2013 Fiscal Year Annual Research Report
熱帯落葉林の生物季節に及ぼす水ストレス効果の実験観測と植生モデルの高度化
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24310018
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Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
田中 克典 独立行政法人海洋研究開発機構, 地球環境変動領域, 主任研究員 (80344274)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 雅一 東京大学, 農学生命科学研究科, 教授 (10144346)
田中 延亮 東京大学, 農学生命科学研究科, 助教 (10323479)
松尾 奈緒子 三重大学, 生物資源学研究科, 講師 (00423012)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 環境モデル / 着葉期 / 葉量変化 / 葉の光合成活性度 |
Research Abstract |
乾季に葉を落とす熱帯落葉林の水とCO2ガス交換過程において、着葉期、葉量とその光合成活性度の変化は最重要である。水とCO2ガス交換を植生モデルで再現する際、これらは入力項として扱われてきた。 水ストレスがこれらに及ぼす影響を明らかにするめ、散水による水ストレスのない極端な環境下と自然環境下にさらされた樹木のふるまいを比較した。まず水ストレスによる蒸散活動低下と落葉の効果は着葉期から落葉期・散水開始前の土壌水分・樹液流速度のデータから明らかになった。散水開始前にはすでに一部発芽していたが、3月上旬の散水開始後、コントロール区画と散水区画の樹木について、その後の葉の展開と蒸散活動の変化に大きく違いが現れた。散水区画の樹木では散水開始後すぐに蒸散活動が活発になり、そのピークが4月中に現れたのに対し、コントロール木の蒸散活動はその45日後の自然降雨に対応して活発になり、そのピークは7-8月に現れた。散水区画木の個葉レベルの光合成活性度は4月の測定時にはピークとなっていたのに対し、8月の観測時点では低下していた。散水区画木の葉内窒素濃度も4月の時点で最大に達しており、8月の前半より低下した。一方、コントロールでは葉内窒素濃度が5月に最大になり、その後11月前半までピークを維持した。これにより散水は葉の発達を早めたものの老化も早めることがわかった。 上述の知見の一部は、日本生態学会で発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
蒸散活動の低下・落葉と土壌水分の関係が観測データから明瞭に示すことができた。散水後のコントロールと散水区画の実験木の樹液流速度・個葉レベルの光合成活性度・葉内窒素濃度の季節変動も、明瞭な違いを示すことができた。散水は、葉の発達を速めたが、同時に葉の老化も速かった。これらの知見は、当初予定していた成果に対応しており、研究は順調に進展したと判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
上述のとおり、予定通りの成果をあげることができた。平成25年度末に、新しい散水区画をもうけ、3月上旬の完全落葉開始時点で散水を開始している。旧散水区画で現れた葉内窒素濃度・樹液流速度の季節性が再現されるかの追試を行う予定である。3月の調査の時点で、葉を維持していた旧散水区画の散水も継続しており、その後の落葉と展葉開始時期を明らかにする予定である。老化の速まった散水木とコントロール木のデンドロバンド測定による幹成長の違いから、乾期雨期に順応した落葉樹の成長の違いを明らかにする。これらの知見は炭素と水循環の植生モデルに反映する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
論文の英文校閲費代にあてる予定であったが、年度末までに論文をまとめられなかったため。 平成26年度に論文の英文校閲費として使用予定。
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Research Products
(2 results)