2013 Fiscal Year Annual Research Report
生体神経回路網とファジィパターン識別法による学習システム
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24300091
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
工藤 卓 関西学院大学, 理工学部, 准教授 (10344110)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ファジィ推論 / 神経工学 / ニューロエンジニアリング / MEA / 分散培養 / 履歴効果 / パターンニング |
Research Abstract |
ファジィ推論による神経パターン識別手法を開発した.神経電極からの各入力について複数のラベルを用いてファジィルールの前件部をパターン・テンプレートとし,発火頻度の高低を表現したテンプレートを作成した.それぞれのルールに対する入力信号のファジィ適合度により入力信号の各テンプレート(ルール)に対する類似度を推定する識別器を設計し,C#を用いてクラスライブラリを作成した.また,神経信号に対して適切なチューニングを行うために生体神経細胞から電気活動データを取得し,チューニングを行っている.さらに,神経電極からの各入力をまとめた特徴ベクトルを入力として自己組織化マップを構築し,神経回路網に神経出力に応じた電気刺激入力をフィードバックして,選定された勝者ノードの分布を追跡した.その結果,勝者ノードに写像された神経活動パターンは比較的安定しており,神経活動によって大きく変動しないことが明らかとなった.さらに,各ノードに参照ベクトルを設定するかわりにメンバシップ関数を並べたベクトルを設定し,入力ベクトルに対する適合度が最大となるノードを勝者ユニットとするファジィ自己組織化マップを設計し,C#によるクラスライブラリとLabVIEWによる解析ソフトウェアに実装した. 同時に,神経活動パターンの安定性と自発性神経活動のパターンに対する刺激入力の影響を解析し,刺激後5 ms~20 msにおいては,電流刺激による特定の活動パターンが発現し,さらに約100 msをかけて自発性電気活動のパターンに復帰していることを明らかにした. 神経活動パターン特徴ベクトルを計算し,各パターンに対応する特徴ベクトル間のユークリッド距離を元に,神経活動パターンの再現性を解析した.その結果,神経回路網に入力する電流刺激のタイミングが,神経活動パターンの特徴としてメモリされる現象を発見した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画では,本年度はファジィテンプレートを用いたパターン識別器の構築と,ファジィ自己組織化マップを用いた識別手法の開発が中心の課題であった.これに対して,ファジィテンプレート識別手法を実装したクラスライブラリの作成,及びファジィ自己組織化マップを実装したLabVIEWベースのソフトウェアを開発,神経活動パターンの解析を開始できた.解析パラメーターの調整は現在進行中であるが,自己組織化マップによるパターン解析は当初予定以上に進行し,パターンの安定性が解析されている.また次年度の主要テーマに関連する,自発性神経活動に対する刺激入力の影響について重要な準備的データを得ている.以上の研究成果は,学術論文誌2報,国内外の多数の学術会議などで発表した.これらの点から,研究計画は概ね順調に進展していると考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は,神経回路網メモリ効果の特性を更に詳細に解析すると共に,発現する現象の細胞生物学的メカニズムを探求する. メモリ効果は神経回路網の基本特性である興奮・抑制バランス、細胞の興奮整と不応期の 長さにより影響を受けると考えられる.これらのメモリ効果への影響を考察する.また,細胞内カルシウムのメモリ効果への影響を解析する.発火活動に伴う細胞内 Ca2+の濃度上昇の持続性が単一細胞レベルでの活動調整に関与していると考えられる.そこで,ネットワークレベルでのメモリ効果と個々の細胞における Ca2+濃度上昇について解析し,細胞内 Ca2+の調整機構とメモリ効果の関与を考察する. 以上の解析には,本年度に開発した手法を活用する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
3月に東京において小規模な研究成果発表会の開催を予定していたが,調整がつかず予定がキャンセルとなり,平成26年度に延期して成果発表することになった.従ってこれに関わる出張旅費を平成25年度予算から平成26年度へ繰り越すこととした. 本課題に関する最新の研究成果を関連する研究者に対して公開し,ディスカッションするための小講演会を東京(東京大学もしくは東京工業大学,東京工科大)で開催する予定であり,そのための出張旅費として使用する予定である.
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Research Products
(11 results)