2012 Fiscal Year Annual Research Report
探査機VLBI観測による月惑星内部構造の研究:金属核の大きさ・状態と起源
Project/Area Number |
24244072
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (A)
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
佐々木 晶 大阪大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (10183823)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松本 晃治 国立天文台, RISE月惑星探査検討室, 准教授 (30332167)
菊池 冬彦 国立天文台, RISE月惑星探査検討室, 研究専門職員 (30465926)
川口 則幸 国立天文台, 水沢VLBI観測所, 教授 (90214618)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 月内部構造 / VLBI / 重力 / 潮汐ラブ数 / SELENE-2 / 月の起源 |
Research Abstract |
2ビーム相対VLBIによる月周回衛星と月面着陸機にの複数電波源観測により、月の低次重力場の変化を高精度で求めて、潮汐ラブ数を高精度(誤差1%以下)で決定する。これと他の観測データを結びつけて、月内部の柔らかさ、とくに金属中心核が融けているかどうかを制約することが、本研究の目指すところである。 本年度は、内部構造については、アポロ計画で取得された月震データと測地データ(月の質量、慣性モーメント、ラブ数h2・k2)とを組み合わせた場合、将来ミッションでどの程度測地データの精度を向上させれば、月の内部構造パラメータがどのような精度で推定できるかを、線形モデルを用いて調べた。その結果、ラブ数k2をSELENE-2 VLBIミッションで期待されるように1 %の精度で決定すれば、月の核の半径および密度をそれぞれ10 %、25 %の精度で推定できることが分かった。 本研究課題では、離角が0度から1度まで時間変化する2つの電波源を同時に受信でき、かつS帯とX帯を含む広帯域特性を持つアンテナが必要である。広帯域特性を持つアンテナには、ヴィバルディアンテナ、クアッドリッジホーンアンテナ、セルフコンプリメンタリーアンテナなどがある。これらのアンテナについて、性能、サイズ、価格、技術的達成度などに関するトレードオフを行い、小型でアレイ化に適しているヴィバルディアンテナを選定した。その後、電磁解析ソフトウェアHFSS14.0を用いてアンテナの概念設計を行った。設計においては、Rajaraman (2004)などの先行研究をもとに、スロットラインなどのアンテナ形状の最適化を行った。 ヴィバルディアンテナの概念設計をもとに、実際の製作のための基板設計、同軸コネクタインターフェイス方式の検討を行った。また、アレイ化にむけた素子アンテナの配置検討と設計を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
月内部構造については、平成24年度中に、ラブ数k2を1 %の精度で決定すれば、月の核の半径および密度をそれぞれ10 %、25 %の精度で推定できることを定量的に明らかにしており、当初考えていた成果は上げることができた。実際の内部構造推定では、月内部各層の厚さ、密度、剛性率を様々な範囲で振って観測に合うパラメータを探索する必要がある。膨大なパラメータの組み合わせを全て調べることは不可能なので、マルコフ連鎖モンテカルロ法を用いてパラメータの値と精度をベイズ推定する手法の実装に着手した。 VLBI信号受信システムについて、方式・仕様の検討を進めたところ、給電部の広帯域化・小型化を含めてアンテナ素子をX帯のみからS/X帯の同時給電方式とする新たな技術を導入するように仕様変更する必要となった。検討の結果、ヴィバルディアンテナをアレイ化する方式を採用して開発を進めることになった。そのため、アンテナの設計に入ったのが遅れることになり、平成24年度直接経費のうちアンテナ開発にかかわる5,900,000円を次年度に繰り越すことを申請して認められた。アンテナ形状の最適化にもとづく、製作のための基板設計、同軸コネクタインターフェイス方式の検討、アレイ化にむけた素子アンテナの配置検討と設計、低コスト化検討のための高速サンプリングクロック伝送システムの設置を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
月内部構造については、ベイズ推定のプログラムを完成させ、内部構造推定シミュレーションを行い、内部構造パラメータの推定精度について、線形モデルの結果と比較する。Weber et al. (2011)やGarcia et al. (2011)では、Apollo月震データの再解析によってコア反射波を用いたコアサイズの推定が行われたが、月深部構造モデルの差は依然として大きく、他のデータを組み合わせた解析が必要である。内部構造推定プログラムを改良し、浅発月震や表面衝突の走時も取り込めるようにする。また、GRAILデータを用いたk2の精度向上が報告されたので、このデータを用いて実際の月内部構造推定を行い、論文としてまとめる。 ヴィバルディアンテナでは、各素子ごとに計測した電波特性を理論式を用いて合成していたものを、パワーデバイダなどを用いて実際にPhased Arrayとして構成した時の電波特性を計測する。アンテナ雑音温度の計測と合わせ、給電回路の損失が得られ、総合的なアンテナ性能の評価が可能となる。素子数が多いPhased Arrayにした場合にコストが問題となるが、ダイレクトサンプリング方式を用いた低コストPhased Arrayシステム検討を進める。またサンプリングクロックを光ファイバで10GbE光トランシーバモジュールを用いて伝送することでさらに低コスト化できる。前年度に評価用のモジュールを作成した。本年度はこの評価用モジュールを用いて位相安定度の評価を行い、VLBI性能を評価する。 さらに水晶VLBIを用いた探査機VLBIの実現性についても評価する。本検討は、探査機VLBIに、高価な水素メーザーを備えるVLBI局ではなく、容易に確保できる非VLBI局を探査機VLBIの地上局として利用可能にするための研究である。そのために、短時間成分だけは周波数安定度がよく安価な水晶発振器を周波数標準として考え、位相安定度とフリンジ強度、位置決定制度への影響の評価のための基礎実験を行う。
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[Journal Article] Viscoelastic deformation of lunar impact basins: Implications for heterogeneity in the deep crustal paleo-thermal state and radioactive element concentration2013
Author(s)
Kamata, S., Sugita, S., Abe, Y., Ishihara, Y., Harada, Y., Morota, T., Namiki, N., Iwata, T., Hanada, H., Araki, H., Matsumoto, K., Tajika, E.
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Journal Title
Journal of Geophysical Research
Volume: 118
Pages: 398-415
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Lunar Gravity and Rotation Measurements by Japanese Lunar Landing Missions2012
Author(s)
Sasaki, S., Hanada, H., Nlada, H., Kikuchi, F. Araki, H., Matsumoto, K., Kunimori, H., Iwata, T., Goossens, S., Otsubo, T., Funazaki, K.
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Journal Title
Trans. JSASS Aerospace Tech. Japan
Volume: 10, ISTS28
Pages: k_3
Peer Reviewed
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