2012 Fiscal Year Annual Research Report
成長初期における低線量放射線被ばくが高次脳機能と自律神経におよぼす影響の研究
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24310039
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
尾田 正二 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 准教授 (50266714)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
久恒 辰博 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 准教授 (10238298)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 自律神経 / 低線量放射線 / メダカ / 心拍 / 概日リズム / ストレス / バースト遊泳 |
Research Abstract |
低線量放射線影響の有無を検証するために必要な前段階として、平成24年度には、高線量放射線が影響を及ぼすと予想された自律神経活動と高次脳機能を評価する手法を慎重に確立し、高線量放射線による影響を検証した。 自律神経活動の解析手法として、メダカ成魚および稚魚、胚において無麻酔にて心拍変動を解析する手法を確立し、うち成魚において高線量(15Gy)の重粒子線(炭素線)の影響を検証した結果、照射後数日のうちにメダカ成魚の心拍数が有意に減少することが明らかとなった。さらに、恒暗条件下で高線量(10Gy)ガンマ線を照射したメダカの遊泳活動を24時間、3週間モニタリングしメダカの活動の概日リズムへの高線量放射線の影響を評価したところ、照射後数日の間、遊泳活動のリズムが明らかに低調となり、かつ遊泳活動のリズムが24時間周期から8時間周期に変化した。これらの放射線は高線量ではあるがメダカ成魚の致死線量ではないことから、上記の結果は、放射線の照射が脊椎動物の自律神経の活動に影響を及ぼすことを強く示唆する成果である。 また、成長期における放射線被ばく影響を評価するための指標とする高次脳機能として、メダカ稚魚が示すバースト遊泳行動の評価方法および稚魚のコルチゾルを同時に定量する手法を確立した。個体密度が増加するにつれてメダカ稚魚がバースト遊泳行動を示す頻度が増加したことからストレス行動であることが予想された。バースト遊泳行動の頻度とコルチゾル濃度を個体ごとに測定したところ、両者の間に相関性は認められず、バースト遊泳行動はコルチゾルの分泌を伴う内分泌系の動作によるストレス行動ではなく、アドレナリン分泌を伴う自律神経系の動作によるストレス行動である可能性が考えられた。 成長期マウスにおいてMRIによる解析手法の開発を行い、ヒトにおける成長期放射線照射の影響解明に向けて台湾の研究者との共同研究を開始した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
メダカ自律神経活動および高次脳機能に与える高線量放射線の影響を検証する手法の確立に慎重を期したため、低線量影響の検証への着手が計画に比して遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度には、メダカ成魚心拍への放射線の影響を詳細に解明した上で、低線量(1,0.1Gy)ガンマ線が影響を及ぼすかどうかを検証する。また、孵化前のメダカ胚にガンマ線を照射して脳に神経細胞死を誘導し、孵化後にメダカ稚魚のバースト遊泳行動等が影響を受けるかどうかを検証する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
頭部腫瘍患者における放射線治療が患者の記憶力へ及ぼす影響の評価を行うためのソフトウェアを購入する必要が年度後半に生じたため直接経費次年度使用分とし、次年度である平成25年度の直接経費と合算させることによって平成25年度初期に購入し研究計画の効率的推進を図る計画である。
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Research Products
(3 results)