2012 Fiscal Year Annual Research Report
インダス文明青銅器の金属分析を起点とした熱処理型高錫青銅の発生と東西伝播の研究
Project/Area Number |
24300300
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
長柄 毅一 富山大学, 芸術文化学部, 准教授 (60443420)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
三船 温尚 富山大学, 芸術文化学部, 教授 (20181969)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 文化財科学 / インダス文明 / 熱処理型高錫青銅 / 熱間鍛造 / 鋳造 / 焼き入れ / 金属組織 / 蛍光X線分析 |
Research Abstract |
一般に、10%以上の錫を含む青銅は高錫青銅と称せられる。錫の含有量が15%を超え、25%以下のものは、冷間加工することが極めて難しく、β固溶体領域に加熱された後、鍛造加工などが施される。また、室温における高い靭性を得るために、焼入れ熱処理が施されるというユニークな特徴をもつ。我々はこれを「熱処理型高錫青銅」と呼ぶことを提唱している。これはアジアでのみ盛行し、日本にも「佐波理」として古墳時代には伝来している。現在のところ、モヘンジョダロやハラッパなど、インダス文明の遺跡で最古のものが確認されており、起源地である可能性が高いが、熱間加工や焼き入れが実際に施されたかは不明である。本研究においては、インダス文明青銅器を多数分析し、その器種、合金種、製作方法のデータを基軸として、(1)起源地の特定、(2)製作技術の伝播経路解明、に取り組む。さらに、復元鋳造実験による材料特性の評価データから(3)盛行と衰退の理由を明らかにする。平成24年度の研究成果を下記に示す。 (1)インダス文明期の遺跡のひとつ、ミタータル遺跡出土の青銅器資料30点余を分析したところ、その多くが砒素銅であり、高錫青銅は確認できなかった。ただし、調査できたのはバングルや斧等であり、鏡などはなかったので、今後、椀、水瓶、馬具などがないか追跡調査をしていく。 (2)鉄器時代の遺跡(マフルジャリ、ライプール)出土の資料からサンプリングし、分析した。銅鏡が熱処理型高錫青銅で作られており、焼き入れの痕跡も見いだすことができた。 (3)含有する錫量を変えた熱処理型高錫青銅を作製し、熱処理条件と金属組織の関係について考察した。 今後、破壊靭性値の評価などを行っていく予定にしている。,
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
起源地の特定や製作技術の伝播経路解明については、今後より多くの分析例を増やしていく必要がある。 これまで、60点以上のサンプル提供をうけ、順次分析を進めているところであり、研究の進捗は順調である。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に引きつづき、デカンカレッジの所蔵品を中心に分析調査を進める。また、状態がよく、サンプリングがしにくい資料について、できるだけ資料を破壊しない調査方法についても検討を進めていく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
日本へ伝播した高錫青銅の調査について対象となる出土品資料が絞り込めず、十分に実施できなかった。これについては関係機関との協議を進めており、現地調査を実施するとともに、旅費等として次年度使用額63,158円を執行する。
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Research Products
(5 results)