2014 Fiscal Year Annual Research Report
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24246033
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
村井 祐一 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (80273001)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石川 正明 琉球大学, 工学部, 助教 (00398306)
田坂 裕司 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (00419946)
熊谷 一郎 明星大学, 理工学部, 准教授 (50597680)
北川 石英 京都工芸繊維大学, 工芸科学研究科, 准教授 (80379065)
大石 義彦 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (90617078)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 抵抗低減 / 省エネルギー / 流れ制御 / 乱流 / 境界層 / 気泡 / 国際情報交換 / 国際研究者交流 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度は,過去2年間の成果をもとに,二相流の境界層制御に関する3つの制御スキーム(I, II, III)の実験的研究をさらに発展させた.制御スキームIとして「振動せん断応力場における気泡群の複素粘度」について超音波と界面レオメータによる究明が完了した.この結果,気泡が振動降伏する高速変形場では粘度の増減幅が平衡変形時の10倍以上となること,局所的に高濃度の気泡群が形成されたときは粘度が水の100~3000倍になることを発見し,それぞれ英文誌に掲載された.制御スキームII「圧縮工程なしで船底に大量の気泡を発生する翼技術の開発」については過去2年の成果が英文誌に掲載され,さらなる新しい翼型の設計により従来性能を超えることも確認された.制御スキームIII「反復的気泡注入による再現性保証と下流持続性の拡大」については,100m曳航水槽試験を実施し,ボイド波の自然成長と人工制御の調和条件が明らかとなった.このスキームの流体力学的機構については2つの英文誌に掲載された.さらに,マイクロバブル領域の抵抗低減については,自然脈動形成や大域的渦の変調作用があることが確認され,これも英文誌に掲載された.ほかには壁面のコーティングによる気泡挙動の違いや,壁面を沿う大気泡の近傍に現れる乱流境界層の内層変調について詳細なデータベースが構築され,英文誌とて発表・公開された.なお代表者は過去40年間に渡る本課題に関わる世界の研究について英文誌にレビュー論文を投稿することを依頼され,160以上の論文から整理されて見えてきた事象と今後の展開について詳しく解説した論文を掲載した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本課題からの成果は国際ジャーナルに連鎖的に掲載されており、その影響もあって、発見・開発した要素技術についてそれぞれ国内外の船舶・海洋工学における共同研究に展開している。なかでも翼による制御スキームIIについては4隻の船舶に対する成功事例が Ocean Engineeringに掲載され国内外からの問い合わせを多数,受けた.制御スキームIについてもスイス連邦工科大学(ETH)との連携研究が成功し,微小気泡が局所的に高濃度となる流れ場において非常に強い乱流相殺効果があることを世界で初めて発見した.この成果は流体力学的基礎に立ち戻って重要であり,本課題テーマとするスマート制御に弾みがつく.制御スキームIIIについては,広島大学において100mの曳航装置による繰り返し試験を行い,間欠的気泡注入の優位性が確認された.この技術については国内の造船・海運会社も関心を寄せており,現在,実用化に向けた設計ドラフトデザインに入っている.以上をまとめると本課題の進捗状況は極めて順調であり,次年度もさらに展開することが期待できる.
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年3月に,本課題の代表者,分担者が集い,外部から3名のアドバイザーを招き,京都工芸繊維大学を会場として成果報告・討論会を行った.アドバイザーは海運R&Dの会社,大阪大,同志社大から1名ずつで,有益な意見と今後の期待などについて伺った.その際,大学実験室での物理的な基礎研究から得られた知見を,船舶に応用するためのロジック設計の重要性を指摘いただいた.これを鑑み,今後の推進方策を以下のように予定する.制御スキーム1:微小気泡が境界層内で乱流渦を鎮圧する現象(CVA)が船体の流れ方向に長距離に渡って持続するための実船条件研究を行う.制御スキームII:水中翼と同じ機能で,形状が異なる海水運動エネルギー利用形気泡発生デバイス(KBI)を設計し10mの曳航水槽実験により実船に容易に装着可能な気泡発生装置を製作する.スキームIII:反復的気泡注入(RBI)による乱流摩擦抵抗効果の促進について10~500mの範囲の長距離外挿モデリング設計を行う.これら三つのスキームの組合せにより実船における空気潤滑省エネ船の流体力学的設計側面からのランドマークデザインを完成させる.
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