2015 Fiscal Year Annual Research Report
3次元噴煙モデルとレーダー観測による火山灰拡散降下モデルの高度化
Project/Area Number |
24244069
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小屋口 剛博 東京大学, 地震研究所, 教授 (80178384)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
眞木 雅之 鹿児島大学, 地域防災教育研究センター, 特任教授 (10360364)
鈴木 雄治郎 東京大学, 地震研究所, 助教 (30392939)
小園 誠史 東北大学, 理学研究科, 助教 (40506747)
萬年 一剛 神奈川県温泉地学研究所, 研究課, 主任研究員 (70416080)
前坂 剛 国立研究開発法人防災科学技術研究所, 観測予測研究領域, 主任研究員 (70450260)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 火山噴煙 / 火山灰降下 / 数値計算 / 気象レーダー観測 / 火山防災 |
Outline of Annual Research Achievements |
爆発的噴火に伴う火山灰拡散・降下は,航空機航行障害などの原因となるため,その高精度観測と予測が急がれている. 本研究は,申請者らが開発した3次元噴煙モデルとレーダ観測技術を応用し,新たに「供給源の物理過程を考慮した移流拡散モデル」を開発することを目的とする.具体的には,3次元噴煙モデルを発展させた噴煙ダイナミクス・火山灰輸送カップリングモデル(以下「カップリリングモデル」)を開発するとともに,火山灰移流拡散モデル(以下「移流拡散モデル」)に基づく逆解析手法,さらにMPレーダ観測による空中火山灰粒子分布の推定法の開発を行う. 平成27年度には,前年度までに開発したカップリングモデルを用い,ピナツボ火山1991年噴火などの実際の噴火事例の条件で大規模シミュレーションを行い,噴火開始から約100分後までの大気中に浮遊する火山灰粒子や地表に堆積した火山灰粒子の挙動を再現した. 移流拡散モデルについては,大気中の一点から同一粒径の火山灰を放出する数値シミュレーションに基づいて風の影響を定量的に評価する一般的理論を構築するとともに,霧島火山2011年噴火などの噴火事例に対して,高層気象場や堆積物のデータを用いて風の影響が卓越する場における火山灰の拡散・堆積過程の検討作業を行った. レーダ観測データによる空中火山灰粒子分布の推定法の開発については,レーダデータ三次元解析ツールにより噴煙の内部構造を可視化し,その時間変化を直感的に捉える体制を整えた.また,地上降灰量計の観測値を用いて,反射因子と降灰強度の関係式を導出し,火山灰分布を定量的に評価した.さらに,桜島火山において,パーシベルを用いた降下火山灰の粒径・落下速度測定を連続して実施した. これらに加え,噴煙ダイナミクスの近似解析解を導出することによって,火砕流の発生条件や噴煙高度の決定要因を明らかにした.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本プロジェクト(火山灰拡散・降灰予測のための移流拡散モデルの高度化)は,上述のカップリングモデルで噴煙内の火山灰分布を再現することを軸として推進している.カップリングモデルについては,基礎的部分の開発がほぼ終了し,実際の噴火事例と数値計算結果を比較する段階に入っている.現段階で,空中の粒子分布と堆積分布の関係について,ピナツボ1991年噴火の野外調査データと比較可能なデータを蓄積でき,当初計画をほぼ達成している. 移流拡散モデルについては,大気中の一点から同一粒径の火山灰を放出する数値シミュレーションに基づいて,既存の「Tephra2モデル」の問題点が定量的に評価された.その中で,霧島火山2011年噴火事例について,風によって噴煙が湾曲することの影響が本質的であることが明らかになった.現在,噴煙が湾曲する効果を考慮した移流拡散モデルの逆解析手法の開発に着手しているが,これについては,先行研究の問題点の洗い出しの段階である.また,カップリングモデルと移流拡散モデルをつなぐ傘型領域に対する重力流モデルについても,未だ,数値コードの開発が進行中である. レーダ観測データによる空中火山灰粒子分布の推定法の開発については,国交省MPレーダを用いたリアルタイム桜島噴火監視・データ表示システムによる観測結果を基にした噴火時のレーダデータアーカイブの作成作業,上記のデータに基づく火山灰の散乱特性モデルの作成作業を着実に進めており,これらの作業については,当初計画の90パーセント程度が達成された.また,これらのデータアーカイブとモデルに基づいて大気中の火山灰分布を推定する逆解析手法を構築する作業についても着手している. これらに加えて,火砕流発生条件などの噴煙ダイナミクスの一般的理論やパーシベルを用いた降下火山灰の粒径・落下速度測定など,当初計画に含まれない成果もあがりつつある.
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Strategy for Future Research Activity |
本プロジェクトでは,これまでに,基礎となるカップリングモデルの開発をほぼ終了するとともに,レーダ観測データのアーカイブや三次元解析ツールによる可視化について成果を挙げてきた.「高度化された移流拡散モデル」の完成に向けては,(1)カップリングモデルの計算結果(大気中の火山灰分布や堆積量)に対して確率分布関数を用いて統計的に表現する問題,(2)カップリングモデルと移流拡散モデルをつなぐ重力流モデルの数値コード化,(3)移流拡散モデルに基づいて空中火山灰分布や地表堆積量に関する観測データから噴火パラメータを特定する逆解析手法の基礎理論構築,などの問題においていくつか課題が残されている.最終年度においては,これらの課題を解決するとともに,論文発表やwebによるデータ公開を通じてこれまでに挙げた成果を公表する. 本プロジェクトを進める中で,カップリングモデル・重力流モデル・移流拡散モデルなど噴煙運動を記述する順問題モデルと堆積量・レーダ観測に関する観測データから供給源の条件を推定する逆問題モデルを組み合わせて,観測に基づくモデルの高度化を進める上で,噴煙運動そのものを記述するモデルの精緻化だけではなく,気象条件・火口形状・火山周辺の地形などの境界条件についても,高い精度で再現する必要があることがわかってきた.このことは上記の(1)から(3)までの課題を遂行する上では,(4)これまでに開発したカップリングモデルを実現象の再現に適した非構造格子の数値コードに拡張する,(5)火砕物の移流に大きな影響を与える気象条件のデジタルデータを計算する体制を構築する,などの新たな課題を解決する必要があることを意味している.最終年度の平成28 年度においては,上に挙げた5課題を着実すすめつつ,研究成果を総括する方策をとる.
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Research Products
(16 results)
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[Journal Article] Preliminary Results of Weather Radar Observations of Sakurajima Volcanic Smoke2016
Author(s)
Maki, M., Iguchi, M., Maesaka, T., Miwa, T., Tanada, T., Kozono, T., Momotani, T., Yamaji, A. and Kakimoto, I.
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Journal Title
Journal of Disaster Research
Volume: 11:1
Pages: 15-30
Peer Reviewed
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