2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
24243014
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
潮見 佳男 京都大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (70178854)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
橋本 佳幸 京都大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (00273425)
松岡 久和 京都大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (30165782)
愛知 靖之 京都大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 准教授 (40362553)
木村 敦子 京都大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 准教授 (50437183)
山本 敬三 京都大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (80191401)
横山 美夏 京都大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (80200921)
佐久間 毅 京都大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (80215673)
長野 史寛 京都大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 准教授 (60551463)
山本 豊 京都大学, 国際公共政策研究科, 教授 (60108438)
和田 勝行 京都大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 准教授 (90551490)
コツィオール ガブリエーレ 京都大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 准教授 (10725302)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 財産権の現代化 / 証券のペーパーレス化 / 知的財産権 / 生活妨害の差止め / 著作者人格権 / パブリシティ / 人体の不可分性 / 事業信託 |
Research Abstract |
24年度は、年次計画において基盤研究期として設定した3年間の2年目に当たる。今年度も、昨年度に引き続き、伝統的な物権・債権モデルではとらえきれない新たな財産権モデルの構築に向けて、事業財産権、情報財産権、環境財産権、人格財産権につき、年次計画に記載した各論的テーマを取り上げ、外部の研究者・実務家も交えた共同研究を遂行した。事業財産権グループでは、将来財産の現代化の観点からみた信託制度を、情報財産権グループでは、デジタルコンテンツと権利の集中管理を、環境財産権グループでは、東日本大震災に伴う「被災区分所有建物の再建等に関する特別措置法」が採用した新たな建物区分所有制度にみる「物」概念の変遷と相隣関係法理の変容を、人格財産権グループでは、身体の一部の処分可能性という観点からみた人体の財産化・商品化の問題を検討した。 また、新たな財産が登場するなかで、財産権侵害に対する救済の領域でも新たな財産権に相応する立法モデルを構築することが必要であるとの認識のもと、研究代表者の統括下で、不法行為法・民事救済法の現代化に向けた立法課題の共同研究を推し進めた。 さらに、次年度以降の財産権モデルの構築と立法モデルの提案に向けた基礎作業として、近年、ヨーロッパにおいて民法の制度・規律を再編する動きが急速な展開を見せていることから、ドイツ、フランス、オーストリアにおける研究者を招聘して、最新の財産法制に関する比較法的観点からの共同研究を実施するとともに、研究代表者・研究分担者が海外で開催された複数の国際シンポジウムに出席し、本研究課題に関連した財産法制の再編に関する研究成果を報告し、海外の研究者と意見交換をおこなった。さらに、本研究の成果として、ヨーロッパ私法の統一と現代化に向けたヨーロッパの研究者グループの提案「ヨーロッパ私法の原則・定義・モデル準則」を共同で翻訳し、法律文化社から出版した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画書に記載した平成24年度・25年度の計画では、財産権の現代化の要請に応じた財産権モデルを構築するための基盤研究として、事業財産権・情報財産権・環境財産権・人格財産権につき、特徴的かつ重要と思われる個別問題を取り上げ、比較法研究・実態研究・基礎研究を行うこととしていた。 ①事業財産権研究では、集合財産の担保化、証券化、プロジェクト・ファイナンス、信託制度を挙げていたが、証券化の問題に若干の積み残しがあるものの、その余に関しては、財産権モデルの構築に向けた成果を得ることができた。②情報財産権研究では、差止請求権の制限と対価徴収権化、デジタルコンテンツと権利の集中処理、著作者人格権を挙げていたが、そのすべてを共同研究の場で取り上げ、財産権モデルの構築に向けた成果を得ることができた。③環境財産権研究では、生活妨害、震災・原子力損害、相隣関係(区分所有等)、景観利益等に関する問題を挙げていたが、そのすべてを共同研究の場で取り上げ、財産権モデルの構築に向けた成果を得たばかりか、当初の予定以上に不法行為制度の再構築につながりうる成果を得た。④人格財産権研究では、個人情報・プライバシー、パブリシティ・肖像権、生殖補助医療、臓器提供・移植を挙げていたが、そのすべてを共同研究の場で取り上げ、財産権モデルの構築に向けた成果を得ることができた。とりわけ、プライバシーに関しては、外国人研究者との集中討議により、先端的知見を獲得することができた。 以上のように、研究計画書記載の研究計画は、おおむね順調に進展している。加えて、25年度は、財産法制の再編に向けた共同研究の成果として、研究代表者・研究分担者による国際シンポジウム(ドイツ、中国、日本)での本研究課題に関連する研究発表と、全498頁の『ヨーロッパ私法の原則・定義・モデル準則』の翻訳出版という重要な成果を国内外に示すことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は、研究計画書に記した「基盤研究期」の最後の年度に当たる。26年度は、新たな財産権としての事業財産権、情報財産権、環境財産権、人格財産権のそれぞれについて、未検討の個別問題を精査するとともに、ここまでの個別課題研究の成果を総括し、これらの財産権に妥当する財産権モデルの意味と限界を明らかにする。その際には、共同研究の成果として25年度に翻訳出版した書籍中にある「ヨーロッパ私法共通参照枠草案」(DCFR)の内容ほか、比較法研究・実態研究の成果をも取り込んだ検討をおこなう。 これと並行して、26年度からは、全体を統括する財産権の構成枠組みの検討に着手する。既存の所有権・利用権・担保権・債権にも妥当する財産権の構成枠組みの構築を目指すべく、26年度は、その端緒として、事業財産権、情報財産権、環境財産権、人格財産権のそれぞれの領域でみられた権利の特徴、とりわけ、人為的な「制度」により把握することが可能となった価値に着目した財産権の把握と、財産権に対する「公共性」の観点からの制約の実像を踏まえたときに、財産権の新たな構成枠組みを立てる際に基礎に置かれるべき要素が何であり、各要素の相互関係はいかにあるべきかを探るための、基礎からの検証作業に着手する。 また、27年度以降の「再編研究期」で予定している財産権の現代化を受けた財産法制の再編に向けた立法提言に向けて、26年度は、まず、新たな財産権モデルを踏まえわが国の財産法制を救済面から捉えたときに、現在の不法行為法・民事責任法の抱えている問題が何かを解明し、立法的課題の提示と解決の方向を示すべく、検討内容のとりまとめに着手する。この観点からの共同研究の成果は、27年度の日本私法学会において、本研究代表者(潮見佳男)を責任者とするシンポジウム「不法行為法の立法的課題」で発表し、学会全体での本共同研究の成果の共有を図る予定である。
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Research Products
(28 results)