2014 Fiscal Year Annual Research Report
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24243069
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
櫻井 芳雄 京都大学, 文学研究科, 教授 (60153962)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 記憶 / 神経回路 / ニューロン / ラット |
Outline of Annual Research Achievements |
すでに確立した数種類の記憶課題と、改良したマルチニューロン活動記録法、及びデータ解析法を用い、実際にラットが多種の記憶課題を次々と遂行する際のマルチニューロン活動と局所電場電位(LFP)を記録し解析を進めた。具体的的な成果は下記のとおりである。 (1) 時間記憶課題と順序記憶課題それぞれの方法を完全に確立し、ラットがそれらを遂行していく際、背側海馬と内側前頭前野からマルチニューロン活動とLFPを同時記録した。26年度は特に海馬の活動に的を絞り解析した。(2) その結果、時間記憶課題では、海馬のニューロンが時間の弁別に応じた活動の変化を示すことが分かった。また海馬のLFPが特定の時間間隔をコードする活動を示すこともわかった。(3) これらの活動は、時間記憶を必要としない統制課題では全く生じないことから、時間記憶に対応した活動であることが確認できた。(4)順序記憶課題中の海馬ニューロン活動とLFPも、ラットの特定の順序を記憶し行動する際に変化することがわかった。 (5) それらの海馬の神経活動を神経回路の状態遷移として理解できるネットワークモデルを構築した。(6)海馬と内側前頭前野にまたがるマクロな神経回路の同期とその変化についても解析を進め、時間記憶の再生時にリズミカルな同期が見られることを確認した。(7)同じ電極で記録されたニューロン活動とLFPの間の同期も解析し、行動の変化で同期が変化するという予備的な結果が得られた。(8)記憶した時間間隔に基づきリズミカルに運動するインターバル・タイミング課題も導入し、その方法を確立した。(9) 表現する記憶情報の違いに応じて柔軟に変化する機能的新回路を記述するより良いモデルについても議論を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
特に時間記憶課題と順序記憶課題について、マルチニューロン活動とLFPともに記憶情報に対応した変化を示すことがわかった。これらの結果は、局所的な神経回路と広範な神経回路が記憶の形成と再生において共に変化していることを示しており、ヘッブが唱えたセル・アセンブリという機能的神経回路の実態に迫る大きな成果である。すでに1編の論文を国際誌に投稿しており、もう1編を近々投稿する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに確立した視覚記憶課題、時間記憶課題、順序記憶課題それぞれを遂行中に記録したマルチニューロン活動とLFPの解析をさらに続け、同時に、機能的神経回路の動態をより明瞭に示す新しい解析法を構築する。また、背側海馬だけでなく内側前頭前野から記録したデータについても解析を進める。さらに、記憶した時間間隔に基づきリズミカルに運動するインターバル・タイミング課題を用いた研究も本格的に進め、ラットがその課題を行っている際の神経活動を小脳から記録し解析する。最終的に、視覚情報、時間情報、順序情報などを表現する柔軟な機能的神経回路の実態を明確に記述することをめざす。
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Research Products
(16 results)