2013 Fiscal Year Annual Research Report
グルタミン酸受容体トラフィックにおけるシナプス後肥厚の動的役割
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24300140
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
神谷 温之 北海道大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (10194979)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 脳・神経 / 神経科学 / 生理学 / 薬理学 / シグナル伝達 |
Research Abstract |
本研究では、海馬スライスのシナプスに光反応性グルタミン酸受容体ブロッカーであるANQXの光分解法を適用してAMPA型グルタミン酸受容体のシナプス移行の分子動態を計測し、シナプス後肥厚がAMPA受容体のシナプス局在と動態を制御する可能性について検証することを目的とする。このために、興奮性シナプスのシナプス後肥厚の主要な構成分子の一つであるPSD-95の遺伝子欠損マウスの解析を行うこととした。二年目の本年度は、PSD-95ノックアウトマウスの繁殖を進め、ANQXの光分解を用いたAMPA受容体の動態計測実験を行った。正常マウスから作成した海馬スライスを用いた我々のこれまでの解析では、静止状態ではAMPA受容体のシナプス移行はほとんど生じず、高頻度刺激により長期増強を誘発した際にシナプス移行が加速されることが示されていた。このうち、静止時にシナプス移行がほとんどみられないという点は、培養細胞を用いた他の研究で得られた結論と異なる。PSD-95ノックアウトマウスでは、静止状態においてもシナプス移行の亢進がみられ、PSD-95はAMPA受容体のシナプスに局在化し、シナプス内外の受容体輸送を制限する、いわゆる「受容体スロット」としての機能を有すると考えられた。培養細胞では、スライス標本のシナプスよりもPSD-95の発現量が低く、AMPA受容体の可動性が高くシナプス移行が高率で生じている可能性が想定されたことから、PSD-95の発現量が低下しているヘテロマウスのスライスを用いて、この点をさらに検証することを試みている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画に従い、PSD-95ノックアウトマウスから作成した海馬スライス標本において、光照射と光反応性AMPA受容体ブロッカーANQXを用いてAMPA受容体のシナプス動態を計測し、静止状態でのAMPA受容体のシナプス移行が促進していることを示したことから、おおむね順調に研究が進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、PSD-95ノックアウトマウスから作成した海馬スライス標本において、長期増強誘発に伴うAMPA受容体のシナプス移行の変化について解析を進める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度は、購入し繁殖したマウスの遺伝子解析や実験用試薬の購入などに研究費を使用したが、繁殖が順調に進んだことから、当初予定より少額の研究費を使用するに留まった。 次年度は引き続きマウスの遺伝子解析や実験用試薬などの購入に使用する予定である。
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Research Products
(3 results)