2013 Fiscal Year Annual Research Report
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24241079
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
長澤 榮治 東京大学, 東洋文化研究所, 教授 (00272493)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 恵美 早稲田大学, イスラーム地域研究機構, 主任研究員 (00535437)
松本 弘 大東文化大学, 国際関係学部, 准教授 (10407653)
岩崎 えり奈 上智大学, 外国語学部, 教授 (20436744)
臼杵 陽 日本女子大学, 文学部, 教授 (40203525)
泉 淳 東京国際大学, 経済学部, 准教授 (70337476)
飯塚 正人 東京外国語大学, アジア・アフリカ言語文化研究所, 教授 (90242073)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | アラブ / イスラーム / 民主化 / 社会運動 / メディア / 革命 / 国際関係 / パレスチナ問題 |
Research Abstract |
本研究は、2011年1月にチュニジア・エジプトで始まった「アラブ革命」の展開過程を地域ごとに実証的に分析し、その背景となる関連の基軸的諸問題(政治的イスラーム、民主化、経済改革、ジェンダー、社会労働問題など)について比較考察するとともに、非アラブ諸国や欧米などの関与を含めて中東政治の構造変動(パレスチナ問題の新展開、中東地域システムの変容など)の全体を地域史的な視角から検討することを目的にしている。 第二年度である本年度は、上記の研究目的のために、①各国の事例研究と相互比較、②地域全体に関わる基軸的課題の考察、③中東地域政治の考察、④アラブ革命の展開過程に関する資料収集分析という四つの問題軸を設定し、前年度に引き続き調査作業を継続した。 主に①と④のために、海外調査をエジプト(2名)について実施した。①についてはモロッコとイラク(2013年7月6日)、レバノン(8月5日)、エジプト(9月22日)の事例についての研究会を実施し、また各メンバーがそれぞれの分析結果を論文や著書などの形で公開した。中でもエジプトについては、現地から専門家を招聘し、集中した議論と意見交換を行った。また②と③の課題については、パレスチナ・イスラエル・米国から専門家を招聘し、オスロ合意20年後の現在におけるアラブ革命の中東和平問題への影響を検討する国際ワークショップ(10月12日)を開催した(NIHUイスラーム地域研究東大拠点と共催)。エジプトを事例にして②と④の課題と連携しつつ、革命によって成立した新憲法に関する国際ワークショップを開催し(7月18日)し、また2011年の民衆運動を公共空間の観点から検討する研究会(2014年3月6日)を実施した。④の課題についてはアラビア語資料を取集し、アラビア語専門家による資料の検討と情報の入力整理の作業を継続して実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記の研究目的を構成する四つの問題軸(①各国の事例研究と相互比較、②地域全体に関わる基軸的課題の考察、③中東地域政治の考察、④アラブ革命の展開過程に関する資料収集分析)について、第二年度である今年度は、昨年度の成果をふまえ、研究会および国際ワークショップの開催、海外調査の実施を通じて、国内・海外ともに研究ネットワークの構築に努めた。四つの問題軸のそれぞれについての達成度は、以下の通りである ①各国の事例研究と相互比較:モロッコ・イラク・レバノン・エジプトの政治社会状況、および相互比較に関する事例研究の研究会を実施。海外調査ではエジプトでの現地調査を実施した。 ②地域全体に関わる基軸的課題の考察:オスロ合意後20年をふまえ、アラブ革命と中東和平の進展に関する国際ワークショップを実施した。その他の基軸的問題(「民主化制度改革」「イスラーム運動」「経済改革問題」「ジェンダー問題」「若者問題」)については、①の研究会で具体的事例が検討された(とくに憲法改正、ムスリム同胞団問題など)が、各担当メンバーが分析考察を進め、成果の公開の準備を進めた。 ③中東地域政治の考察:アラブ革命の展開を域内政治の変化の中でとらえるために、とくに中東現代史の枠組みを再検討するという問題意識から、60年前のアラブ民族革命の時代との比較を行う研究会で議論を深めた。とくに2013年夏のエジプト政変やシリア内戦の展開という状況をふまえた考察を行った。 ④アラブ革命の展開過程に関する資料収集分析。①で実施した海外調査で得た資料情報などにもとづきアラビア語資料を取集するとともにその内容についてアラビア語専門家の研究協力者による検討を行った。とくにエジプトの憲法資料に関する研究をふまえた国際ワークショップを実施した。
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Strategy for Future Research Activity |
上記のような昨年度までの成果をもとに今後、研究課題の四つの問題軸について以下のような方策で研究を推進する予定である。 ①各国の事例研究と相互比較:アラブ各国の事例の分析をそれぞれ深化させ、なおかつ比較考察を行う。以上の目的のために海外調査の実施や研究会の開催を行う。海外調査ではエジプトなど定点観測的な継続調査対象国とともに調査対象国の拡大を図る。エジプトなどから専門家を招聘し、その知見を得て議論を深める。 ②地域全体に関わる基軸的課題の考察:前年度に続いて地域最大の問題であるパレスチナ問題について、継続した考察と研究会を実施する。とくにシリア内戦による難民問題の大量発生という状況をふまえ、難民問題の原型としてのパレスチナ問題及び人権問題に関する研究会を海外専門家とともに連続して実施する。その他の課題である「ジェンダーと革命」「民主化制度改革」「イスラーム運動」「経済改革問題」について①の事例研究と連動して考察を深める。 ③中東地域政治の考察:②で企画する難民問題と中東国家システムの変容という問題意識から考察を進める。トルコおよびイランという非アラブ国とアラブ域内政治の関係を検討し、中東地域システムの形成に向けての展望を検討する。アメリカやロシアとの関係についても最近の展開を歴史的な流れの中で再考察する。 ④アラブ革命の展開過程に関する資料収集分析:前年度に引き続いて、海外調査や海外招聘の専門家からの知見にもとづいた資料情報の収集と整理作業を継続する。
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Research Products
(19 results)