2013 Fiscal Year Annual Research Report
高感度原子磁気センサを用いた超低磁場マルチモダリティMRIシステムの開発
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24240081
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
小林 哲生 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (40175336)
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Project Period (FY) |
2012-10-31 – 2015-03-31
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Keywords | MRI / MEG / EEG / 原子磁気センサ / 眼球運動 |
Research Abstract |
本研究では、超高感度光ポンピング原子磁気センサ(OPAM)を開発し,それにより液体ヘリウムなどの冷媒なしに脳磁図,脳波,眼球運動計測といった他の計測手法と融合可能な超低磁場マルチモダリティMRIシステムの実現に挑戦する.そして,特に認知症をはじめとする中枢神経系の疾患の診断支援や治療効果の定量的な評価に寄与することを目的として実施された. 本年度は,初年度に引き続き超低磁場MRIの鍵となるK原子とRb原子を混合したハイブリッド型の光ポンピング原子磁気センサの高感度化と,感度の空間的均一性の向上に関する検討を進めた。K原子とRb原子を封入する一辺の大きさが5cm立方体型OPAMガラスセルを用いシミュレーションと実測の両面から従来の単一原子を用いるOPAMに比べ我々が独自に開発したハイブリッド型OPAMの方が感度の空間的均一度が高く広い計測領域において高感度が図れることを示すことができた.その後,このハイブリッド型OPAMを用いて生体ファントムを用いた磁場分布計測を実施し,その有効性を示す事ができた。 本研究ではまた,MRI撮像を超低磁場で実現することにより,他の様々な計測手法とのマルチモダリティ計測を可能とするシステムを開発することによって認知症などの高次脳機能に関わる疾患の診断支援や治療効果を定量的に評価できる新規医用イメージングシステムを開発することを目指しており,そのため本年度はMRIや脳磁図との同時計測可能な多チャネルの脳波計を導入し,超低磁場マルチモダリティMRIに必要な異なるモダリティから得られる計測データを統合的に解析し時間・空間分解能の共に優れる神経活動部位の推定手法の開発を行った.一方,OPAMによる超低磁場MRIの実現に向けて、MR信号検出とMR画像撮像シーケンスに関してシミュレーションによる検討を実施し圧縮センシングの有効性を示すことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要で記載の通り,計画していた原子磁気センサの高感度化については,K原子とRb原子を混合したハイブリッド型のセンサによりノイズの低減を図り高感度化が実現できることを理論と実験の両面から示す事ができたこと,また超低磁場マルチモダリティの実現に向けてMRI,脳磁図,脳波の融合計測可能なシステムが整ってきたこと,さらに超低磁場MRIにおける撮像時間の短縮に関しても検討がすすみ,おおむね順調に計画した研究内容が達成できていると言う事ができる.
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度は,まずハイブリッド型の光ポンピング原子磁気センサ(OPAM)のさらなる高感度とモジュール型OPAMの小型化を進める。このハイブリッド型OPAMにおいてはK原子を直接ポンピングする代わりにRb原子をポンピングし、Rb原子のスピン偏極をK原子とRb原子のスピン交換衝突によりK原子に移すことにより計測系のノイズ低減とスピン偏極の空間的均一性が期待できる.そこで,さらなる高感度化とスピン偏極の空間的均一性向上に向け,スピン偏極の振る舞いを記述する光学的ブロッホ方程式とレート方程式に基づく詳細なシミュレーション実験を行うと共に,ハイブリッド型原子磁気センサの実験系を構築し生体ファントムを対象とした磁場分布計測法の確立を目指す。 さらに,OPAMによるMR信号の直接計測手法の検討を進め,モジュール型OPAMによるMR信号計測を実施し,その結果を受けてMRIを取得するための各種パルスシーケンス開発を行う.加えて,超偏極キセノンガスを用いたMR信号の増強法,なかでも新たな撮像パルスシーケンスに関して理論と実験の両面から検討を進める計画である.一方,超低磁場マルチモダリティMRIを構成する脳磁図,脳波といった複数のモダリティから得られる計測データを統合的に解析し時間・空間分解能の共に優れる神経活動部位の推定手法ついても完成度を高めて行く計画である.そして脳磁図,脳波,眼球運動計測の同時計測を実施した後,超低磁場マルチモダリティ MRIのプロトタイプシステムを試作して研究を完結させる.
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Research Products
(34 results)