2012 Fiscal Year Annual Research Report
DNAを利用する重金属イオン除去膜、導電性ワイヤーの開発研究―構造、物性、応用
Project/Area Number |
24245037
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (A)
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Research Institution | Kanagawa University |
Principal Investigator |
小野 晶 神奈川大学, 工学部, 教授 (10183253)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
近藤 次郎 上智大学, 理工学部, 助教 (10546576)
岡本 到 神奈川大学, 工学部, 助教 (40460133)
田中 好幸 東北大学, 薬学研究科(研究院), 准教授 (70333797)
浦田 秀仁 大阪薬科大学, 薬学部, 教授 (80211085)
鳥越 秀峰 東京理科大学, 理学部, 教授 (80227678)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 環境浄化 / 水銀イオン / 検出 / 除去 / 金属含有DNA / NMR / 結晶解析 / ポリメラーゼ |
Research Abstract |
2残基のチミンをアルキルリンカーで結合したチミンダイマーの合成ルートを確立し、金属イオンの結合を検討した結果、チミンダイマーは、他の金属イオンには結合しないで、Hg(II)イオンと選択的に結合することが明らかとなった。また、チミンを繋ぐリンカーには側鎖が結合している。側鎖にメタクリル基を結合したのち、メチルメタクリレートと共重合することで高分子とした。チミンダイマーによる水中のHg(II)イオンの除去実験を行った。チミンダイマーは金属イオン混合液中のHg(II)イオンだけを結合し、他の重金属イオンとは結合しなかった。即ち、水溶液中のHg(II)イオンを選択的に除去する材料を得た。 チミン―Hg(II)-チミン(T-Hg(II)-T)を有するDNA二重鎖の立体構造をNMR法、X-線結晶解析法で解析した。両手法とも、良好な三次元構造を与えた。金属イオン含有DNA二重鎖は、天然のそれと同様に、B-型の構造であった。Hg(II)イオンはチミン残基間に位置しており、チミン3位とHg(II)が結合していることが明らかである。シトシン―Ag(I)-シトシン(C-Ag(I)-C)を有するDNA二重鎖の構造解析に着手した。 DNA合成酵素、合成DNA鋳型とプライマーを用いてC-Ag(I)-C塩基対を有するDNA二重鎖を合成した。 等温滴定型カロリメトリー(ITC)を用いて、DNA二重鎖中のピリミジン塩基対と金属イオンの結合の熱力学的パラメータを算出した。 DNA二重鎖中の2-チオチミン塩基対、4-チオチミン塩基対に、一塩基対あたり二つのAg(I)イオンが結合し、二重鎖を大きく安定化することを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、金属含有DNA二重鎖の原子レベルでの構造解析する。しかも、NMR法による溶液構造、X-線回折による結晶構造の両方を達成することを目的としている。NMR構造解析は、本研究がスタートする前から研究を継続している。X-線結晶解析は、本研究計画と同時に開始した。1年目において、T-Hg(I)-T塩基対を有するDNA二重鎖の溶液構造、結晶構造を得たことは、存外の成果である。1年目の研究から、結晶構造解析法が、金属含有DNA二重鎖の解析に有効であることが示唆されたことは、意義深いことであった。 DNA二重鎖中の2-チオチミン塩基対、4-チオチミン塩基対に、一塩基対あたり二つのAg(I)イオンが結合し、二重鎖を大きく安定化することを見出した。さらに、二つのAg(I)イオンを結合する人工塩基対を、二種類、見出した。一塩基対に複数の金属イオンが結合したDNAの立体構造は興味深い。 チミンダイマーの合成ルートを確立したことは、本研究を遂行する上で、有意義な成果であった。2残基のチミンをアルキルリンカーで結合した(単純な構造の)チミンダイマーが、DNA二重鎖中のチミン―チミン塩基対と同様に、Hg(II)イオンと選択的に結合したこともまた、有意義である。チミンダイマーを用いて、水溶液中のHg(II)イオンを選択的に除去することに成功した。即ち、環境中のHg(II)イオンを選択的に除去する手法の開発に目途を付けることが出来た。チミンダイマーを担体に結合することで、水系に混入した効率よくHg(II)を除去する手法を開発することが可能である。
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Strategy for Future Research Activity |
2013年度は、チミンダイマーを担体に結合することで、水系に混入した効率よくHg(II)を除去する手法を開発する。まず、ガラス基板にチミンダイマーを結合する手法を検討する。表面積の大きいガラス担体(コントロースド・ポア・ガラス)にアミノアルキル基を結合し、さらに光反応性リンカーを介してチミンダイマーを結合する。光反応性リンカーを利用することで、担体に結合したチミンダイマーの量を確認することが可能となる。チミンダイマー結合担体を用いて、水溶液中のHg(II)イオンの除去実験を行う。水溶液中のHg(II)イオン量はICP(既存の設備)を利用する。 チミン―Hg(II)-チミンを有するDNA二重鎖の構造解析に成功しており、論文を上梓することが2013年度の、第一の課題である。しかし、本研究における構造解析の役割は終わりが無い。連続するチミン―Hg(II)-チミンを有するDNA二重鎖の構造解析は重要である。さらに、シトシン―Ag(I)-シトシンを有するDNA二重鎖の構造解析は、2013年度の重要課題である。2-チオチミン塩基対や4-チオチミン塩基対など、複数の金属イオンを結合した塩基対の構造解析も残っている。また、これら、人工塩基と金属イオンの結合の熱力学的パラメータを解析する。新規金属イオン含有塩基対の開発研究も、継続すべき実験である。
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Research Products
(12 results)