 静岡県立大学, 国際関係学部, 教授 (60192481)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松原 聡 東洋大学, 経済学部, 教授 (00173865)
湯瀬 裕昭 静岡県立大学, 経営情報学部, 准教授 (30240162)
菊池 尚人 慶應義塾大学, メディアデザイン研究科, 特別研究准教授 (30599501)
松原 洋子 立命館大学, 先端総合学術研究科, 教授 (80303006)
南谷 和範 独立行政法人大学入試センター, 入学者選抜研究機構, 准教授 (90551474)
山口 翔 立命館大学, グローバルイノベーション研究機構, 研究員 (90614123)
河村 宏 国立障害者リハビリテーションセンター(研究所), 国際関係学研究科グローバルスタディーズ研究センター, 客員研究員 (50370870)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 電子図書館 / 電子書籍 / アクセシビリティ / 視覚障害 / 読書 |
Research Abstract |
■視覚障害当事者による共同自炊型電子図書館の実証実験 59人の視覚障害者を参加者に迎えて実証実験を行った。本の裁断とスキャナによるデジタイズとOCRによるテキスト化は情報提供施設の職員が行うことにした。クラウドストレージと参加者の特定のローカルフォルダを同期する仕組みを用いて、自動的にテキスト化された書籍が参加者のPCに転送されるようにした。参加者の能動性は、本の購入とOCRによりテキスト化された本の校正において発揮してもらう設計にした。参加者から譲渡されテキスト化した書籍数の合計は、8か月で367冊であった。OCRは平均でおよそ1%の誤認識が発生した。参加者へのアンケート調査を実施した。アンケート調査からは、参加者の満足度が高いという結果が出た。また所得と満足度、誤認識率と満足度などの間に有意な相関が見られた。 ■米国の共同自炊型電子図書館Bookshare等の調査 Bookshareの活動について、法人の設立者であり代表者である人にインタビュー調査を実施した。その結果、参加者がボランティアとして校正作業を積極的に行っている等の知見を得た。現地調査等により、米国のプリントディスアビリティを有する人々の書籍へのアクセスを保障するための政策について知見を得た。またフランスの国立図書館がプリントディスアビリティのある人の書籍へのアクセスを保障するために重要な役割を担っていることもわかった。 ■音声および点字ディスプレイによる能動的読書を可能にする読書プレイヤの有効性に関する実証実験 簡易なマークダウンでプレインテキストからDAISY、EPUB3、点字データへの自動変換を行うコンバータを開発するために性能仕様、技術仕様を設計した。DAISY規格の策定団体のDAISYコンソーシアムと、テキストの複数トラック対応の必要性について問題を提起し、意見交換を開始した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
■視覚障害当事者による共同自炊型電子図書館の実証実験 ・「共同自炊型電子図書館」実証実験という大仕掛の実証実験を設計・準備し、実証実験が順調に動いている。・順調に共同自炊方式で書籍のテキスト化が行われている。・アンケート調査、ヒヤリング調査を実施し、有用な知見が集まっている。・OCRの誤認識率について詳細な分析を行うことができている。・読みやすさを向上させるためのツールの開発が順調に進んでいる。 ■米国の共同自炊型電子図書館Bookshare等の調査 ・Bookshareの調査を予定どおり実施し、有用な知見を得た。・プリントディスアビリティの書籍へのアクセスを促進する政策について、フランス等で現地調査を実施し、日本の政策に参考となる有用な知見を得た。 ■音声および点字ディスプレイによる能動的読書を可能にする読書プレイヤの有効性に関する実証実験 ・簡易なマークダウンでプレインテキストからDAISY、EPUB3、点字データへの自動変換を行うコンバータを開発するための性能仕様、技術仕様を設計した。・DAISY規格の策定団体のDAISYコンソーシアムと、テキストの複数トラック対応の必要性について問題を提起し、意見交換を開始した。 ■中間成果報告 ・本研究プロジェクトについて講演、シンポジウム、論文・解説等で紹介したところ、学術的および実践的観点から大きな反響があった。・参加者を中心に多くの視覚障害者、盲ろう者から本プロジェクトの実践的側面に高い評価が寄せられており、本実証実験の成果を用いた持続可能な「共同自炊型電子図書館」の正式運用への期待が高まっている。
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Strategy for Future Research Activity |
■視覚障害当事者による「共同自炊」型電子図書館の実証実験(24年度から継続) 24年度の実証実験の結果に基づき、参加者のコミットメントとインセンティブを高めるための方法や規則を改良し、それらの効果を検証する。プレインテキストから各種フォーマットへの変換を行うコンバータソフトウェアをシステムに組み込み、DAISYや点字ファイルへの自動変換サービスを提供する。PC用および携帯端末用に使いやすく、かつ能動的読書を可能にするプレイヤソフトウェアを開発して提供する。技術革新が「共同自炊」型電子図書館実証実験への参加行動と満足度に及ぼす効果を測定する。 ■「共同自炊」型電子図書館の連携についての研究 視覚的読書に困難のある人々を対象とするオンライン図書館の国際的相互貸借を可能にするために、WBUなどの国際的障害者団体が活動している。そのロビー活動の成果としてWIPOが条約交渉を行っており、条約策定の最終段階を迎えようとしている。本研究プロジェクトとしてWIPO会議にオブザーバ参加することを計画している。いわゆる「自炊代行ビジネス」を社会に包摂するための包括許諾の枠組みを作ろうとして、Myブック変換協議会が作家、漫画家、写真家の団体を中心に結成された。この協議会の活動をフォローしていく。障害者差別解消法が平成25年4月26日に閣議決定され通常国会に上程された。成立すれば、行政措置としての指針策定に対して政策提言を行うべく、政策研究を行う。 ■DAISYコンテンツの音声および点字ディスプレイによる能動的な読書を可能とする読書プレイヤの有効性に関する実証実験 当初の計画にそって新しいナビゲーションインタフェイスを持つ読書プレイヤを試作し、読書プレイヤの有効性をモニタ実験により評価するとともに、「共同自炊」型電子図書館実証実験の参加者に提供し、参加行動と満足度がどのように変化するかを測定する。
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Research Products
(5 results)