2015 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
24243014
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
潮見 佳男 京都大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (70178854)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
橋本 佳幸 京都大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (00273425)
コツィオール ガブリエーレ 京都大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 准教授 (10725302)
松岡 久和 京都大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (30165782)
愛知 靖之 京都大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 准教授 (40362553)
木村 敦子 京都大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 准教授 (50437183)
山本 豊 京都大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (60108438)
長野 史寛 京都大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 准教授 (60551463)
山本 敬三 京都大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (80191401)
横山 美夏 京都大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (80200921)
佐久間 毅 京都大学, 国際公共政策研究科, 教授 (80215673)
和田 勝行 京都大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 准教授 (90551490)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 事業財産権 / 情報財産権 / 環境財産権 / 人格財産権 / 民法改正 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、本共同研究グループが中心となり、過去3年半の共同研究の成果を私法学会シンポジウムで提示し、そこでの討論等を通じて、本共同研究の成果を民法学界で共有し、将来における立法へとつなげることを実践した。 そこでは、「人」の多様化、「財」の多様化、「人」と「社会」・「国家」とのつながりの変化・多様化が、社会・経済の変化、市民の意識・価値観の変化、政策の変化に伴って生じてきていることを示した。そして、医療事故、消費者取引・投資取引被害、成年被後見人が関与する事故にみられる「人の多様化」に伴う新種の不法行為事例、多様な知的財産の登場や身体の一部・遺伝子情報その他の人格の財産化、情報の財産化、環境のように特定の個人への帰属割当てを観念できないものにみられる「財の多様化」に伴う新種の不法行為事例、戦後すぐの時代における交通事故・公害薬害事例、その後の時代における景観利益侵害、隣人訴訟、プライバシー侵害、PTSD、風評被害、原発被害、アスベスト被害などにみられる「人」と「社会」・「国家」とのつながりの変化ないし多様化に伴う新種の不法行為事例など、不法行為法の領域において取り上げられる事象の多様化をもたらしていることを指摘した。そして、このような社会状況の変化と学説・実務の対応を踏まえ、施行後120年近くを経た現行民法を改正するという前提に立った場合の不法行為法のあり方として、私法の基本法典としての民法典に期待される不法行為法の姿を示すため、現在の不法行為法の枠組みの整理と問題点の洗い出しを経て、現代社会の実態を踏まえつつ、不法行為法の立法を支える「基本的価値原則」ないし「価値体系」を基礎に据え、これを実現する法的構成を示すことを通じて、基本的な改正課題や大きな方向性の分かれ目を明らかにし、さらには不法行為法の改正が社会に与える影響を目に見える形にする作業を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
財産権の現在化を踏まえた民法および隣接する財産法制の見直しに向けた立法提言として、すでに世界において先行しているヨーロッパ私法共通参照枠草案の翻訳出版等を通じて、現国会に提出されている民法改正法案の策定に大きな貢献をすることができた上に、27年度は私法学会におけるシンポジウムを実施することで、現代型の財産権に対する侵害に対する救済法制を再構築するためのベースラインを私法学会にて提示することができ、これにより、財産法制の現代化に向けた民法学界の共通財産となる成果を世に残すことができた。とりわけ、別冊NBL『不法行為法の立法的課題』(商事法務)を公刊し、そこに収録された各論文は、現在の民法改正の次に来ることが予想される不法行為法の改正にあたっての重要な研究資料となりうるものである。このように、本共同研究は、民法学界の水準を一歩進めるとともに、民法の現代化に向けた立法に対して強い影響力を及ぼす成果を着実に生み出しているといえる。 加えて、前年度までと同様、本年度においても、本共同研究課題に関心を寄せる外国人研究者を招へいし、本共同研究メンバーとの間で研究交流の場を設けたほか、メンバーの一部が、外国での学会・研究会において、本共同研究の成果を発表し、参加者との討論を行うことにより、研究の一端を世界に向けて発信することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、研究計画書に記載した「再編研究期」の2年目にあたるうえに、本研究の最終年度にあたる。 (1) 平成28年度は、前年度に引き続き、新たな財産権としての事業財産権、情報財産権、環境財産権、人格財産権のそれぞれについて、これまでの「基盤研究期」において研究を重ねてきた個別課題の分析成果を踏まえ、具体的立法提案に進むための枠組み・ベースラインの提示を書く分野において試みる。さらに、平成26年度に研究成果の一部として発表した「ヨーロッパ私法共通参照枠草案(DCFR)」の分析・翻訳作業、ならびに、平成27年度に研究成果の一部としての発表と学会における意見交換・共同討議を目的として実施した日本私法学会シンポジウム「不法行為法の立法的課題」(責任者、潮見佳男)の成果をさらに発展させ、財産法全体(財産権の侵害に対する救済領域を含む)に及ぶ個別・具体的な提言を目指す。 (2) 平成27年度に引き続き、今年度通常国会に提出されている民法改正法案をドイツをはじめとするヨーロッパに情報発信することをおこなう。この作業は、世界規模での財産法制の見直しに向けた一歩につながるものである。 (3) 各メンバーは、それぞれの役割分担として担った新たな財産権・財産法制の検討項目につき、5年間の研究を総括する研究論文、モノグラフィー等を公表する。
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Research Products
(33 results)